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プロジェクト別原価管理と発注をリンクさせ見える化を強化した装置産業の活用事例

目次
はじめに:装置産業における原価管理と発注業務の現状
装置産業、特に大規模なラインや専用機・計装などを扱う製造業では、「プロジェクト別原価管理」と「発注業務」は切っても切り離せない重要な要素です。
昭和・平成初期からの流れを受け継いでいる企業も多く、紙ベースやエクセル管理などアナログな手法が根強く残っている現場もいまだ多いのが実情です。
一方で、コスト構造や納期リスク、品質リスクが複雑化する中、「見える化(可視化)」の必要性が年々高まっています。
ここでは、20年以上にわたり装置産業の現場で、調達購買、生産管理、品質管理、そして工場の自動化に携わってきた視点から、最新の業界動向を交えつつ、「プロジェクト別原価管理」と「発注業務」をIT活用でリンクさせて見える化を強化した実践的な事例について解説します。
プロジェクト別原価管理とは何か?現場でなぜ求められるのか
原価管理とは、その製品やプロジェクトが「どれだけコストをかけて」作られているかを把握・コントロールする活動です。
装置産業では案件ごとに仕様や調達品が全く異なることも多く、一律のコスト管理は機能しづらい特徴があります。
そこで「プロジェクト別」の原価管理、すなわち一件一件の受注やプロジェクトごとに原価を細かく追いかけていく仕組みが欠かせません。
従来、設計・製作・組立・試運転・出荷と多工程にまたがる中で、プロジェクトごとに調達品目や外注工程も混在し、その都度「エクセル台帳」や「紙の伝票」で管理していた現場も少なくありません。
結果として「進捗中に今いくら使ってるのか?」「予想より費用超過していないか?」といった重要な情報がリアルタイムで把握できず、トラブル発生時にも即応できないという課題が顕在化していました。
発注業務の課題とその業界特有の障壁
一方の発注業務は、原価管理と表裏一体の関係です。
必要な資材や部品、外注サービスに対していつ・どこに・どれだけ発注したのか。
「誰が・なぜ決裁したのか」までの意思決定フローが複雑化する中で、発注金額・発注内容の取りまとめや納期管理は現場の頭痛の種となっています。
特に装置産業では、個別案件で仕様変更や緊急手配が頻発したり、発注先もサプライヤーごとに価格や納期、品質水準が異なったりします。
ミス一つで全体納期や原価が跳ね上がるリスクを常に抱えるため、属性の異なるバイヤーや調達担当、現場リーダー間で「情報の壁」が生まれやすいのも事実です。
また、依然として「上司のハンコ=承認」というような、アナログなプロセスが根強く残っている企業も多く見受けられます。
なぜ原価管理と発注をリンクさせる必要があるのか
従来の発注業務が、原価管理部門や現場のライン、経営層と「しっかりつながっていない」状態では、以下のような弊害が生じます。
- プロジェクトごとに「今どれだけ発注しているか」「残り予算はいくらか」即座に分からない
- 資材や部品ごとの使用実績と発注残が乖離し、重複発注や欠品のリスクが高まる
- 価格交渉や原価ダウン活動のPDCAが回らず、次回以降の調達精度も向上しない
つまり、「原価管理」と「発注」をリンクし、データをリアルタイムに共有できる仕組みを入れることで、現場と経営、調達と生産が一体となった正確なマネジメントが可能になります。
それが「見える化強化」の第一歩となります。
実践事例:装置メーカーでの原価・発注リンクの見える化プロジェクト
ここで、実際にあった大手装置メーカーでの「プロジェクト別原価管理と発注リンク」の事例を紹介します。
(安全保障上の配慮から、実名や数値等は一部変更しています)
- 「原価管理システム」と「発注ワークフロー」を連携
- 各プロジェクトごとに、発注予定・発注済み・受入済み・未払残の全データを一元管理
- プロジェクトリーダーや設計部門と調達バイヤーがいつでも「今いくら使っているのか」「あと残予算はいくらか」「実際の工場進捗に影響しそうな発注漏れはないか」が即座に分かる仕組みをクラウド上で構築
- 現場作業者によるスマートフォンからの発注依頼/確認や、出張先からの進捗アクセスなど、アナログ現場とデジタルが融合した運用へ移行
その結果、目に見えた効果として
- 原価逸脱(予算超過)案件の減少
- 発注ミス・手戻り削減による納期順守率向上
