- お役立ち記事
- 上司の気分で変わる指示が現場の混乱とハラスメントを招く問題
上司の気分で変わる指示が現場の混乱とハラスメントを招く問題

目次
はじめに:上司の「気分」で変わる指示がもたらす現場の混乱
製造業の現場では、上司の指示が作業の効率や品質、さらには従業員の士気にまで大きな影響を及ぼします。
しかし、上司の指示が「その日の気分」で変わる、あるいは曖昧な内容で伝達されると、現場は一気に混乱状態となり、深刻なハラスメントにも発展する危険があります。
特に昭和から続くアナログ体質の業界では、経験や勘に頼った指示系統がまだ根強く残っています。
本記事では、二十年以上現場で勤め、管理職も経験した筆者が、上司の気分による指示変更が現場へ及ぼす悪影響と、それを解消するための具体策、さらに改善・発展へ向けた実践的ヒントを深掘りしてご紹介します。
なぜ指示が気分で変わるのか?アナログ体質が生む弊害
昭和的マネジメントの残滓
日本の製造業では、長らく「上司は絶対」「長いものに巻かれろ」といった昭和型の企業風土が続いてきました。
その風土の中では、上司の一存で指示が度々変更されるのは当たり前。
「上司の顔色を見て動く」のが美徳とされてきた側面もあります。
しかし、VUCAの時代と言われる現代、ものづくりの現場は国内外の競争にさらされ、従来型の価値観では立ち行かなくなりつつあります。
依然として、「上司の機嫌」や「その場のノリ」で判断が左右される現場には、世代交代の波も及び始めています。
現場の声が届かない仕組み
もう一つ大きな問題は、「現場の声」が届かない階層型の組織構造です。
現場リーダーやオペレーターの意見が十分にくみ上げられず、上司の独断専行となるケースが多々あります。
その結果、判断基準が曖昧になり、「今日はAと言われたのに明日はBになる」といった混乱が恒常化しやすくなります。
気分で変わる指示が現場や従業員にもたらす具体的な弊害
品質・効率の悪化と「なぜなぜ」の空洞化
指示が気分で変わる現場では、製造条件や手順が統一されず、品質のバラつきが起こりやすくなります。
計画的な生産管理が不可能になり、原材料や完成品のロスが増大するリスクも出てきます。
品質トラブルが発生しても、原因究明の「なぜなぜ」活動が形骸化し、「何が正しいのか分からない」状態に陥ります。
現場スタッフのモチベーション低下と心理的ハラスメント
今日は「絶対にA手順でやれ」と言われたのに、次の日には「なぜB手順でやらなかったんだ!」と怒鳴られる――。
こういった理不尽な経験が続くと、現場スタッフのやる気は急速に下がります。
また、理不尽な指示変更はパワーハラスメントに該当する場合もあり、精神的な負担が蓄積することで離職者が増える原因にもなります。
「怒られないように表面的に合わせる」風土になれば、現場からチャレンジ精神や改善意欲が消えてしまいます。
組織の信頼性崩壊と顧客対応の乱れ
現場の混乱は、最終的に組織全体の信頼性低下につながります。
正しい情報が現場からフィードバックされなくなり、経営層も正確な判断を下せません。
現場のゴタゴタが顧客対応にまで飛び火し、クレームや納期遅延といったトラブルが発生することもあります。
何が「指示の安定化」を妨げているのか ─ 現場目線での根本原因
明文化されていない「暗黙知」への過信
日本の工場現場では、熟練者のノウハウを「見て覚えろ」「感じて覚えろ」と暗黙知で伝承する文化が根強く存在します。
これに依存していると、上司による属人的な判断がますます強化され、指示がブレやすくなります。
また、製造業特有の「現場合わせ」や「その場しのぎ」の風潮も根強く、正しい手順や改善策のマニュアル化が進みません。
コミュニケーションロスと現場間の壁
部門や階層をまたぐ情報連携がうまくできていないと、「上司→現場リーダー→現場メンバー」の伝言ゲームが発生し、本来の意図が歪んで伝わります。
特に、紙や口頭、ホワイトボードに頼ったアナログな情報共有方法では、誤解や伝達ミスが生じやすくなります。
「気質や性格」に依存した管理スタイル
「経験豊富なベテランこそが優れた上司」という固定観念が根強いため、管理職の選抜が本人のマネジメントスキルやリーダーシップに基づいて行われない場合が少なくありません。
