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改善活動を「言葉」でしか説明できず現場が理解できない事例

目次
はじめに
製造業の現場では、日々さまざまな「改善活動」が行われています。
なぜ改善活動が重要なのか。
それは、製造現場が抱えるムダやムラ、ムリの三大要素をなくし、品質、生産性、安全性を高め、競争力を維持するためです。
しかしながら、改善活動はときに「やったつもり」で終わってしまうことが少なくありません。
特に、上層部や管理職が「言葉だけ」で改善を説明し、現場が真に理解・納得できない場合、成果につながらないケースが散見されます。
本記事では、「言葉でしか説明できず現場が理解できない」改善活動の失敗事例を深掘りし、そこから読み取れる本質や、製造業に根付くアナログな業界動向、そして実践的な改善活動への切り口をご紹介します。
昭和から続く“分かったふり文化”に潜むリスクを、20年以上の現場経験をもとに解説します。
「改善」とは何か?現場と管理職で異なる認識
現場に伝わらない「改善」
私が経験した製造現場の多くでは、改善活動といっても非常に抽象的、あいまい、言葉先行のものになりがちです。
たとえば、あるとき工場長が「この工程はもっと効率化すべきだ」と檄を飛ばしました。
しかし、その具体的な中身については
「ムダをなくせ」
「効率よく動け」
「トヨタ式で3S(整理・整頓・清掃)を徹底せよ」
など、漠然としたスローガンのみ。
現場の作業員は、それをどう現場の仕事に落とし込めばいいのか、皆目見当がつかず
「結局、何をどうすればいいんだ?」
と戸惑うばかりでした。
言葉の裏にある認知ギャップ
製造現場と管理職、バイヤーとサプライヤー——。
それぞれの立場で「改善」という言葉の受け取り方は大きく異なります。
経営層や管理職は「生産性向上」「コスト低減」「品質強化」など、数値目標や経営課題を思い浮かべますが、現場作業者は「日々のオペレーションを変えろ」と急に言われても、何をどうしたらいいのか分かりません。
“言われたからとりあえずやる”という受け身姿勢にもなりがちです。
この“認知のギャップ”こそが、改善活動の最大の障害です。
「分かったつもり」「やったつもり」で終わる事例は、日本の多くの製造業で日常的に繰り返されています。
実際にあった「言葉だけの改善活動」事例
事例1:朝礼でのスローガン連呼
ある大手メーカーの現場では、朝礼で「ムダ取りを徹底しよう!」という掛け声を上司が何度も口にしていました。
しかし現場の誰も、どの作業が具体的にムダなのか、どのように改善すればいいのかを示されることはありませんでした。
結局、「ムダ取り」という言葉だけが一人歩きし、現場は何も変わらず、むしろ余計な書類や報告書が増える始末。
このような言葉だけの改善活動は、よくある光景です。
事例2:「見える化」の掛け声倒れ
別の現場では「見える化を推進せよ」というトップダウン命令がありました。
でも実際には、現場のホワイトボードに数字や指示が増えるばかりで、作業工程や品質のムラが改善されることはありませんでした。
“見える化”という言葉自体はキャッチーですが、「何をどう見える化するのか」「どう運用するか」が曖昧なまま進行。
現場作業員の理解が不十分なまま、形式的な張り紙や表示だけが増えていきました。
事例3:QCサークル報告会の名ばかり活動
QCサークル活動が盛んな現場では、“活動報告”が目的化している例も多いです。
資料を作って発表することだけに注力し、日常業務で改善内容を実践できていないという声が、現場から聞こえてきました。
管理職や事務局が“言葉で説明するための活動”となっており、現場の動きや作業工程には変化が見られませんでした。
なぜ「言葉だけ」で終わるのか? 製造業特有のアナログ構造
属人化に根付く昭和型マネジメント
日本の製造業、特に“昭和型”の現場では、「伝統的」「経験重視」といった価値観が根強く残っています。
「背中を見て覚えろ」「暗黙知を感じ取れ」といった属人的な伝承が多く、「言葉できちんと手順や改善の意図を説明する」ことが軽視されがちでした。
また、「上司の指示は絶対」というヒエラルキーも色濃く残り、疑問や本質的な質問を現場から投げかける風土がありません。
“分かっている前提”のコミュニケーション欠如
改善提案や新しい発想が生まれにくい理由の一つに、「分かっているだろう」「みんな同じ考えのはず」という前提に立ったコミュニケーションがあります。
本当は現場ごと・作業者ごとに視点も課題意識も異なりますが、そこを「言葉」で一律にくくって済ませてしまう。
その結果、改善策が本当に現場に合っているのか現場検証やフォローがなされず、やりっぱなし・言いっぱなしのオペレーションが横行しています。
数値や言葉“以外”で議論できない現状
製造業の現場は、「数値」で評価され、「報告書」や「議事録」「スローガン」といった“形式的な言語化”が重視される傾向があります。
本来、現場で求められるのは動作・工程・現物での「実感」や、現場作業者の「なぜこうなっているのか」という率直な気づきですが、そうした「肌感覚」は評価に反映されにくいのが実態です。
現場目線で考える、言葉だけに頼らない改善活動とは?