- 調達先ごとの見積もり・購買履歴データの蓄積に伴う原価低減(VA/VE)の迅速化
などを実現しています。
ここで大切なのは、新システムだけではなく「業務フロー自体も見直した」点です。
従来のハンコ承認文化、伝票の現場回覧ステップなど根強い“昭和的習慣”を、現場ヒアリングを重ねて段階的にアップデートしていったことが、根本的な定着のカギとなりました。
現場目線で語る導入のポイントと失敗しないコツ
システム化のみを追求しても、「運用が追いつかない」「余計な手間が増えただけ」という逆効果になる例が少なくありません。
導入の現場支援をしてきた経験から、以下のポイントが極めて重要です。
1. 業務フローの棚卸と“アナログの利点”の残し方
紙やエクセル、ホワイトボードをきちんと使いこなしている現場では、単純なデジタル移行が逆風になることもあります。
たとえば工具や治具の「誰がどこに置いたか一目で分かる」手書き台帳、
ベテラン作業者の“目利き”による部品再手配のタイミングなど、人の勘や即時性を殺してはいけません。
そのアナログの良さはできるだけ残しつつ、「数値化」「集約化」だけをシステムで置き換えます。
2. ドットでなくラインでデータを追う仕掛け
単なる「発注済/未発注/支払済」という点だけでなく、「どのプロセスで実際にコストが発生し、どのタイミングで原価割れリスクが高まるか」という“流れ”を見る設計にすることです。
売上、原価、外注費、部品費、工賃、それぞれを連続データでひも付け、「リアルタイム進捗×原価」の二軸で管理する視点が不可欠です。
3. 関係部署への徹底ヒアリングと「なぜやるのか」説明
調達部門、設計、現場管理、さらにはサプライヤーと綿密に対話する中で、「なぜ見える化が必要か」「どこまで業務負荷や慣習を変えられるか」の線引きを現場と協働で決めるプロセスが成否を分けます。
決してトップダウンだけでなく、現場の感覚・肌感覚から吸い上げることが、長寿命な仕組みづくりにつながります。
サプライヤー・バイヤー関係から見た透明性の効用
プロジェクトごとの原価管理・発注情報の見える化は、サプライヤーの皆さんへも「メリットもリスクも共にシェアする」新たなパートナーシップ関係を生みます。
バイヤー側の立場からすると、「発注内容の経緯」「仕様変更の理由」「原価に照らした価格交渉ポイント」が明確になることで、無意味な値切りや単なるコストダウン依頼ではなく、双方納得のいくWin-Win交渉が可能となります。
また、サプライヤーも「お客様がどの時点で何を求めているのか」「なぜこの品目が急ぎなのか」が可視化されることで、自律的なリードタイム短縮や品質向上策を打ちやすくなります。
従来は「バイヤーの考えていることが見えないから、とにかく安い見積を」「なぜ再見積なのか分からず手戻り」といったミスマッチが頻発していた状況が、格段に改善されます。
昭和のアナログから脱却した組織の未来展望
装置産業における原価管理・発注の見える化は、「一足飛びに最新IT導入」ではありません。
今まで現場を守ってきたアナログノウハウを、段階的にデジタルへと融合させ、「情報の壁」を壊す変革のプロセスです。
この改革が持つ本質的な価値は、
- 現場・管理・経営・サプライヤーが一体となることで、予防型のマネジメントとリスク回避を強化できること
- 価格交渉や納期交渉も「根拠ある対話」ができ、供給網全体の底上げにつながること
- 原価データの蓄積が次世代設計・スマートファクトリー化への土台となること
などにあります。
まとめ:装置産業の新たな地平線へ、見える化で未来を切り拓く
装置産業の現場課題を解決する「プロジェクト別原価管理と発注のリンク・見える化」。
それは単なるIT導入ではなく、現場の知恵と管理・経営の要請、そしてバイヤー、サプライヤーの関係再構築による変革の第一歩です。
情報が共通言語となり、全員参加型の経営が実現すれば、激動の時代でも競争力と現場力は“昭和”の良さを残しつつ進化します。
製造業に勤める方、これからバイヤーを目指したい方、またサプライヤー視点でバイヤーの考えを理解したい皆さん。
今こそ、「見える化」の力で装置産業を次の地平線へともに歩んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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