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標準化せず個別対応が増えて混乱したDXの事例

目次
はじめに:混乱したDX、その背景にある「標準化しない文化」
現代製造業において、デジタルトランスフォーメーション(DX)は避けて通れないテーマとなっています。
多くの企業がDX推進を掲げ、各種のシステムやデジタルツールを現場に導入しています。
しかし、その一方で、現場で働く従業員や管理職の間からは「DXを進めてかえって現場が混乱した」「結局アナログ作業が増えて、非効率になった」という声が聞こえてきます。
その要因の一つが、「標準化を飛ばして個別対応を優先した結果、現場に混乱が生まれた」ことにあります。
この記事では、昭和的な現場主義が色濃く残るアナログ体質の製造業に根付いた、”標準化を避けがちな文化”と、それがもたらした混乱したDXの事例を、現場のリアルな経験も交えながら掘り下げていきます。
現場目線で見るDX失敗:全員が満足する個別対応はできない現実
その1:システム導入で現場から巻き起こる「◯◯さん専用設定」
多くの現場で、業務効率化や情報共有のために新しいシステムが導入されます。
しかし、その設計段階で往々にして発生するのが、
「○○係長には特別な画面レイアウトが必要」
「△△部署だけは独自の帳票が不可欠」
といった個別カスタマイズ要望です。
これらの要望がすべて取り入れられると、一つのシステム内に無数の個別設定が乱立し、現場異動のたびに使い方が大幅に変わる、マニュアルが分厚くなる、運用負担が爆発的に増大するといった現象が起こります。
この混乱は特に「現場主義」「個を尊重する伝統」が強い会社ほど起きやすい傾向にあります。
その2:属人化とパッチワーク運用が現場に根を張る
標準化を飛ばして個別対応を優先すると、結果的にどうなるか。
あるベテラン社員が「こうした方がラク」と自分流のデータ流し込み方法を作る。
別の部門では独自のチェックリストで二重管理を始める。
その瞬間は現場が楽になったように感じられても、社員が交代した際には「誰もやり方が分からず手順が停止」「システム担当に問い合わせが殺到」など、属人化のツケが必ず回ってきます。
しかも、こうしたパッチワーク的な運用が常態化することで、本来なら統一されたデータで分析や改善ができたはずのDX効果が薄れ、「現場に合わない、二度手間だ」といったDX不信が社内に蔓延してしまうのです。
なぜ製造業は標準化を嫌うのか?昭和型現場主義の根深い影響
「現場が一番知っている」の功罪
多くのアナログ産業では、長年「現場に合わせて柔軟に対応する」ことこそが顧客満足やモノづくりの質を高める源と信じられてきました。
現場ごとにやり方や工夫があり、それが進化の原動力だった側面もあります。
この「現場に任せる風土」が災いして、DX時代にも
「うちのやり方にはこの機能が必要だ」
「標準パッケージでは現場に合わない」
と現場が声を上げ、結果として個別対応だらけの非効率なシステム群となって混乱を招くのです。
縦割り組織が生み出す「標準化への抵抗感」
製造業の大企業ほど、部門ごとに役割・責任範囲が厳格に分かれている傾向があります。
この縦割り文化は標準化の大きな障壁です。
各部門が「自部門に最適化した仕組み」を主張し続けることで本来あるべき業務全体の最適化が犠牲になり、「現場任せのシステム運用」「バラバラな管理手法」が温存されてしまいます。
結果として、現場も管理職も「DXをやればやるほどやることが増えて混乱した」という誤った印象を抱き、DXそのものへの抵抗感が社内に広がります。
混乱したDXのリアル事例
事例1:現場ごとに異なる検査記録フォーマット
品質管理部門が全社共通の検査記録システムを導入しようとしたところ、各工場・各ラインから「うちの工程は特殊なので、この項目とレイアウトを追加してほしい」と個別要望が殺到。
当初は「現場の声を大切に」を合言葉に、全要望を盛り込み続けた結果、現場ごとにほぼ別物の検査記録システムが乱立。
生産実績を本社で統合分析しようにもデータの粒度や形式がバラバラで統合困難となり、「やっぱりエクセルに手書きが一番ラク」とアナログ回帰が進行した例です。
事例2:購買業務のバイヤーごと個別テンプレート地獄
調達システムをリニューアルしたものの、バイヤーごとに注文書テンプレート、サプライヤーとの折衝用管理表などを個別設計し続けた結果、後任者が引き継ぐたびに「どれが最新版か分からない」「過去データが正しく参照できない」事態が頻発。
