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泡の発生原因と消泡剤の適切な選定方法と使い方およびトラブル対策

目次
はじめに
製造業の現場では、さまざまな工程で「泡」の発生が問題となります。
泡が製品品質に悪影響を与えることはもちろん、生産効率や安全面にも多大な影響を及ぼします。
特に、化学品、塗料、接着剤、食品、製紙、廃水処理など、多岐にわたる業界で、泡対策は避けては通れない現場課題です。
本記事では、現場視点で「なぜ泡が発生するのか」、「最適な消泡剤の選定ポイントは何か」、そして「使い方のコツ」や「実際のトラブル事例と対処法」まで、実践知を交えて解説します。
長年の経験から得たノウハウや、昭和・平成・令和と変化し続けるものづくりの現場動向も踏まえて、製造業のバイヤーやサプライヤーの方、現場の技術者・管理職の皆さまに役立つ内容をご紹介します。
泡の発生メカニズムと要因
なぜ泡は発生するのか?
泡の発生メカニズムを知ることは、適切な対策の出発点です。
泡は、液体中に気体(主に空気)が取り込まれることで発生します。
攪拌、移送、注入、充填など、製造工程の各所で液体と空気が接触しやすい状況が生まれます。
このとき、液面張力や溶液中の成分(界面活性剤や粘度を上げる成分など)の影響によって、気泡が発生し、かつ液体中または液面上で安定してしまうことで「泡」となります。
主な泡発生の工程例
・原料の調合、溶解
・高粘度液の移送やポンプでの送液
・高速攪拌や撹拌に伴うエアの巻き込み
・フィルターやノズル通過時の気泡発生
・仕上げ・充填時の注入工程
・温度変動による液体の膨張および気体溶解量の変化
・廃水中の有機物反応や排水処理時の曝気部
特に、近年の生産現場では自動化・高速化が進み、攪拌・移送工程のライン設計が複雑化しています。
このため、従来以上に泡への対策が求められています。
アナログ現場に潜む泡トラブル
製造業の中には、いまだに「感覚」「勘と経験」「現場のベテラン依存」で泡処理をしている現場も多く見られます。
昭和・平成のアナログ工程を引きずって、泡の発生原因の真因分析や、実効的な消泡剤の導入・運用が遅れている現実も少なくありません。
泡による品質・生産への影響
泡が製品や生産現場にもたらすリスクは多岐にわたります。
主な悪影響
・充填量のバラツキや計量ミスによる品質不良
・製品中へ気泡混入による外観不良や強度低下
・泡によるフィルターやノズルの目詰まり・閉塞
・排水処理時の泡噴出、設備からの溢あふれトラブル
・薬品成分や塗料成分同士の混合ムラ
・攪拌タンク壁面への付着や洗浄作業の工数増
・泡による加熱・冷却のムラとプロセス異常
これらのトラブルは、「ちょっとした泡」と軽視すると、思わぬ損失やクレーム、生産停止へと連鎖します。
現場ではあらゆる角度から泡の発生~除去までを見直すことが、軽視できないテーマなのです。
消泡剤の基本的な種類と特性
消泡剤選定の要は、「どんな泡」に「どんなタイミングで」「どう効かせるか」を知ることです。
大きく分けて3タイプ
- 油脂系消泡剤(鉱物油・シリコーン油・植物油など)
- 界面活性剤系消泡剤(ノニオン・アニオン・カチオン型)
- 固体粒子系消泡剤(微粒子シリカ、ワックス粉末など)
特徴の一例
・油脂系…幅広い用途に利用され、消泡力が強い。
ただし、液体の透明度や後工程へ悪影響が出る場合も。
・シリコーン系…微量で高い消泡力を持ち、耐熱性にすぐれる。
ただし、シリコーン汚染(塗料・接着剤・印刷の密着不良)リスクがあるので要注意。
・界面活性剤系…比較的安価で、分散・乳化プロセス向き。
ただし、泡を消すよりも抑える(抑泡)性格が強く、応答速度は油脂系・シリコーン系に劣る場合も。
・固体粒子系…残留しにくく食品や医薬用途に適する。
泡の発生段階ではなく表面の泡膜破壊に強い。
選定時に考慮すべきポイント
・泡の種類(分散泡か表面泡か?)
