投稿日:2025年9月9日

中小製造業における地域企業連携とSDGs貢献の事例

中小製造業における地域企業連携とSDGs貢献の必要性

日本の中小製造業は、長らく技術力と職人の経験を基盤に成長してきました。
しかし、グローバルな競争環境や少子高齢化、デジタル化の波、そして環境問題への対応といった大きな変革の中で、従来通りの経営やオペレーションでは持続的な発展が難しくなっています。
この中で地域企業同士の連携や、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献が、これまで以上に重要視されています。

中小企業庁や経済産業省も、地域経済の活性化・地方創生の観点から、企業間の連携やSDGs貢献活動への支援策を次々と打ち出しています。
では、なぜそこまで「連携」や「SDGs貢献」が求められるのでしょうか。
それは一社単独では対応しきれない大きな社会的課題や、ビジネスチャンスが、その先に広がっているためです。

地域企業連携がもたらすメリット

資源とノウハウの共用・補完関係の構築

単独企業だけでは賄いきれない設備投資や先端技術の導入も、企業連携によって実現しやすくなります。
たとえば、複数の加工業者が集まり、共同で最新鋭の検査機器を設置することで、品質保証力と取引先からの信頼性を高めることができます。

また、知見の異なる企業同士が交流することで、新しいアイデアや製品開発力の強化につながります。
それぞれの得意分野を活かし合えば、個々の弱みを補完しながらより大きな成果を生み出せるのです。

受注・販路拡大の実現

共同受注体制を築くことで、これまで対応が難しかった大口案件や官公庁の入札などにもチャレンジできます。
地域ブランドとして「共同体」としての信用力を高められる点も大きな魅力です。
また地域内のバリューチェーンが形成されれば、全国・世界への販路拡大の足がかりにもなります。
アナログに強い熟練バイヤーほど、この連携による「安定した供給体制」や「リスク分散力」を高く評価しています。

社員のモチベーション・地域への愛着向上

連携によって地域全体が活性化し、働く人々の誇りや結束力も高まります。
地元で生まれた技術や製品が全国、さらに世界で評価される様子を目にすることで、社員のやりがいも向上します。
これは若手人材の定着やUターン・Iターン就職推進にもつながります。

SDGs貢献はなぜ製造業に求められるのか

SDGsの「ものづくり」に関する目標―たとえば「産業と技術革新の基盤をつくろう(目標9)」「つくる責任 つかう責任(目標12)」など―は、まさに日々の現場そのものの課題です。

製造現場から出る廃棄物やCO2排出、労働環境の安全衛生、人材の多様性確保など、SDGsへの対応はあらゆる業務に直結します。
現代バイヤーは、品質・納期・コストに加えて、こうした「持続可能性」も調達先選定の基準に入れています。
SDGsに取り組むことは、単なる社会貢献ではなく、新たな商談や案件獲得のために必要な「パスポート」になりつつあります。

昭和的アナログ業界でも動き出すSDGs

「うちは昔ながらのやり方で十分」「デジタル化?SDGs?横文字は苦手だ」と感じている経営者や工場長もまだ多いのが現実です。
しかし、現実には取引先自体がISOなどの国際認証に紐づいてサプライチェーン全体の持続可能性を求めてくるため、古き良きやり方に固執するとサプライヤーから取り残される危険性が高まっています。
また、最近は中小企業向けに「SDGs宣言サポート」「簡易版ESG評価」など、ハードルを下げた取り組みメニューも拡充しています。

実践!地域企業連携×SDGs貢献の先進事例

A社:金型・樹脂・メッキ3社の分業連携と廃棄物削減

東海エリアのある樹脂成形工場A社は、金型メーカー・メッキ処理会社と連携し、「各工程での歩留まり改善プロジェクト」をスタートしました。
3社で月1回定例会議を開き、不良原因のデータを見える化して対策を共有。
その結果、3社トータルで年間30%の不良・廃棄物の削減に成功しました。
これにより取引先OEMからの信頼が高まり、SDGsレポートにも貢献事例として掲載され、新規案件の受注増にもつながっています。

B社:地域人材バンク活用による「多様な働き方」推進

関西の産業用機器部品メーカーB社は、近隣の協力会社3社と「地域技能人材バンク」を立ち上げました。
各社の慢性的な人材不足を横断的人材シェアリングでカバー。
子育てや介護中のスタッフに在宅ワークで図面設計や品質検査業務を任せるなど、多様な働き方支援も強化しました。
SDGsの働きがい(目標8)・ジェンダー平等(目標5)にもつながるこの取組みで、離職率が大幅に低下し、若手人材も増加。
バイヤーからは、安定した生産体制と職場の柔軟性を評価されています。

C社:電力地産地消&再生可能エネルギーで「CO2実質ゼロ」

新潟の精密部品C社は、地域の電力会社・メガソーラー運営企業とタッグを組み、工場の電力をすべて再生可能エネルギー由来に切替えました。
使用電力量をリアルタイム監視し、エネルギー管理士を配置することでピークカットも実現。
「CO2排出実質ゼロ」を実現し、地域自治体とも連携してSDGsの【地球温暖化対策】のモデル事例に認定されました。
SDGsに積極的な大手バイヤーからの認知・評価が高まり、新たな取引先獲得につながっています。

中小製造業が実践するための具体的ステップ

1.社内外のステークホルダーと対話する

まずは自社の課題や強みを見つめ直し、経営陣~現場まで幅広い社員や協力会社、地域金融機関、行政・自治体との対話の場を持つことが大切です。
社外の第三者目線からアドバイスやヒントを得ることで、意外な連携先や新事業の芽が見つかる場合も多いです。

2.スモールスタートで連携プロジェクトに挑戦する

いきなり「大きな再編」や「共同出資」などではなく、ごく小さなテーマ「共同で研修をやる」「共通部品の発注をまとめる」など実践しやすい分野から試してみるのがおすすめです。
その成功体験を積み重ねていく中で信頼関係を強化し、少しずつ大きな成果へと発展させます。

3.SDGsへの取り組みを見える化し、発信する

せっかく取り組んだSDGs活動は、社内外への発信・アピールが重要です。
ホームページやニュースリリース、展示会、小規模なセミナー発表などで「うちの会社はこうしたSDGs活動にチャレンジしている」と明確に伝えましょう。
バイヤーや行政の審査担当も、発信の有無をポイントに見ています。

まとめ:今こそ地域連携×SDGsで新しい地平線へ

製造業に従事する皆さま・購買担当を目指す方々にとって、企業連携とSDGs対応は避けて通れない新たな「現場の要件」となりました。
従来の競争を越えて共創し、「自社そして地域単位での価値創造・課題解決」に取り組むこと。
それは地元社員の誇り・若手人材の確保につながり、結果として企業価値と取引機会を高める“投資”でもあります。

バイヤー目線から見ても、「連携力」と「SDGs対応」の両輪をもち、持続可能で柔軟な企業が今後選ばれていきます。
今こそ、昭和から続く技術と知恵に最新の連携ノウハウとSDGs視点を掛け合わせて、製造業の新しい未来をともに切り拓いていきましょう。

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