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グリーン調達指標をダッシュボード化しCO₂排出をサプライヤ別に可視化した分析事例

目次
はじめに:製造業におけるグリーン調達の重要性
製造業界は社会や市場、そして規制当局から「持続可能性」を強く求められています。
その中でもグリーン調達、特にCO₂排出量の低減と可視化は、企業財務だけでなく企業ブランドや顧客信頼、さらにはグローバルでの競争力にも直結します。
しかし現実には、「グリーン調達指標」とは名ばかりで、その測定や管理、分析が属人的かつアナログなままの企業も多いのが実情です。
昭和の時代から抜け出せない調達や生産現場では、Excelによる手作業管理や紙ベースでの情報共有がいまだに根付いています。
今回の記事では、実際に私が経験した「グリーン調達指標をダッシュボード化」し、「サプライヤ別のCO₂排出を徹底的に可視化」した実践事例を紹介します。
現場のリアリティに基づいた、アナログ業界でも導入可能な変革のヒントをお伝えします。
グリーン調達指標とは何か?製造現場の課題感
「分かっているはず」の曖昧さを可視化に変える
グリーン調達指標とは、サステナビリティやエコロジーへの配慮を具体的に評価・選定するための「モノサシ」です。
CO₂排出量やエネルギー消費、水使用量、有害物排出の有無、リサイクル素材の利用率など、評価項目は多岐にわたります。
しかし多くの製造業現場では、「サプライヤの取り組み状況」や「CO₂排出量」について正確な数値や真の実態を把握していないケースが非常に多いです。
理由は明白で、サプライチェーンが複雑なうえ、従来は「調達コスト」「納期」「品質」だけで判断してきたため、新たな指標を取り込む導線がなかったのです。
トップマネジメントの理想 と 現場の混乱
経営トップがサステナビリティ戦略を掲げる一方、調達や生産現場は「具体的に何をどう評価し可視化するべきか」で混乱しがちです。
指標化するにせよ、現場は毎日の調達・生産業務に追われているため、「工数や手間を最小限に抑えて可視化せよ!」という現実的な要請もあります。
このギャップを埋めるためには、ラテラルにものごとを捉え直す「きっかけ」や「仕組み化」が求められます。
ダッシュボード導入による可視化ステップ
現状の「見えないコスト」に気づく
手作業ベースのCO₂排出量算出には、「手間が膨大」で「計算根拠が曖昧」「データ更新のタイムラグが大きい」といった明確な課題があります。
この状態を放置していると、
・同じサプライヤなのに部署ごとに認識や数値が違う
・意思決定に時間がかかる
・外部開示した時の信頼性が低い
など、想像以上に大きな「見えないコスト」が膨らみます。
グリーン調達指標を「見える化」するダッシュボード設計
ダッシュボード化に取り組む際は、「何を見たいのか」を明確に定義することが第一歩です。
例えば以下のような指標を可視化することで、調達現場の舵取りがしやすくなります。
– サプライヤ別のCO₂排出量
– 製品・部材ごとのCO₂原単位
– グリーン調達評価スコア(再生エネルギー比率、廃棄物削減、有害物質管理スコア等)
– 部門ごとの進捗状況と達成度
こうしたKPIを「Webダッシュボード」や「BIツール」で一元化し、現場担当者が直感的に判断できる仕組みを設計しました。
データの収集と標準化:現場の工夫でアナログ管理から脱却
最大のハードルはサプライヤからのデータ入手です。
多くの取引先はまだアナログ管理に慣れており、年間1回の簡易アンケート形式を送付して終わり、という慣習が抜けていません。
改善のために実施したのは「定型フォーマット(Excel, GoogleForms)」の配布と、「現場訪問」「オンライン面談」でのヒアリング強化です。
フォーマットを標準化することでデータ統合作業の工数をカット。
ヒアリングでは、企業理念や調達方針、サステナビリティ経営の必要性を丁寧に説明し、取引先自身がデータを出す意義を理解してもらいました。
また、各サプライヤのCO₂データが揃っていない部分では「業界平均値」や「過去実績値」で一時補正し、その後データ精度を高めるPDCA運用を重ねていきました。
サプライヤ別CO₂排出を可視化したメカニズム
個別サプライヤの可視化=購買戦略の多様化
