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規制対応の全体像:CE/FCC/UKCA/PSE/TELECをロードマップ化する

目次
はじめに:製造業における規制対応の重要性
現代の製造業において、グローバル市場で戦い抜くためには、各国・地域ごとに異なる規制認証への対応が避けては通れません。
CE(欧州)、FCC(アメリカ)、UKCA(イギリス)、PSE(日本)、TELEC(日本の無線機器)など、どれも市場参入の「パスポート」のような存在です。
これらの認証は、法規制順守だけでなく、製品品質や企業の信頼性にも直結しています。
ですが、その審査基準は年々細分化・高度化しており、規制対応に頭を悩ませている設計者や調達担当、生産現場、さらにはバイヤーや営業担当も珍しくありません。
本記事では、これら規制対応の全体像と、「どの順番で」「誰が」「何をすべきか」といった「現場目線のロードマップ化」を意識し、製造業のリアルな課題解決と実践的なノウハウをご紹介します。
なぜ今“規制対応”がクローズアップされているのか
かつて、ものづくりと言えば匠の手技と現場の調整力が売りでした。しかしグローバル化とコモディティ化が進むなか、各国で「安全・品質・環境」についての規制が一層厳しく、かつ複雑になっています。
加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営への流れや、調達先・販売国からの規制要求も増しています。
組織として意図的・戦略的に規制対応へ取り組む体制を築かないと、「設計はできた。でも認証でNGが出て市場出荷できない」「規制対応コストを甘く見て利益が吹き飛んだ」といった失敗に直結します。
昭和的な“ベテランの勘”頼みから脱却し、規制対応を「設計」「調達」「生産」「品質保証」の全プロセスで標準化し、体系的なロードマップを描くことは、競争力の源泉となるのです。
主要な製品規制の全体像
それぞれの規制名称や役割を簡単に整理しておきましょう。
CEマーキング(欧州経済領域)
EU域内で販売するために必須。「安全性」「電磁適合性」「有害物質管理」など多面的視点で各指令が存在します。
FCC認証(アメリカ合衆国)
通信機器や電子機器の、電磁妨害(EMC)に関する規制。未認証製品の輸入は即没収・罰金のリスクも。
UKCA(英国独自認証)
ブレグジット以降、英国独自規制が始動。CEとほぼ同等基準だが、今後独自性が強まる見込み。
PSE(日本の電気用品安全法)
日本国内で指定された電気製品の安全検査・認証。未認証品は販売禁止。
TELEC(日本の無線機器認証)
Wi-FiやBluetoothなど無線通信機を日本国内で使用・販売する際の技適マーク。年々対象機器や審査内容が拡大中。
これらに加え、RoHS・REACH(有害物質規制)、UL(米国安全規格)、CCC(中国)など、対象市場によってさらに多様な規制があります。
規制対応ロードマップの全体像:上流から現場まで
単に「とりあえずCEもPSEも受けておけば良いだろう」と考えると、設計・コスト・納期・品質に大きな無駄や矛盾を生みます。
ここでは、現場で実践してきた知恵を盛り込みつつ、規制認証との賢い向き合い方をロードマップ形式で解説します。
ステップ1:販売目標国の明確化と規制情報の洗い出し
最初に、「どの国で」「どのモデル」「どのタイミングで」販売・納入するかを営業や事業部・開発部門とすり合わせます。
次に、それぞれの国・地域で必要となる規制項目(例:CE+PSE、CE+UKCA+FCCなど)を明文化して一覧化します。
ここで「追加規制(環境規制や情報セキュリティ規制など)」も含めて最新トレンドも網羅できるよう、外部の規制専門家とも連携しておくと◎です。
ステップ2:製品企画・設計段階での規制要求仕様の織込み
設計図面や仕様書作成段階で、対象国・地域の規制要件(耐電圧・絶縁距離・材料規制・EMC要件など)をリストアップし、構造や部品の選定段階から“先回り”して反映させます。
現場では「PSE対策を後付けしたら基板から全部作り直し」「CE適合させたつもりが、うっかりRoHS準拠品でない部品が混入しNG」といった“やり直し工数”が多発します。
該当する規制を設計レビュー段階から事前にクリアできるよう、Excelベースの規制マトリクス表などで管理するのが有効です。
ステップ3:調達・サプライヤーとの連携
