電子機器・電子部品におけるノイズ発生の原因とEMC設計のポイント

はじめに

電子機器や電子部品は、近年のテクノロジーの進化に伴い、ますます複雑化し高機能化しています。
それに伴い、ノイズに関する問題も増加しており、電子機器の性能や信頼性に重大な影響を及ぼすことがあります。
ノイズ問題を解決し、電磁適合性（EMC）を確保することは、電子機器の設計において非常に重要です。
本記事では、ノイズの発生原因、EMC設計のポイントについて詳しく解説し、製造現場での実践的な知識を共有します。

電子機器・電子部品におけるノイズ発生の原因

外部からの電磁干渉（EMI）

外部からの電磁干渉は、電子機器に影響を与える主要な要因の一つです。
例えば、近くを通る電線や無線信号、隣接する電子機器の動作などが、電子機器に予期せぬ電流や電圧を誘導し、ノイズを発生させる原因となります。
これらの外部ノイズは、特に高感度の電子回路やアンテナ関連の機器に大きな影響を与えることがあります。

内部発生のノイズ

電子機器自体からもノイズが発生することがあります。
例えば、モータードライブやパワー回路、また高周波ICのスイッチング動作などによる高調波ノイズです。
これらの内部ノイズは、適切な設計やシールドが行われていない場合、他の回路部分に影響を及ぼし、動作不良を招く可能性があります。

接地不良

接地不良は、ノイズ発生の原因としてよく見られる問題です。
正しい接地が行われていないと、電磁誘導による少量の電流が回路間に流れ込み、ノイズとなります。
これは内部の電子機器間で電圧差を生じさせ、誤作動や信号の劣化を引き起こす可能性があります。

静電気

思いがけないところで静電気がノイズを発生させる原因となることも忘れてはなりません。
特に乾燥した環境では静電気の蓄積が発生しやすく、放電する際に信号回路に高電圧をかけてしまうことがあります。
これにより、予期しないノイズが発生し、電子機器の誤動作を招くことがあります。

EMC設計のポイント

シールド技術

電子機器において、ノイズを遮断・緩和するための手法として、シールド技術が有効です。
金属シールドケースやシールドガスケットを使用することで、外部からの電磁波の影響を受けにくくすることが可能です。
また、適切なシールド設計により、内部からのノイズも外部に漏れにくくなり、他の機器に対する影響を低減することができます。

電源ラインフィルタリング

ノイズが電源ラインを通じて侵入することを防ぐために、フィルタを使用することが推奨されます。
フィルタには様々なタイプがありますが、共通モードフィルタや差動モードフィルタなどが一般的です。
これらのフィルタにより、特定周波数帯のノイズを効果的に除去し、安定した電源供給を実現します。

接地設計の最適化

良好な接地は、ノイズ対策において極めて重要です。
正しく設計された接地は、ノイズが回路へ侵入することを防ぎ、また漏れ電流を効率的に排出します。
接地配線の最適化やグラウンドループの防止、適切な接地ポイントの選定が重要となります。

PCB設計の工夫

ノイズを防ぐためには、PCB（プリント基板）設計にも注意を払う必要があります。
例えば、ノイズ感度の高い回路をノイズ発生源から離して配置する、戻り信号用のグラウンドパターンを工夫するなどの設計テクニックがあります。
また、信号線と電源ラインの適切なレイアウトにより、ノイズの影響を最小限に抑えることが可能です。

静電気対策

静電気によるノイズを防ぐには、帯電防止剤の使用や適切な湿度管理などが有効です。
さらに、ESD（静電気放電）対策部品を設けることによって、突発的な静電気ノイズから回路を保護することができます。

まとめ

電子機器・電子部品においては、多くのノイズ発生要因が存在し、それが性能や信頼性に重大な影響を与えることがあります。
しかし、適切なEMC設計を行うことで、これらの問題を未然に防ぐことが可能です。
本記事で紹介したシールド技術、電源ラインフィルタリング、接地設計、PCB設計の工夫、静電気対策などのポイントを参考に、実際の製品開発においてノイズ問題を効果的に解決していただければ幸いです。
最適なEMC設計は製品の競争力を高め、信頼性を向上させるための鍵となるでしょう。