ダッシュボード実装後、社内外の関係者に大きな変化が起きました。
例えば、主要10社の部材サプライヤごとに「全社平均」「年度比較での増減」「再エネ化率」などを即座にグラフで一覧できます。
これにより、業績評価や調達戦略会議で「CO₂排出低減に寄与しているパートナー」「改善が遅れているサプライヤ」が明確になりました。
最終的には、調達先選定や新規取引交渉の場で「グリーン調達スコア」が加味される時代が本格化。
バイヤー側はコスト・納期・品質に加えて「環境パフォーマンス」を新たな武器に交渉ができるようになりました。
サプライヤ側も「うちのグリーン化先進性」が新たな差別化ポイントになり、ビジネスの好循環が生まれたのです。
業界動向も反映:他社とのベンチマーキング
導入したダッシュボードでは、自社サプライヤだけでなく「業界平均」「業界ベストプラクティス」も参照する仕組みにしています。
たとえば自動車部品、電子部品といった業種別に公開されているCO₂原単位(JIS規格や業界団体資料)をもとに、他社と比較できることで自社の改善余地を発見しやすくなりました。
このベンチマーキング機能は、社内改革の後押しや、「なぜ今グリーン調達が必要か」を経営層や現場従業員に腹落ちさせる効果もあります。
現場目線で語る「ダッシュボード運用の真実」
属人的なアナログ管理から仕組み化への転換
現場の実感として、ダッシュボード化を推進するうえで大事なのは「一部のITやサステナ担当だけで突っ走らないこと」です。
生産管理担当、品質管理担当、工場責任者、調達購買担当……それぞれ視点やKPIが違います。
この多様な関係者を「ダッシュボードで共通言語化」することで、意見調整や業務プロセスの標準化が一気に進みます。
また、現場では「また新しい指標を追加か…」「やらされ感が強い」という抵抗感もあります。
そのため“なるべく現状の業務プロセスや管理帳票を活かして、移行コストを抑える”のが導入成功の秘訣です。
昭和スタイルの調達現場にも文化を根付かせる方法
アナログ慣習の強い職場では、トップダウンの命令だけでは変革は定着しません。
私が実践したのは、ベテラン現場リーダー向けに「グリーン調達勉強会」「実績発表会」を継続的に開催し、部門横断で成功体験を気軽に共有できる場を作ることです。
– 数字が見える安心感
– 他部署との比較・成長実感
– サプライヤ担当者へのフィードバックで関係性が強化されること
こうした「小さな成功」にスポットライトを当て、現場メンバーが自分ごととして取り組みやすい状態を地道に作り上げました。
バイヤー・サプライヤ双方の視点から見た効果
バイヤー(調達担当)にとっての革新ポイント
– 調達先選定時にCO₂排出などの非財務指標がリアルタイムで比較可能
– ESG監査・CSRレポート作成時の証拠資料として即時出力
– 規制対応や異常値検知、改善施策の打ち出しにスピード感
– 経営層へのプレゼンテーション材料としてビジュアルに訴求可能
サプライヤ側の新たなメリット
– グリーン競争力を「数値」として発信することで、新たな引き合い・取引拡大に繋がる
– 顧客からの情報開示依頼や監査を円滑にクリアでき、信頼されるパートナーへ昇格
– サプライチェーン全体の脱炭素化に前向きな企業文化が形成される
ラテラルシンキングで考える今後の展望
CO₂可視化から価値創出への進化
今後はさらに先進的な取り組みが求められます。
例えば、
– AIやIoTセンサー、現場データ自動集積によるリアルタイム管理
– サプライヤと共同した省エネ・低炭素技術開発
– 調達・生産の「脱炭素バリューチェーン」再設計
凡庸なKPI管理に留まらず、製造現場が価値共創のプラットフォームに進化することが真の競争優位へつながります。
まとめ:現場の力で、持続可能な明日を切り拓く
グリーン調達指標のダッシュボード化は、単なる管理のIT化ではありません。
現場の知恵やアナログ文化を活かしつつ、バイヤー・サプライヤ双方の視座を一段引き上げる「変革ドライバー」です。
昭和型のアナログ調達現場でも、属人的な勘や経験だけに頼らず、データを軸に現場を動かし、持続可能な成長と環境経営を両立する時代へ。
製造業で働くすべての方々とともに、現場発イノベーションを積み重ねていきたいと心から願っています。
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