グローバルサプライヤーから部材・製品を調達する際、規制適合証明書(Declaration of ConformityやRoHS/REACH証明書など)の入手が必須です。
サプライヤーに対して、「納入品に規制適合不可な原材料が混じった場合の責任分界」や、「万一規制要件変更が発生した場合の対応ルール」も契約書レベルで明記しておきます。
サプライヤーの多くは「どの規制に何を求められているか」を十分に理解していません。
調達部門とサプライヤーが協力し、現物・書類・QA対応まで事前検証しておくことがミスゼロの鍵となります。
ステップ4:試作品・量産試験と第三者認証機関の選定
試作・量産前に、規制基準へ適合しているか評価するための認証ラボ・第三者機関(例:TÜV、UL、Intertek等)を積極的に活用します。
この段階で「サンプル検体」「測定データ」「宣言書(DOC)」など各種ドキュメントを作成し、万一“想定外の不適合”が発生した場合の対応フロー(設計変更or申請方法見直し)も準備しておきます。
現場主導で設計やQA担当・調達・営業が一体となって進めることで、リスクと無駄な手戻りを極小化できるのです。
ステップ5:製品ラベル・取扱説明書・申請手続きの反映
CEマーキングやPSE、FCC IDなどの証印・ラベル貼付、またはマニュアル類への規制準拠記載など、出荷直前の対応が必要です。
このラベル表記や申請手続きも国ごと・規制ごとに細かな違いがあるため、法務・知財部門とも連携して「抜け・漏れがないか」「データ保存が完璧か」を最終チェックしましょう。
ステップ6:アフターサービスと規制変更対応(PDCAサイクル)
規制は絶え間なくアップデートされます。販売中・販売後も「規制変更情報のウォッチ」「新規制対応時のサプライヤー指導」「認証更新時の追加申請」まで社内体制を組み直しておくことが必須です。
よくある現場の“落とし穴”と対策
現場でありがちな失敗例
– 設計段階で規制要件の一部を見落とし、量産間際でやり直し(納期遅延・コスト増大)
– サプライヤーと“規制適合範囲”の認識ズレによる市場クレーム対応
– 認証機関・試験ラボ選定の失敗で追加試験や無駄な費用発生
具体的な対策
– 法令・技術規格の専門人材を育成&外部有識者とのアドバイザー契約を積極化
– 規制ごとの全社統一フォーマットで設計~生産までを管理(規格対照表やトレーサビリティ台帳の整備)
– 法務・知財・調達・設計・品質保証のクロスファンクショナルな体制を築く
サプライヤー・バイヤー双方の“腹の探り合い”に勝つには
サプライヤー側は「バイヤーは規制をどこまで厳密に求めているのか?」、逆にバイヤー側も「サプライヤーはどこまで本当に規制に精通しているか?」という疑心暗鬼がつきものです。
この壁を乗り越えるには、「社内外の担当レベルで規制情報を共通言語化し、それぞれの立場で“リスク”と“コスト・納期”の落としどころを、情報・ロジック・現場目線で議論する文化」を浸透させることが重要です。
生産管理現場では、サプライヤーから届く規制証明書や書類にも「本当に信じていいのか?」という現場不信が根強くあります。
実際のところ、“正しい規制対応”で信頼と競争力を保つには、「監査」「現場検証」「リアルなコミュニケーション」の地味な積み重ねが不可欠なのです。
結論:規制対応は“管理”ではなく“組織戦”で勝つ時代へ
複雑化するグローバル規制に、昭和的な「現場のおっちゃんの経験と度胸」だけで立ち向かうのは限界です。
設計・調達・生産・品質保証の“全プロセスでPDCA”を回し、チームとして事実ベースで規制対応を推進する時代に入りました。
そのためには、規制要件情報の体系化(可視化)、目標国対応のロードマップ化、現場~サプライヤー~バイヤーまで“共通言語”で議論する文化が必須です。
規制対応は「苦役」でなく、「品質と信頼」を高める攻めの武器へ――。
製造業の現場から、ラテラルシンキングで一歩先の競争力を構築しましょう。
おわりに:実践者交流のススメ
本記事を通じて得た知見を、社内だけでなく業界内・異業種交流会などで積極的に情報共有してください。
時代や地域によって変わる規制・現場の“旬な悩み”に、みんなで知恵を持ち寄ることで、新しい地平線が切り拓けます。
製造業の未来は、あなたの現場力と学びの深化にかかっています。
引き続き、リアルな現場ノウハウと、規制対応という「見えない競争力」の磨き上げにチャレンジしていきましょう。
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