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めっき欠陥を防ぐための攪拌装置と液循環設計の改善事例

目次
めっき欠陥ゼロを目指す現場力~攪拌装置と液循環設計の本質的改善事例~
めっき工程は、部品の防食性や見た目、機能を左右する製造工程の中でも特に繊細かつ奥深い分野です。
多くの工場では標準化されたラインや経験則に頼りがちですが、実は“当たり前”に潜むアナログ的な落とし穴が未だに根深く残っています。
この記事では、昭和から続くアナログ志向の現場に一石を投じ、バイヤーやサプライヤー視点でも“本当に価値ある改善”につながる攪拌(かくはん)装置および液循環設計の事例をご紹介します。
めっき不良・ロスコスト削減を目指し、現場で“すぐに”使えるノウハウとして活用してください。
なぜめっき欠陥が生じるのか ― 現場目線での本質理解
めっき不良の主な種類と影響
めっき欠陥の代表例には、ピンホール、未着、厚付けムラ、はがれ、焼け、変色など多岐にわたります。
これらの多くは液の組成異常や異物混入と解説されがちですが、現場で“根本原因”を突き詰めると、物理的な液流動や槽内の攪拌不良に起因するケースが少なくありません。
仮に液組成が適正であっても、部材周辺で液がよどみ、イオン種のムラや温度・pHの局所偏在が発生すれば、必ず“仕上がりのバラツキ”や“欠陥”に結びつきます。
アナログ的現場の固定観念による弊害
現場では、「長年このやり方で問題なかった」「ベテランが目視しているから安心」といった昭和的思考が今なお散見されます。
また、予算を理由に攪拌装置を最低限の規模で設計したり、液循環配管を初期設計のまま“いじらない”工場も少なくありません。
こうした“現場の空気”が、めっき不良の温床となっている事実をまず直視し、根本改善を志向することが必要です。
めっき槽の攪拌と液循環 ― 試作・量産現場で起きやすい問題
攪拌装置の基本と“ありがちな失敗例”
小規模な試作ラインやアナログ全盛期の設備では、プロペラ式攪拌機やエアバブラーを単純に槽内に設置している例が多いです。
しかし、実際には下記のようなトラブルが頻発しています。
– 回転数や送風量を適正化できず“強すぎる”・“弱すぎる”ことによる液ムラ
– 攪拌流が上面のみ、または槽中央部の一方向に偏る
– ワークの形状や治具による死角部で“滞留域”が生じる
– 攪拌子のメンテナンス不良による堆積物の微細剥離が欠陥の原因に
これらは、いずれも“常識的”・“伝統的”な装置設計への思い込みから脱却できていない現場で多く見られます。
液循環設計の重要性と隠れたリスク
液循環は「温度ムラ」「濃度ムラ」「異物・不純物の循環管理」だけでなく、設備の維持安全にも深く関わります。
たとえば、配管内に死水域(循環がストップ、または極端に遅い部分)があると、そこでスケールや沈殿物が生じ、ショートパスによる循環不良・不良発生源になることがよくあります。
また、新しい循環配管を後付けしたがために、既存の流路バランスが崩壊し、逆に局所的な液滞留を生む一例も見受けられます。
攪拌装置と液循環設計の本質改善 ― 現場からのチャレンジ事例
【事例1】“ワーク形状”にあわせた攪拌流のカスタマイズ
従来、量産設備用のめっき槽では標準的な位置・台数で攪拌装置を設置していました。
しかし海外向け医療機器部品の新規開発では、複雑な三次元形状のワークに対して、従来攪拌方式では端部めっき不良(未着・ムラ)が頻発。
そこで3Dシミュレーションで攪拌流路を“可視化”し、ワーク配置と合わせてベストなプロペラ配置・回転数を設計。
加えて、ワークごとに治具に小型の“液導流ガイド”を追加し、死角を根絶。
この結果、測定数値でめっき厚みの偏差が標準比1/3程度に低減し、良品率99.8%超を達成しました。
【事例2】循環配管の“死水域”を徹底洗い出し&リニューアル
老朽化した自動車部品工場では、めっき不良以外にも各種トラブル(ポンプ詰まりや加熱不均一)が発生。
従来改善手法では原因特定が困難でしたが、配管内をファイバー内視鏡&流量センサで現場調査し、死水域の存在とスケール蓄積を“見える化”。
設備停止中に順次旧配管のバイパスを設置し、全循環路をリニューアルすることで、従来比30%以上循環効率が向上。
その後、異物混入量は1/5、めっき外観不良は月10件→2件以下にまで改善されました。
【事例3】エアリフト循環とIoT流量制御の融合
新しいファインケミカル工場では、従来型のロータリーポンプによる強制循環から脱却し、省エネルギーと液ムラゼロの両立を目指しました。
そこでエアリフト(空気吹込みで液を持ち上げ、自然対流+空気撹拌)と流量センサ・可変弁によるIoT連携制御を導入。
これにより、液成分やワーク投入量に応じて最適な攪拌・循環パターンを自動制御。
運転コストを半減しつつ、仕上りムラや温度ムラも大幅に減少しました。
めっき欠陥防止の現場改革における“ラテラルシンキング”
慣習の罠から自由になるには?
現場改善の最大のハードルは「これはしょうがない」や「昔からこうしてきた」という固定観念です。
自分の目とデータで“本当に必要な改善は何か”を問い直し、ワーク形状や製造品の特徴に応じて設備をカスタマイズする意識が大切です。
時には、設備導入元の標準マニュアルや図面そのものを疑う姿勢さえ必要です。
“部分最適”を超えたトータルの視点で設計・改善する
一部の攪拌装置を新品にしただけでは全体最適は実現しません。
めっき液自体の特性、温度帯、部品流動、バッチ方式か連続流なのか…そうした“現場ごとの制約”を正しく分析し、必要なら配管や治具・側線の追加や配列変更、さらにはモニタリング機器による状態可視化まで検討しましょう。
ひとつの手段だけに頼らず、複数の改善策を組み合わせる“ラテラルシンキング”がポイントです。
“人と設備”の信頼関係が新たな品質を生む
自動化一辺倒が進む現場でも、“人による観察”や“小さな気付き”が不良ゼロへの最大の近道になることがあります。
「データがこうだから大丈夫」ではなく、「現物を見て、測って、改善する」。その繰り返しが少しずつ、昭和から続くアナログな現場をアップデートしていく原動力です。
まとめ ― バイヤー・サプライヤーが知るべき現場力の本質
攪拌装置や液循環設計は、新型設備の導入やIoT可視化だけが正解ではありません。
長年の慣習や設備図面に“本当に価値ある改善余地”が埋もれているのが現場のリアルです。
サプライヤーは現場をよく観察し、バイヤーは「なぜこの設備・配置を取っているのか?」を見極める力を持ちましょう。
そして、既存の常識に囚われず、お互いに改善提案を出し合い価値を高める。そんな協働姿勢こそ、これからの日本の製造業に求められる“現場力の進化”です。
この記事が、より良いQCD(品質・コスト・納期)実現のヒントとなることを願っています。
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