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EN 60204-1に基づくCE対応の考え方

目次
はじめに:EN 60204-1とは何か
EN 60204-1は、「機械類の安全-機械の電気装置-第1部:一般要求事項」(Safety of machinery – Electrical equipment of machines – Part 1: General requirements)として欧州で非常に広く参照されている規格です。
この規格はCEマーキングを取得する上での必須要件のひとつであり、特に日本をはじめとした非EU圏の製造業にとっても、欧州市場への参入のためには欠かせない知識です。
昭和から長らく続くアナログな現場でも、グローバル化の流れの中で今や「EN 60204-1対応」「CEマーキング取得」「安全設計」は避けては通れないキーワードとなっています。
この記事では、現場目線に立ったEN 60204-1の考え方、対応の実務、そしてバイヤー(調達担当者)やサプライヤーが本当に気を付けるべきポイントについて、実践的に掘り下げていきます。
EN 60204-1に基づくCE対応の全体像
CEマーキングの意義とEN 60204-1の位置づけ
CEマーキングは、欧州連合(EU)域内で製品を販売するために求められるコンプライアンスサインです。
機械指令2006/42/ECの要求事項を満たす証として貼付され、その基本安全要求(Essential Health and Safety Requirements: EHSR)には、電気安全も当然含まれています。
EN 60204-1は、その電気安全要求のうちメインの技術基準として位置付けられています。
そのため、工場の制御盤や設備、装置、ラインへの適用が不可欠です。
「チェックリスト消化」では失敗する現場
EN 60204-1に対応するには、単なる「チェックリスト消化」「カタログスペックで選定」では対応できません。
現場設備は千差万別、既存ラインとの兼ね合い、昭和時代から続く配線方法や制御部材の慣例が強く残っている、日本企業独自の“阿吽の呼吸”で作られてきた系統であればなおさらです。
実際に現場で頭を悩ませるのは「理論上はOKでも、現実にはできない/やりにくい」ポイントが多数あることです。
このため、実際の“使われ方”に即した工夫と、現場との合意形成が不可欠です。
EN 60204-1の主な要求事項と重要ポイント
保護接地(PE)と絶縁設計:老舗現場の“常識”が通じない落とし穴
EN 60204-1では保護接地の明確な寸法・太さ・色分けが要求されています。
しかし、国内の昭和式現場では「アースはあとでまとめて…」「緑色線はアースで使うから適当に回しておけばOK」といった慣例が残っています。
ところが、EN 60204-1では、PE線は明確に黄緑線(黄/緑ストライプ)とされ、制御系や信号線と混在させることが認められません。
また、盤と装置、装置間での接地連続性確認も要求されています。
旧来の「一番近い制御盤にまとめて落せばOK」ではCE対応審査をすんなりパスできず、思わぬ手戻りが発生するケースが多発しています。
非常停止(EMO)、主電源遮断:設計思想のギャップに注意
日本の多くの工場では非常停止ボタンや主電源スイッチの設置位置・方式も独自流儀が強いですが、EN 60204-1では
– 人が簡単にアクセスできること
– 電気的遮断の系統が明確であること
– 鍵付き遮断や多段セーフティシステムは、メカ的手段と組み合わされること
が要求されます。
主電源の3極遮断や、トラブル時の誤作動防止回路設計は、意外に“昭和流”と整合しないポイントがあり、各種リレーやブレーカー、セーフティリレー選定に現場知見が必要です。
ラベル表示・回路図明記ルール:日本製図との“違和感”を超えて
回路図・ラベル・端子盤表記についても、EN 60204-1の下では
– IEC準拠のシンボル、配線番号、クロスリファレンス記載
– 端子台、ケーブル色分け、回路図記載内容の英語化(または多言語化)
を要求されるため、国内基準(JISや慣例図記法)とは完全一致しません。
外部監査から「この図はどの装置を示すのか」「この表示の意味は何か」聞かれて詰まる現場や、オペレーターが即時復旧できないラベル表示の不備など、現実的な手戻りポイントが多発します。
バイヤーやサプライヤーが理解すべき現場目線の“盲点”
現場要員の“本音”とライン停止リスク
厳格なEN 60204-1対応を進めると、旧式設備や既存ラインの一部を抜本的に積み替えなければならないケースが出てきます。
「現場は昔のままが一番安心」「動いているなら触るな」という文化が根強い工場では、突貫工事や現場作業負荷・ライン停止リスクにも考慮せねばなりません。
バイヤー(調達担当者)としては、単純に「書類整え工事」を優先するのではなく、
– どの現場で誰が実作業し
– どの工程が一時的に停止・変更され、
– どう現場オペレーションが変わるのか
丁寧に現場関係者と合意形成していくことが重要です。
サプライヤー(部品・装置側)の苦悩と協業の重要性
サプライヤー視点では「CE/EN対応可」とうたうだけで受注が取れる時代は終わりつつあります。
本当に求められているのは、“現場で実際に使われたとき”の運用負荷や不具合リスクまで見据え、付加価値提案ができるかどうかです。
例えば、単に「PE線を増やせばOK」ではなく、既存盤レイアウトや配線ダクト容量、ピットの物理スペース、盤工担当の作業動線まで事前にすり合わせ、無理のない改善案まで提案できるかが勝負所となります。
現場観察や、現実の作業動画・写真・手順書まで確認する姿勢がサプライヤ―への信頼につながります。
ラテラルシンキングで“昭和現場”から未来志向への転換を
なぜ今、固定観念から脱却しなければならないのか
昭和から続く“現場力”は、日本の強みであり財産です。
しかし、そのままではグローバル競争の中で「CEへの形式的対応」「英文マニュアルの丸写し」になりかねません。
ラテラル(水平思考)的発想、つまり
– 他業種のベストプラクティスの応用
– IOTやAI・自動化技術との融合
– システム全体最適(プラント、設備、サプライチェーン)
という視点を盛り込むことが、次の時代を生き抜く製造業の条件になります。
現場巻き込み型の「合意形成モデル」
有効なのは、“トップダウンで押しつける”のではなく、
– 早い段階から現場主導のワーキンググループを作り
– 各部署の困りごと・現状把握を丁寧に吸い上げ
– 試行錯誤型プロジェクトで現場改善→規格要求に丸め込む
というボトムアップ型アプローチです。
このプロセスを通じて、現場力と規格対応力が噛み合えば、日本企業の丁寧な安全設計や改善志向は、むしろ欧州やグローバル市場で最大の武器になります。
まとめ:EN 60204-1対応は“現場発”のイノベーションエネルギー
EN 60204-1やCE対応は、単なる書類仕事、コストアップの元凶ではありません。
工場現場が主体的に関わり、現実の使い勝手・安全性・生産性向上を目指す過程そのものが、現場発イノベーションの原点です。
バイヤーやサプライヤー、設計者・品質管理者・オペレーターが共に現場で汗を流してこそ、“本当に価値あるCE対応”が実現します。
昭和型からの脱却、そしてグローバル水準への進化を目指して、貴社の現場で「EN 60204-1に基づくCE対応」の次世代モデルを作り上げてみてください。
「現場を知るものが最強である」――その精神は、世界のどの現場でも通用します。
これからの日本製造業の現場力が、再び世界をリードする日を目指しましょう。