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ロール段数削減が失敗につながるケース

目次
はじめに:ロール段数削減とは何か
製造現場や工場の自動化に関わる方々にとって、「ロール段数削減」というキーワードは馴染みが深いかもしれません。
この施策は、ほとんどの業界で原価低減や生産性向上の一手段として導入されてきました。
特に、フィルムや紙、金属、繊維など連続生産ラインを持つメーカーでは、ロール(巻取り装置/アンワインダー・リワインダー)工程の段数削減は、コスト・省人化・スペース効率などの面で大きなメリットをもたらすと一般的に考えられています。
しかしながら「ロール段数削減は万能」と信じて闇雲に進めてしまうことで、逆に現場で混乱や品質トラブル、隠れたコスト増を招くケースも実際は数多く存在します。
この記事では、製造現場で20年以上の実務経験と管理職の視点から、ロール段数削減の失敗に繋がるシナリオや業界特有の背景、調達・生産管理に与える影響まで、現場目線かつラテラルに掘り下げて解説します。
なぜロール段数削減が求められるのか
コストダウン圧力とスペース効率化
製造業におけるロール段数削減は、主に下記の3つの観点から求められることが多いです。
– 原材料・梱包材や物流コスト低減
– 工場内レイアウトの省スペース化
– 工程・装置数の減による保守管理や省力化
特に、調達購買部門のバイヤーはサプライヤーへ「ロール段数を減らしてくれれば1ロット引き取り数を増やせる=コスト削減につながる」と圧力をかけることがあります。
業界の伝統・温情的な運用
一方、昭和時代から続くアナログな製造業界では、作業者や現場の“肌感覚”によって段数や工程数が多めに組まれてきた事例が実は多いのです。
工程ごとに責任分担を明確化させ、トラブルポイントの切り分けや習熟度の差を吸収するバッファ(余裕)の意味も大きいのが特徴です。
こうした伝統は、ITやデータ分析が不十分な現場では未だ根強く残っています。
ロール段数削減の典型的な失敗パターン
1. 品質管理リスク増大
ロール段数を削減すると、中間検査ポイントが減り、一度生じた不具合のロット全体への波及リスクが高まります。
例えば、2段階あった巻き直し工程を1段に減らすことで、異物混入やシワ・ヨレの発生を見逃してしまう可能性が高まります。
品質トラブル発生時の影響範囲も拡大し、不良品一括廃棄・再生産などで想定以上のロスコストが発生します。
2. 現場作業者の習熟度依存度UP
段数を減らすことで設備・操作が複雑化することがあります。
特に多能工化が進んでいない現場では、不慣れな作業者がトラブル対応に戸惑い生産停止が頻発。
「結局ベテランしか扱えない」「標準作業書に頼っただけでは回せない」といった現象が起き、属人化・人件費高騰も招きます。
3. 段取り替え・ロス時間の増加
段数削減で工程が一本化されると、ロット切替・フォーマット変更のたびに巨大な段取り替えが必要となり、想定外のダウンタイムが生じます。
小ロット・多品種生産との相性が著しく悪化し、「トータルでみると操業効率が悪化した…」という本末転倒な結果も多いです。
4. トレーサビリティの低下
不具合やクレーム発生時、従来はロールごとに履歴・生産条件を細かく遡ることができました。
段数削減後は複数ロットが1ラインでまとめて処理され、どの工程で何が起きたのか原因究明が困難になります。
サプライヤー責任回避の余地が減り、バイヤー側の品質クレームリスクが高まります。
バイヤー・サプライヤー双方からみた「段数削減プレッシャー」
バイヤーの本音(購買側の事情)
調達・購買部門としては、ロール段数削減=余計な工程・過剰品質排除と捉え、“頑張れば削減できるはず”という業界標準圧力に駆られているケースが多いです。