サプライヤー側も「御社の○○バイヤーだけ対応が異様に複雑」と敬遠され、DXのはずがサプライヤーとの軋轢が増える事態となりました。
事例3:自動化ラインのAI導入で“使いこなせない”現場
工場の自動化推進でAI検品システムを導入したものの、生産ラインごとに「この種類のキズはうちの現場だけのクセ」「細かい判定閾値も現場に合わせてほしい」と矢継ぎ早に個別設定を要求。
AI学習用データも現場任せでバラバラとなり、肝心の「品質の見える化」どころか、ラインごと表記や判定基準が異なるために全社最適化にはつながらないという、典型的な“個別最適で混乱”の事例です。
DXで混乱しやすい業界特有の傾向と深層心理
“ベテランの暗黙知”がデジタル化の障壁に
製造業では「ベテランの職人技」や「長年の勘所」がプロセス中に多く残されています。
それをシステムで表現しようとしても、“現場ならではの微細な調整” “独自のアレンジ”が数多く存在し、標準化に抵抗する声が強くなりがちです。
変化への恐怖と「とりあえず今のまま」がもたらす現状維持バイアス
新システム導入は“今あるやり方の喪失”を意味するため、現場心理として消極的防衛反応が発動します。
よしんばシステム導入が決まっても、「現状に極力近い形で個別対応してほしい」とリクエストが相次ぎ、結局“非標準対応の山”が出来上がる。
その結果、「やっぱりDX推進すると混乱が起こる」という誤った認識が一層強化されてしまいます。
混乱を防ぐための”本質的なDX”の進め方とは
業務標準化→DXの順番を徹底する
現場と対話を重ねながら、まず「業務標準化(プロセスマップ化)」を徹底し、必要最小限のバリエーションや設定項目に限定してからデジタル化する。
“現場流の例外対応”をどこまで許容し、どこからは全社統一とするか、その線引きを明確にすることが重要です。
現場主義の良さを生かしつつ「全体最適」の視点を取り入れる
現場の声を大切にしながらも、「全体最適・全社基準」のメリットを具体的な利益(効率化、ミス削減、汎用性向上など)とともに根気よく伝え、現場リーダー層を巻き込む。
実例を共有し、「できる現場ほど標準化が進んでいる」「自分のやり方が会社全体を効率化している」という納得感を持ってもらう工夫が決め手になります。
“標準化しやすい業務”と“本当に個別最適の必要がある業務”の仕分け
たとえば購買の品番データ管理や品質検査記録のような「本来、会社として統一すべき情報管理」は、徹底して標準化。
逆に、現場独自のノウハウや数値には、「属人化を排除する仕組み」と「現場発のアイデア抽出の場」を分けて設計する。
この二層構造を意識することが本質的なDX定着への近道です。
バイヤー・サプライヤー視点で考える「標準化の重要性」
バイヤー側にとっての標準化メリット
標準化によって、伝票や資料フォーマット、発注・検収・支払いまでのプロセスが一本化されると、後任への引き継ぎもスムーズになり、ミスや手戻りが激減します。
また、データベース化が進むことで、市場分析や継続的なコストダウンのための交渉材料も蓄積されやすくなります。
サプライヤーにとって標準化は“顧客との信頼維持のカギ”
多様な顧客への個別対応で現場が疲弊するよりも、主要取引先の標準業務フローや取引条件を正しく理解・共有できる会社ほど、バイヤーからの高評価を得られるのが事実です。
特に「データ連携がしやすい」「いつでも問い合わせに即答できる」体制は、長期的な取引の安定感につながります。
まとめ:「標準化なきDX」は必ず現場を混乱させる
DXを推進するうえで個別対応を優先すると、一見現場は楽になったようでいて“システムの乱立・属人化・データの断絶・現場の混乱”という弊害が必ず起こります。
昭和の良き現場主義も大切にしつつ、「業務標準化→DXによる全体最適化」という流れを意識することが、組織の真の生産性向上と継続的な競争力アップのカギとなります。
製造業の皆さん・バイヤー志望の方・サプライヤー側の担当者の方は、ぜひ「本質的な標準化の意義」とそれを実現する推進手法を、自分の現場目線で“再定義”してみてください。
これこそが、昭和的アナログ産業から脱皮し、今後も活力ある製造業を維持するための“新しい地平”への第一歩です。
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