・液体の組成、pH、温度帯
・最終製品や工程への悪影響リスク(着色、臭気、沈殿、粘度変化など)
・消泡剤の残存・溶解特性
・法規制、環境負荷、食品適合性などの基準
・コストパフォーマンス(投入量、希釈率、頻度、全体コスト)
このように、現場個別に最適な“消泡剤設計”が強く求められます。
消泡剤の適切な使い方とコツ
消泡剤は闇雲に投入すれば良い訳ではなく、適切な使い方が非常に重要です。
ポイント1:投入タイミング
・攪拌や混合の前後どちらが効果的か
一般に「泡が発生する前」=抑泡目的での投入が安定しやすいですが、「泡が発生した後」に消泡目的で追加投入する場合もあります。
・継続投入vsスポット投入
連続プロセスかバッチプロセスかにより投入方法を適宜選択します。
ポイント2:投入方法・分散の工夫
部分投入ではなく撹拌・分散を均一にすることで、消泡剤本来のパフォーマンスが最大限発揮されます。
製剤希釈や噴霧、エアミックスなども有効です。
ポイント3:使用量とコスト管理
多すぎる投入は、逆に泡の発生を助長したり、沈殿・悪臭等の新たなトラブルの元となります。
必要最低限の使用量をまず見極め、現場ごとに検証を重ね、過剰投与・コスト増を防ぐ必要があります。
現場でよくある泡トラブルとその対策
事例1:ノズル詰まり・塗布ムラ
泡による噴射ノズル詰まりは、塗装、印刷、接着など幅広いラインで発生します。
エア抜き・デガス装置と併用し、消泡剤も低泡性タイプへ変更、発泡量が少ない原料選定なども併用することが効果的です。
事例2:汚染・密着不良(特にシリコーン系消泡剤)
シリコーン消泡剤の微量残留は、塗料・粉体塗装・印刷工程での密着不良や被膜欠損のリスクがあります。
この場合、溶剤可溶型へ変更、界面活性剤系へ切替、完全洗浄の徹底、現場テストの増強等によるリスク低減がポイントとなります。
事例3:排水処理での「泡噴きこぼれ」
排水処理場で曝気槽の泡が溢れ出すトラブルは、現場での大きな悩みのタネです。
消泡剤の選定と同時に、曝気量調整、滞留時間管理、物理的除泡(スクリーン・バッフル等)など、多面的対策が必要となります。
今後の業界動向と泡対策アプローチ
昨今の製造業界では、サステナブル(持続可能性)への意識とともに、「消泡剤の生分解性」や「食品適合」「VOCフリー」などの新たな選定基準が重要になっています。
一方で、「現場の自動化」「データ活用」が進む中、泡のリアルタイムモニタリングや画像解析による泡管理など、IT技術との融合も加速しています。
しかし、多くの工場現場では、古臭い悪習「泡=ベテランの勘と経験」として片づけられ、トラブル発生時には“誰もが手をこまねく”状況も少なくありません。
ここでこそ、サプライヤーがバイヤーの求める“泡の根本課題”を掘り起こし、現場ごとのオーダーメイドな消泡剤提案、安全性・経済性を踏まえた運用サポートにまで広げていくことが求められます。
まとめ・今後の現場への提言
泡対策は「技術+運用+現場の気づき」が一体となって初めて結果が出ます。
実際の現場で起きている泡トラブルは、一見単純に見えて、設備設計・原料設計・工程管理・人の運用意識にまで根強い課題を生みます。
今こそ、泡の発生メカニズムを根本から見極め、自社現場最適な消泡剤の選定と、使い方、コスト、工程トータルでのリスク最小化を目指すことが肝要です。
そして「泡問題は古い?」という固定観念を乗り越えて、生産性の向上、品質のブレをなくす“地道な改善活動”を徹底しましょう。
現場の皆さまが、「泡」に悩まされない、強靭でものづくりに集中できる生産ラインを実現できるよう、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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