まずは「全員で現場を観る」ことから
改善活動において一番大切なのは、現場作業者自身が“自分ごと”として課題をとらえられることです。
机上の言葉や資料ではなく、実際に現場に足を運び、複数の目で「どこにムダ・ムラがあるのか」「どこで困っているのか」を観察します。
いわゆる「現地現物主義」が徹底されている現場では、自然と小さな改善が生まれやすくなります。
言葉だけでなく「見せる」・「体験する」仕組みづくり
抽象的なスローガンや数字だけではなく、実際に改善事例を「見せる」「具体的に手を動かして体験してもらう」現場主導の活動が有効です。
例えば、改善前後での作業動画を撮影し全員で疑問点や差分を出し合う、プロトタイプを早めに現場に導入してフィードバックを得る、といった工夫は大きな効果を発揮します。
小さな成功体験の積み重ねが“理解”を生む
「言葉」だけでは実感できない改善活動も、小さな成功体験を重ねることで現場の理解が生まれます。
1つの工程に5分の短縮、1つのチェックリスト項目の省略など、“すぐ効果が見えて納得できる工夫”から始め、現場自身のアイデアを大切にすることが、理解と納得を生み出します。
バイヤー・サプライヤーの立ち位置から見る「言葉」と「現場」のギャップ
バイヤーに求められる本質的なコミュニケーション
バイヤー(調達担当者)は「言葉」だけでなく、サプライヤーの現場まで足を運び、現実を知る努力が不可欠です。
“紙”に書かれた納期管理や品質規格だけでなく、「なぜこの納期になるのか」「なぜ品質が安定しないのか」を、サプライヤーと共に現場で検証・共感することで、双方の理解が深まります。
サプライヤー視点で考える「バイヤーの意図」
サプライヤー側も、「要求仕様・契約条件」だけを言葉で受け取るのではなく、その背景にあるバイヤーの戦略・事情を読み取り、現場改善の提案へつなげる工夫が求められます。
本当の意味でのコスト低減やリードタイム短縮も、単なる言葉や表向きの契約を超えた「現場での相互理解」から始まるのです。
ラテラルシンキングで考える:これからの改善活動のための新たな視点
アナログ文化との「賢い付き合い方」がカギ
製造業に根付くアナログ文化は、すぐに全面デジタル化できるものでもありません。
むしろ、現場作業者の熟練の知恵(アナログ)と、デジタルツール(AI・IoT)を「かけ算」する発想が大切です。
例えば、AI活用による予兆検知と、現場のベテランの目による微調整を組み合わせた「ハイブリッドな改善策」が、今後の新たなスタンダードになり得ます。
“言葉”を“共通体験”へアップデートする発想
単なる合言葉や抽象的な指示を、「実際の現場共有体験」へと進化させることも重要です。
現場が同じ課題意識・危機感を持つためには、単なる「報告書」ではなく、“一緒に汗をかきながら解決策を考える時間”をつくる組織運営改革が不可欠となります。
まとめ:本当に現場に根付く改善活動とは
改善活動を「言葉」で説明するだけでは、現場の理解や納得、主体的なアクションは生まれません。
昭和から続くアナログな業界動向や文化を踏まえ、“現場で観る・見せる・体験する”を重視し、小さな成功体験を仲間で積み重ねることが、これからの製造業の大きな力となります。
また、バイヤー・サプライヤー双方が、単なる言葉や契約条件を超えて現場に入り込み、相手の意図や事情を「肌で感じる」姿勢を持つことで、真のパートナーシップが生まれます。
これからの製造業発展のために、ラテラルシンキングを活かし、従来の思考の枠を飛び越え、「現場のリアルな声」から生まれる改善活動を一歩一歩積み重ねていきましょう。
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