その結果、部下への思いやりやコミュニケーション能力が十分でないリーダーが「気分」で判断を下しやすい土壌が生まれてしまいます。
現場の混乱・ハラスメントを防ぐための実践的アプローチ
業務標準(SOP)整備と「見える化」
最も効果が高いのは、工程ごとの標準作業手順(SOP:Standard Operating Procedure)を現場ごとに細かく整備することです。
ただし、「作っただけ」「貼っただけ」になっては意味がありません。
現場スタッフと共にSOPの有効性を逐次チェックし、「これが現場のベストプラクティスだ」と皆で納得できる内容へアップデートしていくことが重要です。
手順や指示の「見える化」も必須です。
例えば生産計画や作業指示をリアルタイムでモニター表示する、進捗状況を誰でも把握できるようにするなど、ITやIoT技術も活用しつつ、現場の「何を・誰が・いつ・どうやるか」を明確にしましょう。
現場・オペレーターの「声を上げやすい」仕組みづくり
指示のブレが発生した際には、「なぜ変わったのか」「この指示は適切か」を現場目線で確認できる“ダブルチェック”のルールを作ります。
「納得できない指示には、理由を上司に質問できる」「不明点は必ず一度止めて確認する」という風土が醸成されることで、現場での混乱や不安が解消されていきます。
また、日次ミーティングや提案箱などを活用することで、下から上へのフィードバック経路も積極的につくりましょう。
ハラスメント防止の人間関係マネジメント
管理職層に対するハラスメント教育は、今や必須です。
「怒鳴る」「怖がらせて従わせる」「感情的に命令する」といった旧来的マネジメントから脱却し、心理的安全性を確保できるリーダー像を再定義する必要があります。
また、360度評価やコンプライアンスアンケートを活用し、「気づかぬうちに指示がハラスメントになっていないか」を定期的に検証しましょう。
デジタル時代の「指示統一化」成功事例に学ぶ
IoTやERPシステムの活用
近年、多くの製造業がIoTやERPといったデジタルツールを導入しています。
工程ごとのデータをリアルタイムで見える化し、「誰が・どこで・何を・どうやって作るか」を瞬時に共有することで、上司の個人的な判断が介入できる余地を意図的になくしています。
こういった現場では、データに基づいた論理的な指示と業務遂行が徹底され、属人的な混乱を見事に排除できています。
現場リーダーの意識改革と研修
ある大手自動車部品メーカーでは、現場リーダーに「この指示は現場の実情と合っているか」を加味して現実的な提案ができる研修を導入しました。
「上司の命令=絶対」ではなく、「最前線の知恵も交えた合理的な判断」を推進したことで、スタッフの定着率、品質、効率が大きく向上した実績があります。
サプライヤーやバイヤー目線から見た「指示ブレ」のマイナス面
調達・購買の現場では、「上司の指示が毎回違う」取引先ほど信用を失います。
見積もりや納期回答も二転三転しやすく、契約のトラブルにつながりやすいからです。
発注側・受注側、いずれのポジションでも「誰に頼んでも同じ品質・サービスが得られる」統一感が強い会社ほど、顧客満足度が高まります。
逆に、「担当者が変わるたびやることが変わる会社」は、やがて信頼の輪から外れてしまいます。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場で仕事をする方にとっても、こうした指示統一の重要性を認識し、社内と社外での連絡・調整ルールを明確にしていく視点が不可欠です。
結論:現場発の変革で「論理的な指示体系」の時代へ
日本の製造業は、これまで現場力と謙虚さを武器に発展してきました。
しかし、「上司の気分」で現場が右往左往していたのでは、この強みが逆に弱点に転化しかねません。
今こそリーダーが変わらなければなりません。
現場の知恵を集約し、生産・品質・調達のすべてで「誰がやっても同じ成果を出せる、論理的で納得性の高い指示体系」を作り上げること。
これが最強のモノづくり、そして信頼される組織への道です。
デジタルの力、現場の声、人間関係マネジメント――これらをバランスよく組み合わせて、これからのグローバル競争にも負けない現場作りを共に目指しましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)