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工場での“段取り替え”とは?生産性を上げる作業準備の工夫

目次
工場での“段取り替え”とは?
工場の現場で「段取り替え」という言葉は日常的に使われています。
この段取り替えとは、一つの製品の生産作業を終え、次の製品へ切り替える際に必要となる一連の作業や調整のことを指します。
製造現場のラインや設備、治具のセッティング、材料の入れ替え、工具や金型の交換、設定の変更など、多岐にわたる作業を総称しています。
生産品目が多品種少量化している昨今、段取り替えの効率化は生産性や収益性に直結する重要なテーマです。
特に成熟した製造業では、昔ながらのやり方が現場文化として根強く残っており、段取り替えは「しょうがない手待ち時間」と見なされることもあります。
しかし、グローバル競争が激化する中、「段取り時間をいかに短縮できるか」が製造現場の格付けを左右する時代となりました。
段取り替えの本質理解と現場改善は、今もなお現役バイヤーや工場管理者が必ず押さえるべき重要なスキルと言えます。
なぜ段取り替えが生産性向上に重要なのか
段取り替えの現実的な課題
段取り替え作業は、実質的にモノを作っている“加工・組立”時間以外の、いわゆるロス時間となります。
この時間が長ければ長いほど稼働率が落ち、単位時間あたりの生産量もダウンします。
また、段取り替えが複雑だったり属人化している場合、オペレーターの疲弊や品質リスクの増大にも直結します。
例えば、部品の製造ラインで金型替えが毎回30分かかっていたとすると、日に10回段取り替えを行えば5時間ものロスです。
1か月稼働で計算すれば数十時間から100時間超の“隠れムダ”に。
これを半分に縮めるだけで、実質的な生産キャパシティが一気に向上します。
「段取り替え」は価値創出のターニングポイント
段取り替えは、単なる準備作業ではありません。
切り替え作業の質と速さは、生産リードタイムの短縮、在庫削減、QCD(品質・コスト・納期)の最適化につながります。
また、短納期対応や多品種受注が求められる時代においては、バイヤーからサプライヤーへの信頼や評価基準の一つともなります。
工場の現場力を向上させるためには、“何がどれだけ作れるか”だけでなく“いかに素早く柔軟に切り替えられるか”という現場フレキシビリティが問われています。
段取り替え改善は、サプライチェーン全体の競争力を底上げするカギなのです。
段取り替え作業の内容と基本プロセス
具体的な作業工程
段取り替えは、主に以下のような工程で構成されます。
1. 加工済み(直前生産品)の回収・整理
2. 新規生産品用の金型、治具、消耗品の準備
3. 機械・設備の設定変更
4. 材料・部品の入替
5. 初品検査・条件出し
6. 設定確認・調整・微修正
熟練工が対応している現場では1,2,3の工程が“感覚的”に行われがちですが、標準化・マニュアル化が希薄だと段取り替えミスやトラブル発生率も高くなります。
昭和から変わらぬアナログ現場の実情
現場ベテランの“俺の段取り力”頼みの生産現場は今なお存在します。
設備の設計や工具棚の配置が古く、動線も複雑。
段取り替え作業が「憂鬱な重労働」となり、次第に生産現場の若手も敬遠しがちです。
属人化・暗黙知の蓄積に依存し、可視化・標準化が追いついていない状況は、工場の競争力を低下させる“負の遺産”とも言えます。
この状況の改善は、一気に自動化・ロボット化できる一部の工場を除き、地道な現場改善活動に依存するケースがまだまだ多数。
現場目線の「ちいさい改善」「標準化への挑戦」が、昭和体質からの脱却への第一歩となります。
段取り替え短縮のための工夫と実践事例
内段取り・外段取りの分離(SMED理論)
有名な段取り改善手法の一つにSMED(Single Minute Exchange of Die:一桁分台金型交換)理論があります。
これは段取り作業を「機械停止中しかできない作業(内段取り)」と、「機械が動いていてもできる作業(外段取り)」に分解し、なるべく外段取り化を進めることで全体時間を短縮する考え方です。
