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CEマーキング取得の流れと落とし穴

目次
はじめに:CEマーキングの重要性
日本の製造業において、グローバルな市場展開はもはや避けて通れない時代となりました。
特にヨーロッパ市場に製品を供給する際には、CEマーキングの取得が大前提となります。
CEマーキングは、欧州連合(EU)域内で販売される製品がEUの安全・衛生・環境保護に関する要求事項を満たしている証しです。
取得しなければ、輸出自体ができないケースも多く、ビジネス機会の喪失につながります。
しかし一方で、昭和時代から続くアナログな業務体制や、業界独自の“空気”が根強く残る日本企業にとって、このCEマーキング取得のプロセスは大きな壁となることが少なくありません。
本記事では、CEマーキング取得の実践的な流れと、その過程でありがちな落とし穴について、現場での知見を交えつつ徹底解説します。
バイヤーやサプライヤーの方々、そして製造現場の皆様にも役立つ“生きたノウハウ”をお届けします。
CEマーキング取得の基本的な流れ
1. 製品の該当法令・指令(指図)の特定
まず最初に行うべきは、自社製品にどのEU指令・規則(Directive/Regulation)が適用されるかの特定です。
例えば、機械安全指令(機械指令)、低電圧指令、EMC指令などが代表的ですが、複数が重複適用されるケースも珍しくありません。
昭和的な“暗黙知”や経験だけで「うちの製品は大丈夫だろう」と思い込まず、欧州委員会のガイドラインや製品カテゴリーを丹念に調査することが重要です。
不要な指令まで適用するとコスト増、逆に見落とすと後々大きなトラブルにつながります。
2. 適合性評価手続きの選択
適用される指令ごとに、いくつかの適合性評価手続きが定められています。
例えば機械指令では、自己宣言方式(製造者による評価)の場合と、第三者機関による型式審査が必要な場合とで大きく異なります。
多くの日本企業では、「とりあえず第三者機関に任せてしまおう」となりがちですが、必要ないフル審査を選択してしまい、結果的にコスト・期間ともに肥大化する事例も頻発しています。
リスクアセスメントや設計ドキュメントの整備に自信があるなら、自己宣言方式の活用も十分に検討すべきです。
3. 基準(EN規格)の特定と適合確認試験
CEマーキングでは、EU整合規格(harmonized EN standard)に基づき製品安全を確保します。
ここで難しいのが、日系企業が従来慣れてきたJIS規格や独自の社内規格では通用しない点です。
たとえば機械ならばEN ISO 12100(安全設計原則)、電気機器ならEN 60204-1(機械の電気装置)など該当規格を調査し、それぞれの要求事項を一つ一つ遵守することが求められます。
自社内に欧州規格のノウハウがない場合は、認証機関やコンサルタントの活用も現実的な選択肢です。
また“型番追加”や“仕様違い”も個別判定が必要で、コスト見積もり時点で盛り込むことを忘れがちです。
4. 技術文書(Technical File)の作成
CEマーキングの核心と言えるのが「技術文書」の整備です。
この文書には製品の設計図、材料リスト、使用方法、リスク評価、試験報告書などが含まれます。
「なぜ安全と言えるのか」を客観的に証明するものであり、欧州の監査官はこのファイルの中身を非常に重視します。
日本の現場では、「図面保管は現場任せ」「設計の意図が属人的」といったケースが散見されますが、欧州式のロジカルで文書化されたエビデンス体制に変換しなければ認められません。
このプロセスこそ、昭和的な現場からデジタル・グローバル経営へと飛躍するきっかけとなるでしょう。
5. 適合宣言書(DoC)やCEマーキングのラベル貼付
全てのプロセスを終え、要求事項への適合が確認できれば、製造業者名で「適合宣言書(Declaration of Conformity)」を発行します。
各指令で指定された書式に基づき、責任者サインの上で作成・保管します。
次いで、製品本体(またはパッケージ)にCEマークを適正に貼付することで、はじめてEU市場へのアクセスが正式に認められるのです。
現場で見落とされがちな落とし穴
1. サプライチェーン全体の整合性不足
CEマーキングは、完成品メーカーだけの課題ではありません。
部品・半製品の段階から安全性が担保されていることが前提となります。
調達購買部門は欧州対応部材の調達力強化や、サプライヤー側もバイヤー意図の理解が重要です。
例えば欧州規格準拠の部品を求められた場合、バイヤーはどんなリスク回避を図りたがっているのか。
サプライヤーとして微妙な“製番違い”や“プロセス変更”も、適合性に大きく響くため、相互に密なコミュニケーションが求められます。
2. 規格改訂・法改正の情報キャッチアップ漏れ
CE関連規格や指令は頻繁に改訂されます。
たとえば2023年には「機械指令」が「機械規則」に大きくアップデートされています。
現場での「去年通ったから今年もOK」という油断や、多部署間での情報連携の遅れは大きなリスクです。
昭和型の“伝言ゲーム”スタイルでは致命的な遅延や誤解が生じやすいため、全社横断データベースや情報共有ツールの導入を積極的に勧めます。
3. 後回しにされがちなリスクアセスメント
CE取得で一番大変なのは、“リスクアセスメント”の徹底です。
製造現場の経験や“慣れ”で危険源を見逃したり、当事者意識が薄くなったりすることがよくあります。
リスクは“ある物”として捉え、定量・定性評価を綿密に行う体制づくりが必須です。
4. 日本品質と欧州要求のギャップに潜む油断
日本の“こだわり品質”がそのまま通用するとは限りません。
たとえば、指標や安全距離、表示の言語など、細かい部分も欧州側の厳格な定義で求められます。
“察し”や“現場合わせ”で処理していると、CE審査で細かく突っ込まれ、再対応や市場からのリコールにつながるケースもあります。
昭和から抜け出せない業界が今やるべきこと
1. デジタル文書化と標準化
CEマーキング取得は、現場の“言った・聞いた”や紙ベース業務から、デジタルによる一元管理が強く求められます。
設計、製造、検査、調達、品質保証まで全ての記録を連携し、ダブルチェック体制とエビデンス整備を進めることが急務です。
2. 人材育成と社内意識改革
現場経験の積み重ねだけでは対応できない「国際規格リテラシー」を持つ人材、つまりラテラルな視点で欧州基準と日本独自のやり方を橋渡しできるコーディネーター的人財が今後増々必要となります。
またトップダウンでの現場巻き込みや、ルール遵守の新しい価値観を会社として浸透させることが、企業競争力の強化にもつながります。
3. サプライヤー・バイヤーの新しい関係構築
CEマーキング取得プロセスは、単なる枝葉の調達フローではなく、川上から川下までの連携が成功のカギです。
サプライヤーも「バイヤーが何を恐れているのか」「規格ズレがビジネスにどんな影響を及ぼすのか」といった視点で価値提案を行うことで、信頼関係が深まり双方の競争力アップにつながります。
まとめ:CEマーキングは“面倒な書類作業”ではなく、“成長のチャンス”
CEマーキング取得を「面倒な規制対応」と捉える日本企業は未だ少なくありません。
ですが、そのプロセスはグローバルな品質競争力を高め、市場を大きく広げる絶好の機会でもあります。
伝統的なアナログ業務や属人的ノウハウに頼る体質を打破し、デジタル活用・基準理解・現場主義の三位一体でCE取得に挑むことが、今後の日本ものづくり世界進出に不可欠です。
バイヤー・サプライヤー・現場の皆様が、本記事の知見を活かし、一歩先の“世界標準ものづくり”にチャレンジしていただけることを願っています。
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