投稿日:2024年8月4日

オーステナイト系ステンレス鋼の特性とその製造業での応用

オーステナイト系ステンレス鋼の特性

オーステナイト系ステンレス鋼とは

オーステナイト系ステンレス鋼は、クロムとニッケルを主成分とするステンレス鋼の一種で、耐食性と強度が非常に高い特性を持つ材料です。
ステンレス鋼の中でも最も広く使用されており、特にSUS304とSUS316が代表的な種類です。
オーステナイト系ステンレス鋼は、その組織が完全にオーステナイト構造を持つため、室温でも磁性を帯びない特性を持っています。

耐食性と耐酸性

オーステナイト系ステンレス鋼の主な特性の一つは、優れた耐食性です。
クロムの含有量が18%以上であるため、表面に形成される酸化被膜が自己修復し、腐食を防ぐ働きがあります。
さらに、SUS316の場合、モリブデンを含むことで塩化物に対する耐性が強化され、海水や化学薬品の環境でも安定しています。

機械的性質・加工性の高さ

オーステナイト系ステンレス鋼は、高い延性と強度を持ち、加工性に優れている点も特徴です。
冷間加工や熱間加工が容易であり、板金、プレス加工、溶接など多岐に渡る製造プロセスで利用できます。
さらに、加工硬化性も高く、硬化処理や時効処理を行うことでさらに強度を向上させることが可能です。

高温・低温特性

オーステナイト系ステンレス鋼は高温環境でも安定した性能を発揮し、耐酸化性にも優れています。
800〜900℃の高温域でも酸化皮膜が形成され、酸化を抑えることができます。
また、低温特性も優れており、液体窒素などの超低温環境でも靭性を保つことができるため、極低温用の装置や容器にも広く使用されています。

非磁性材料

オーステナイト系ステンレス鋼はその特性として磁性を帯びないため、磁気干渉が問題となる用途にも適しています。
医療機器や航空宇宙産業など、磁性が問題となる環境でも広く利用されています。

オーステナイト系ステンレス鋼の製造業での応用

食品・医療機器分野

オーステナイト系ステンレス鋼はその高い耐食性と衛生性から、食品加工機器や医療機器の分野で広く使用されています。
食品加工用の機器や容器は、酸やアルカリに触れる機会が多く衛生面が極めて重要です。
そのため、腐食に強く簡単に清掃できるオーステナイト系ステンレス鋼は最適な材料です。
また、医療機器は殺菌や高温消毒が頻繁に行われるため、耐熱性と非磁性という特性も重要な要素となります。

化学工業

化学工業分野では、オーステナイト系ステンレス鋼の耐酸性・耐塩害性が特に重視されます。
化学プラント設備やパイプライン、タンクなどにおいて、様々な化学薬品に対する耐食性を持つ材料が必須です。
SUS316はモリブデンを含むことで、さらに耐塩害性が向上しており、特に塩化物系の腐食環境に適しています。

航空宇宙・防衛産業

航空宇宙産業や防衛産業では、高温特性や非磁性、耐食性が求められる材料としてオーステナイト系ステンレス鋼が重用されます。
エンジン部品や排気系のコンポーネント、燃料タンクなど、高温にさらされる環境でも優れた性能を発揮します。
また、非磁性であるため、センサーや精密機器の周囲でも使用することができ、安全性が求められる分野での適用も広がっています。

建築・土木

建築や土木分野でも、オーステナイト系ステンレス鋼の優れた耐食性が評価され、耐久性の高い建材として利用されています。
特に海岸地域や工業地帯では、塩害や大気汚染による腐食リスクが高いため、耐候性に優れたステンレス鋼が採用されています。
例えば、橋梁やトンネルの補強材、外壁の装飾パネルなどで使用されています。

最新技術動向

高性能オーステナイト系ステンレス鋼の開発

近年、オーステナイト系ステンレス鋼の性能をさらに向上させるための研究が盛んに行われています。
例えば、耐候性や耐酸性を高めた新たな合金や、機械的性質を向上させる加工技術の開発が進んでいます。
二次電池用の箔やリチウムイオン電池の材料としても新しい応用が期待されています。

表面処理技術の進化

オーステナイト系ステンレス鋼の表面処理技術も進化しています。
特に、酸洗いや酸化皮膜処理、PVDコーティングなどの技術が進展し、耐食性や美観をさらに向上させることが可能です。
これにより、特殊な環境下でも長期間安定した性能を発揮できるようになっています。

持続可能な製造プロセス

環境への配慮が求められる現代の製造業において、オーステナイト系ステンレス鋼の製造プロセスも持続可能な方向へと進化しています。
リサイクル材の利用や省エネルギー技術の導入が進んでおり、環境負荷を低減しつつ高性能な材料を生産する取り組みが進行中です。

スマート製造とIoTの導入

スマート製造やIoT技術の導入により、オーステナイト系ステンレス鋼の生産管理や品質管理が一層効率化されています。
リアルタイムでの監視やデータ解析により、製造プロセスの最適化が図られ、トレーサビリティも向上しています。
これにより、より高品質な製品を安定して供給することが可能となっています。

まとめ

オーステナイト系ステンレス鋼は、その優れた耐食性、高強度、加工性により、非常に幅広い分野で利用されています。
食品や医療機器、化学工業、航空宇宙、防衛産業、建築・土木など、さまざまな応用範囲があります。
最新技術の進展により、性能がさらに向上し、持続可能な製造プロセスやスマート製造の導入も進んでいます。
これからもオーステナイト系ステンレス鋼は、様々な分野で活躍し続けることでしょう。

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