例えば、金型や工具の準備を前もって行っておき、現場へ運搬→設置だけを内段取りとすることで、交換作業自体は数分で終えられるようになります。
従来30分かかっていた金型交換を5分に短縮できれば、全体の生産性は飛躍的に向上します。
治具・工具の5Sとレイアウト最適化
段取り替え時間のロスの多くは「必要なものが見当たらない」「持ち場が遠い」「手順が煩雑」といった現場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)不足から発生します。
効果的な5S活動や、交換工具・治具の管理デジタル化、ラインレイアウトの最適化は地味ですが強力な武器です。
例えば、交換工具が“探さず取れる”、治具が“ひと目で判別できる”、交換台車が“動線に沿って準備済み”といった状態をつくることで、ベテランだけでなく誰が作業しても同じ品質・スピードを確保できます。
デジタル技術の活用
近年ではIoTや電子指示書、スマートグラスを使った手順ガイドなど、アナログな段取り替え作業をDX化する動きが活発です。
動画による手順書やトラブル共有、作業分析によるボトルネック把握・標準化も有効施策です。
ただし、現場のリテラシーや、簡単に“紙”へ逆戻りする昭和体質もまだまだ根強いため、デジタル導入と並行して現場の抵抗感をどう和らげるかが、成功のカギとなります。
多能工化とクロスファンクショナル教育
属人化を防ぎ、段取り替えのダウンタイムを最小化するには、“誰が行っても同じ結果が出せる”現場力が必要です。
多能工教育やジョブローテーションを積極的に取り入れ、段取り替え作業への“気兼ね”や“バイアス”の壁を低減させることが重要です。
また、改善活動そのものを従業員同士で自主的に行う風土が根付けば、長期的観点での現場力向上も期待できます。
バイヤー・サプライヤー双方が知るべき“段取り替え”の本質
バイヤーは何を見ているか
バイヤー(購買担当)がサプライヤーを評価する際、「この工場の段取り替えはどれくらいコントロールされているか」を厳しく見ています。
納期遅れの多くは段取り替えの失敗(計画未達・想定外トラブル)から始まります。
多品種対応や急な設計変更、緊急オーダーにも柔軟に対応できるサプライヤーは、段取り替えの仕組み化・標準化に長けています。
また、「外段取り化」や「改善活動の継続度合」でコスト構造や現場力も推察できます。
「段取り替え=見えないコスト」として、実態把握なしに価格交渉・取引継続を判断できない時代です。
サプライヤーが押さえるべき視点
サプライヤーとしては、段取り替え短縮の取組みを“見える化”し、バイヤーへ積極的に情報発信することが信頼構築の近道です。
「こんな改善活動で月間30時間の段取り替え削減を実現」「短納期対応率が向上」など、具体的な数値やプロジェクトをアピールすることで、バイヤー側の理解と引き合いが増えます。
さらに、現場主導の改善活動(QCサークル/小集団活動)の成果を共有したり、現場見学会を開催するなど、「現場力」に自信を持って逆提案できるサプライヤーは、今後ますます選ばれる存在になるはずです。
昭和のアナログ現場から“段取り替え力”で抜け出そう
段取り替えというと、地味で泥臭いイメージが根付いている現場も多いです。
しかし、段取り替え時間の短縮は、言わば「生産現場の遊休資産」にメスを入れる、極めて戦略的な取り組みです。
最新鋭の機械設備やAI導入だけでなく、地味だが本質的な段取り替え改善こそが、現場改革の第一歩となります。
現場目線で考え、誰もが理解・参加できる「標準化」「見える化」「デジタル化」に一歩踏み出す。
現場の声や伝統から学びつつも、時代の変化をラテラルに捉え直す姿勢が、バイヤー・サプライヤー・現場従事者すべてに求められています。
これからの製造業は、“段取り替え力”こそが未来の工場競争力を左右します。
現場から変革の種を蒔き、一緒に“新しい地平線”を切り拓いていきましょう。
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