特に海外競合や新興国サプライヤーに対抗するため既存サプライヤーへ「無駄な工程をズバズバ削減してコストを合わせてこい」と強く求めがちです。
しかし、現場の実態把握が不十分なまま机上論に終始した削減要請は、かえって総コスト増や納期遅延、品質悪化を招いてしまうリスクも孕んでいます。
サプライヤーの本音(現場・工場長の視点)
一方、サプライヤー側の現場では
「確かに段数は一目で見て多い。だが、それぞれに理由とノウハウがある」
「過去の品質クレームに苦汁を飲み、バッファ工程を敢えて挟んできた」
といった“現場なりの工夫”が重層的に積み重なっています。
特定ユーザーやOEM先の要求に柔軟に対応する必要もあり、「安易に削減すると、一番肝心の品質と信頼性が揺らぐ」ことをよく理解しています。
特に昭和からのアナログ、暗黙知が色濃く残る工程では「段数=危機管理・お守り」であることも多いのです。
現場目線で考える“ロール段数最適化”のアプローチ
「なぜその工程段数になったのか」実態ヒアリングが最重要
たとえば「かつて大規模な異物クレームをきっかけに中間検査工程を段数分だけ追加した」「旧設備の癖・不具合対応で短めのロットしか扱えなかった」など、過去の失敗から生まれた工夫がバッファ工程として残っていることが非常に多いです。
机上の標準工程表やカタログだけでなく、現場作業者・品質管理担当者へのヒアリングや、実際の現場観察を徹底することで「なぜ今こうなっているのか」の生の理由を収集します。
“闇雲な削減”はリスク増、バッファの意義を見極める
段数削減は決して悪ではありません。
問題は、“理由のあるバッファ”まで闇雲に削減し、後戻りできなくなることです。
たとえば「不良品発見→即座に止められるようロール分割している」「各段ごとに機能保証するため、段造工程で検査・改修しやすくしている」といった工学的・品質管理的な意味に納得感があれば、削減しない選択も“戦略的”です。
段数削減の効果とリスクを数値で評価する
段数削減による定量効果(コスト、効率化、省スペースなど)は必ず具体的な数字で見積もります。
また、一方で生じうる隠れたリスク(不良率上昇、歩留まり悪化、トラブル時の大損害リスクなど)も数値化し、バイヤー・サプライヤーが同じ土俵で納得できる“見える化”を心がけるべきです。
近年の業界動向と新しい視点
昭和的アナログ現場からデジタル連携へ
最近はIoTや現場系データの蓄積・解析が進み、現場感覚やアナログな“暗黙知”を見える化するツールが登場しています。
これにより、段数削減=単純な工程数減ではなく、「なぜ・どこで工程を区切る必要があるのか」その本質的理由をデータで検証できるようになりました。
サプライチェーン全体最適の視点
従来は発注側(バイヤー)が「こうしてくれ」と一方的に要求し、サプライヤーは言われるまま汗をかく…という構図が一般的でした。
今後は、サプライチェーン全体で「どの段数・工程構成が機能・品質・コストの最適解なのか」互いに知見を持ち寄る協業型アプローチが重要です。
これが新規バイヤー・サプライヤー関係構築、長期的な信頼性向上へつながります。
まとめ:ロール段数削減失敗を防ぐための3つの視点
1. 「現場起点」の生きた情報と課題を必ずヒアリングし、“意味のある段数”は理由を共有しましょう。
2. 削減メリットだけでなく、隠れたコストや品質リスクも具体的な数字・シミュレーションで見える化します。
3. バイヤー・サプライヤーで知恵を持ち寄り、単なるコスト圧縮だけでなくサプライチェーン最適化に向けた新たな“段数”、新たな現場プロセスの形を探りましょう。
50年前の“昔ながら”のやり方、昭和の成功体験に安住せず、ラテラルシンキングで「今とこれからの最適なプロセスとは何か」にチャレンジし続けることが、製造業の現場を強くし、皆様の価値を高めていく礎となります。