- お役立ち記事
- 製造業が直面する越境EC取引の課題と解決策
製造業が直面する越境EC取引の課題と解決策

目次
はじめに:製造業が越境ECに挑む時代背景
近年、グローバル化の波は製造業にも確実に押し寄せています。
その象徴が「越境EC」、すなわち国境を越えた電子商取引です。
これまで日本の製造業は、卸売業者や商社、代理店経由で海外市場に製品を広げてきました。
しかし、IoTやクラウド基盤の普及、国際物流の進化、そしてコロナ禍を経た購買行動の変化により、メーカー自らが海外ユーザーと直接やりとりする時代が到来しました。
こうした流れを捉えずして、成長のブレーキどころか事業の存続すら危うい——そんな認識が現場にも浸透しつつあります。
しかし一方で、製造業が越境ECに踏み切るには山積する「壁」があります。
特に、昭和から続くアナログ文化や独特の商習慣が根強く残るBtoBの世界では、単なるデジタル化だけでは済まない「深層課題」が存在しています。
この記事では、製造の現場目線から、越境EC取引におけるリアルな課題とその解決策を、現役バイヤーならではの悩みに寄り添いながら、多角的に掘り下げます。
越境ECがもたらす製造現場への具体的な恩恵と痛点
恩恵:市場の拡大・販路の多様化
従来、国内市場の縮小やローカルな価格競争で頭打ちに悩むメーカーも多かったですが、越境ECは新たな販路と顧客層との出会いを生み出します。
特に、中国やASEAN、中東、欧米といった成長市場にタイムリーにアクセスできることは、経営戦略上も魅力的な選択肢です。
また、EC化によって小ロットや多品種少量生産、特注カスタマイズ受注への対応もしやすくなり、「量から質」への転換を目指す現場にも好材料となっています。
痛点:規格・品質・納期の壁
一方で、越境ECに取り組むとすぐさま直面するのが、国ごとの規格(例えばRoHS、CE、UL等)の違いや、文化・言語・商習慣のギャップです。
さらに、メーカー側と現地顧客の間で「品質の捉え方」に食い違いが生じやすく、クレーム増加やブランド毀損リスクも無視できません。
納期トラブルもつきものです。
グローバルサプライチェーンは一度問題が起きると雪だるま式に混乱し、特に中小の現場は人的リソースが薄いため対応力に限界があります。
「そもそも欧州とアジアでは納期遅延に対する感覚が違う」など、経験則だけでは読めない摩擦が起こります。
現場目線で捉える越境ECの具体的な課題
1. 社内体制とデジタルリテラシーの遅れ
製造業、とくに中小企業や歴史のある工場は、アナログからデジタルへの移行が急務です。
受発注や在庫管理、見積もり・納期調整といった重要プロセスがいまだにFAXや電話、手書き台帳で管理されている現場も珍しくありません。
こうした体制だと、越境EC化に伴い発生する多国籍・多通貨・多言語の処理に即座に対応できません。
現場担当者のデジタルリテラシー、ひいてはバイヤーや購買チームのITスキルの底上げは、待ったなしです。
2. 国際決済・税務・法規制対応の煩雑さ
現地通貨での支払いや国際物流費、VAT(付加価値税)対応など、経理・法務も煩雑になります。
これまで海外取引は商社任せだったため、自前で“国際会計”や“法規制チェック”を行うリソースがそもそも不足しています。
万一、輸出した製品がCE規格に抵触して賠償リスクが生じた場合の備え、保険、紛争処理も重要です。
ここを軽視すると、信頼失墜の一途をたどるでしょう。
3. マーケティング・ブランディングの難しさ
越境ECでは見込み顧客へアプローチするために、現地語でウェブサイトや商品紹介、カタログ制作が不可欠です。
さらにSEO対策、SNS運用、現地展示会の活用など、総合的なデジタルマーケティング力が求められます。
「日本製なら売れる」という時代は終わりました。
現地バイヤーの信頼獲得には、顔と名前の見えるサポート体制も評価されます。
機械や部材に何を期待するのか、その国の産業トレンドや競合事情も押さえながら、トータルにブランドを作る意識が必要です。
ラテラルシンキングから導く解決策の新地平
1. パートナーシップ型DX推進を”現場で”始める
デジタル化は大きな投資が必要、と思われがちですが、すべてを内製化する必要はありません。
むしろITベンダーや専門コンサルと現場が一体となった“伴走型DX”がカギです。
例えば、既存の生産管理システムと連動する海外EC対応クラウド(在庫・受発注プラットフォーム)を活用し、少人数チームでもミスなく多言語案件を回せるワークフローを構築します。
これによりバイヤーは現地情報をリアルタイムで拾い上げ、成功事例を横展開しやすくなります。
2. 国際法務・物流ネットワークの「共同体化」
小規模メーカーやサプライヤーは、単独で国際物流や関税・法規制対応を完璧に運用するのは困難です。
そこで、同業者団体や地域商工会、業界プラットフォームが「共同物流」「共同通関」「法規制の情報発信」を提供する形態が有効です。
中立的な第三者機関・協業体での“ハブ機能”によって、多様な国際取引を事故事例や規制変更も含めてシェアできれば、現場のリスクは大きく軽減されます。
3. ニッチ&ハイパーオーダーメイドで現地化を突破
大手が参入しづらいニッチ商材や、高度な技術・特注対応可能な高付加価値品では、日本の中堅・中小現場にも勝機があります。
現地エンジニアやユーザーとオンライン会議・チャットツールで密にやりとりし、カスタマイズや現地フィードバックを即時反映できる仕組みを磨くことで、競争力が高まります。
このような“小回り型現地化”は、大手には難しい柔軟対応となり、信頼を得やすいポイントです。
4. デジタル&アナログ融合の「現場コミュニケーション」
越境EC時代でも、人と人との信頼関係は依然として重要です。
オンラインツールを駆使しつつ、「現地展示会への出展」「現地パートナーとの協業」「サンプル提供・現地メディア発信」など、従来のアナログ手法も巧みに組み込みましょう。
実際、生産現場の写真や動画、Q&A、メンテナンスや現地教育サポート動画の展開は、欧米よりも新興国市場でより高く評価されます。
“アナログの良さ”と“デジタルのスピード”を両立させるラテラルな発想こそ、競争を勝ち抜く力になります。
現場で今から実践できるアクションリスト
1. 越境EC向けの多言語商品カタログ、FAQの整備
2. 海外仕様(認証・規格)の早期情報収集と仕様書管理体制の構築
3. 社内バイヤー・購買担当のDXスキル研修の導入
4. 海外ユーザーとのサンプル取引簡易化プロセス(小口配送、決済ツールの導入)
5. 国内外の展示会・商談会へ担当者を派遣し、生のニーズを集積
6. 地域産業クラスターや商工会が提供する「共同海外進出支援」の活用
まとめ:粘り強く、しなやかに現場は変われる
製造業にとって「越境EC」は、単なるオンライン販路の拡充ではなく、現場そのものの再構築を意味します。
多くの課題が一気に押し寄せ、一朝一夕にすべてを解決することはできません。
しかし、現場と経営・ITが一体になり、協力しながら小さく始めて成果を重ねることで、昭和的なアナログ思考から未来志向への転換は実現できます。
バイヤーとしての視点、サプライヤー・工場現場としての知恵、それぞれの持ち味を活かしながら、粘り強く変革を進めていきましょう。
今後も現場からのリアルな声を共有し、製造業界全体の持続的な発展につなげていきます。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)