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製造業における受発注システム導入の課題と解決方法

目次
はじめに:なぜ今、受発注システムの導入が求められているのか
日本の製造業は、長年にわたり高度成長期の成功体験とともに発展してきました。
現場力や熟練の技能者による“暗黙知”と、現物を中心としたコミュニケーションが強みです。
しかし、グローバル化・人手不足・コロナ禍によるテレワーク化・供給網の複雑化など、現代の事業環境は従来のアナログ的な手法だけでは対応困難な状況に変化しています。
その中で、受発注管理のIT化は待った無しのテーマとなっています。
特に調達担当者やバイヤー、そしてサプライヤーの双方にとって、迅速で正確なやり取りや業務の属人化脱却、データの可視化が不可欠となっています。
今回は、現場視点で明らかとなる受発注システム導入の課題、そしてその具体的な解決方法について、実践的事例とともに解説します。
昭和型アナログ管理の問題点
メール・FAX・紙伝票…非効率な日常業務
「うちはまだFAXが現役」「得意先ごとに注文書のフォーマットがバラバラ」「問い合わせの度に電話する」――
こうした声は、今なお多くの現場で耳にします。
この背景には、
– 旧来の慣習が強く根付いている
– 現場担当者の高齢化
– デジタルリテラシーへの抵抗感
といった事情があります。
その結果、発注書の転記ミスや、連絡の行き違い、納期や仕様の確認漏れによるトラブルが頻発しています。
各種帳票のファイリングや伝票の保管・検索にも工数がかかり、働き方改革や省人化の流れに逆行しているのです。
バイヤー・サプライヤー双方の非効率
アナログ管理のしわ寄せは、バイヤーとサプライヤーの双方に及びます。
バイヤー側では、
・誰がどのサプライヤーに発注したか”見える化”されていない
・進捗管理やトラブル対応が個人任せ
・支払や支出の管理もバラバラ
一方、サプライヤー側も、
・注文の受付・確認業務に工数がかかる
・変更や急な要望への即応性が落ちる
・納品/検収/請求と各工程ごとにシステムや書類が異なる
こうした構造的な問題が、”ムダ・ムラ・ムリ”を生み出しているのです。
デジタル化=システム導入だけでは解決しない「3つの壁」
多くの現場で「そろそろシステムを入れなければ」という声は高まっています。
しかし、”導入したが定着しない” “余計に現場が混乱した”という失敗も珍しくありません。
現場経験から明らかになった、デジタル化の3つの壁を整理します。
1. 現場業務との乖離
カタログ的に導入したシステムが現場の実態に合っていない、というケースが多いです。
発注・納品・検収のフローが現場ごとに異なり、例外処理が多発します。
従来の帳票や取引の習慣をシステムへ適切に落とし込めず、「手間が増えただけ」の印象が出てしまいます。
2. 属人的な知識・ノウハウの壁
長年同じ担当者が仕切ることで暗黙知が蓄積し、マニュアル化されていない場合が少なくありません。
業務プロセスの標準化が不十分なままIT化しようとすると、トラブル時の対応や社内教育が追い付きません。
3. コストとROI(投資対効果)への懸念
中堅・中小メーカーでは、導入費用や維持費が大きなハードルになります。
一方で、「本当にコスト回収できるのか」「投資効果が見えにくい」とシステム導入が後回しにされがちです。
受発注システム導入の具体的な解決方法
これらの課題を踏まえ、現場目線で実践的な導入アプローチと解決策を整理します。
現場起点での業務プロセス見直し
まず重要なのは、”今のやり方”の棚卸しから始めることです。
業務フローを部門横断的に洗い出し、どこに属人化・非効率・ミスの発生源があるかを可視化しましょう。
例えば受注から納品・検収・請求までの流れにおいて、「どの段階で誰が何をしているか」「その情報の引き継ぎ方法は何か」を明らかにします。
その際、現場担当者/バイヤー/サプライヤー各々の視点から「やりづらさ」「困っていること」をヒアリングし、課題意識を共有しましょう。
スモールスタートと段階的な標準化・自動化
いきなり会社全体で大規模導入するのではなく、一部の業務プロセスや拠点、主要サプライヤーとの間から試験導入し、段階的に広げていく「スモールスタート」がおすすめです。
小規模な“モデル地区”での運用により、
– 定着しやすいルールと運用マニュアルの整備
– 現場からの要望・課題を吸い上げて現実的な修正
– 成果の“見える化”で社内説得力向上
といった好循環を作りやすくなります。
また、“全部自動化”を目指さずに、まずは定型業務(例:確認メールの自動送信/進捗一覧の自動作成/帳票の電子化)などから着手するのもポイントです。
期待されるROI(投資対効果)を”数値で見える化”
経営層の理解と導入決定を得るためには、“どれぐらい業務効率化できるか” “コスト削減できるか”を数値で試算することが大切です。
例えば
– 受発注業務にかかる人件費何%削減
– 備品・伝票・通信費など間接コストの圧縮額
– ミス削減によるクレーム対応削減
– サプライヤーへの発注リードタイム短縮
など、部門全体で”目標KPI”を設定し、事前→事後で効果測定を行いましょう。
現場・サプライヤーへの“巻き込み”とレスキュー体制
新しい仕組みを現場とサプライヤーに定着させるには、「導入して終わり」ではなく、きめ細かなフォローが不可欠です。
具体的には、
– 社内外説明会やトレーニングの実施
– 操作マニュアルやFAQの整備
– トラブル時のレスキュー窓口設置
– 初期運用期におけるチームバディ制(ベテランと新人のペア)
こうしたサポートにより、現場の“不安や反発”を軽減できます。
バイヤー・サプライヤー相互の「見える化」と関係強化の重要性
データ基盤を共通化することで、バイヤーとサプライヤー双方の”見える化“が格段に進みます。
– 発注内容、納期、進捗状況がリアルタイムで確認できる
– 伝票や各種帳票もシステム内で一元管理
– 変更・トラブル発生時の履歴管理で透明性が向上
これにより「思い違い」「連絡モレ」といったトラブルが激減し、お互いの手間とコストが削減されます。
さらにデータの蓄積・分析が進むと、発注傾向や納期遵守率、不良・クレーム発生率などの「取引実績」が可視化され、サプライヤー選定や長期的なパートナーシップ強化につながります。
現場発!新しい受発注業務の地平線
このように受発注システム導入は、単なる「効率化」「ペーパーレス」にとどまりません。
現場とサプライヤーの実態や課題と向き合い、
– 情報基盤の共有による信頼性向上
– 属人化からチーム力への転換
– データ活用による継続的な改善
といった“新しいものづくり”の基盤作りと言えます。
かつての昭和型“職人芸”から脱し、「人とデジタルの共存する現場」へ舵を切る時が来ました。
現場の知恵とテクノロジーが融合することで、製造業の新しい地平線を皆さんと一緒に切り拓いていきたいと思います。
まとめ:これからのバイヤー・サプライヤーに求められる視点
受発注システムの導入はゴールではなく、変革のスタートです。
大事なのは、現場の一人ひとりが“より良い形”を一緒に模索し、日々改善を積み重ね続ける姿勢です。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤーの動向を知りたい方、そして現場の全ての仲間が「自分ごと」として捉え、オープンな対話や現場起点の工夫を継続していく。
その積み重ねが、これからの製造業の競争力そのものになるはずです。
皆さんの現場にとって、この記事が新しい気づきと一歩踏み出すための参考となれば幸いです。
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