投稿日:2025年7月14日

各種距離計測法特徴TOF距離画像カメラ原理応用課題対策ポイント距離画像処理ソフトウェア実演

はじめに:製造現場で求められる距離計測の重要性

生産現場や調達購買、品質管理のあらゆる場面で、「モノとモノの距離をどれほど正確・高速に測定できるか」は、ものづくりの精度と効率に直結します。

特に近年、工場の自動化や検査工程のDX化が急速に進む中、距離計測技術の高度化は避けて通れないテーマです。

その中核技術のひとつであるTOF(Time of Flight)距離画像カメラは、従来のアナログ計測から一歩進んだ“現場改革”をもたらす有力な手段です。

本記事では、TOF距離画像カメラの原理と各種距離計測方法の特徴、応用事例、現場でおこる課題と対策、そして距離画像処理ソフトウェアの実践的な活用まで、製造の最前線(バイヤー・開発・現場管理者・サプライヤー)で役立つ知見を徹底的に解説します。

距離計測技術の全体像:従来法とTOF方式の違い

まず押さえるべき主要な計測技術

製造現場で代表的な距離計測法には、以下のようなものがあります。

– 三角測量方式(例:レーザー測距センサ)
– ステレオカメラ方式
– 位相差方式
– パルス方式
– TOF(Time of Flight)方式

それぞれに原理・長所・短所があるため、用途・設置環境・精度要求によって選定眼が問われます。

三角測量方式の特徴

レーザースポットを照射し、その反射位置の変位から距離を計算する方法です。

長所は高精度(サブミリ精度)ですが、測定範囲が限定され、対象物の材質や表面状態に左右されやすい点が課題です。

ステレオカメラ方式の特徴

2台のカメラで同時に物体を撮影し、その画像差分から奥行きを算出します。

安価なハードウェアでエリアの距離情報を得られるのがメリットですが、照明環境や表面性状の影響を受けやすく、ソフト処理の演算量も多くなりがちです。

TOF方式(Time of Flight方式)の特徴

パルス状または連続変調した赤外線を照射し、物体表面からの反射光が戻るまでの“飛行時間”を測定して距離を算出します。

原理的に一度に広範囲を3D撮像でき、秒速で全体形状(距離画像)が取得できるのが最大の特色です。

工場のアナログ文化で根強い“職人目視”の限界を打ち破る技術革新として注目されています。

TOF距離画像カメラの仕組みと性能の要点

TOFカメラの原理

TOFカメラは以下の4つの機能部分から構成されます。

1. 赤外線LED/レーザー発光素子
2. 高速シャッター内蔵CMOSイメージセンサ
3. 波形同期・飛行時間演算回路
4. 出力インターフェース(画像or距離データ)

発光素子から一定間隔(パルス/変調波)で照射される近赤外線が、対象物体表面で反射され、各画素ごとに戻ってくるまでの時間差を記録します。

これにより各画素=ポイントごとの距離(深度)を瞬時にマッピングできるため、2次元カメラ+各ピクセルに“Z座標(距離情報)”を重畳した「距離画像」が得られます。

TOFカメラの性能指標

実務で選定時に確認すべき主なスペックは次のとおりです。

– 測定範囲・FOV(Field of View、視野範囲)
– Z軸の分解能・最大測定距離
– 画像解像度(ピクセル数)
– フレームレート(1秒あたり撮像回数)
– 環境光・対象物表面性状の影響度
– 体積/重量/防塵性能(IP規格)
– 通信インターフェース(Ethernet, USB3.0, etc.)

これらを「自社工場のどの工程に、どのグレード・どの規模で導入するか?」に応じて見極めることが成果発揮のカギです。

現場視点でのTOFカメラ応用例:生産・調達・品質での実際

ピッキング/ロボットガイド用途

部品箱、パレット、搬送物等の三次元形状を数cm精度で即時取得できるため、倉庫管理やAGVロボットの自律ナビゲーション用途でTOFカメラは実績をあげはじめています。

障害物検知から、作業用ロボットのピックアップ位置自動認識、安全柵代替など、人手の“目”頼み文化から一歩進める要素技術です。

異物検査・欠品検出

組立ラインにおいて、従来は人が一つ一つ目視していた“異物混入”や“パーツ欠品”検査でも有効です。

距離情報付きの画像処理ソフトで高さ、隙間、凹凸、立体的なカタチの違いが機械的に検出できるため、「見逃し・ばらつき」の削減に強みがあります。

品質検査・変位解析

微小な高さ差や反り具合、表面の凹凸変動など、従来2D画像では判断しきれなかった“Z方向の品質指標”もTOF画像なら可視化可能です。

省人化だけでなく、お客様クレームの未然防止や、データ蓄積による工程改善にも直結します。

TOFカメラ導入現場の「昭和的課題」とその対策

1. 照準環境の最適化と現場設置ノウハウ

工場照明、外光侵入、対象物表面がツヤ有り/黒色/金属など、現場は多様です。

TOFカメラは赤外線光を使うため、導入場所の“光環境”次第でノイズや誤計測が発生します。

サプライヤーとしては必ず実機デモや現場評価(PoC)を実施し、カメラ本体の設置角度や高さ、ブラインドエリア、光吸収物体への対策(外部光フィルタ、拡散シート利用)を徹底的に追求する必要があります。

2. データ量の多さと画像処理ソフト選定

TOFカメラは、数十万~数百万ピクセルの距離データを1秒間に数十~数百フレーム出力します。

「ただ撮れる」だけではDX化の半歩手前です。

距離画像処理ソフトウェア(市販品/自社開発)で「何をどう抽出するか?」を早期から定義し、解析ツールの選定や、現場への作業標準落とし込みが、実効性ある導入の必須条件となります。

3. コストと昭和的習慣の壁

現場には「安定継続して使えるシステム」への信頼性が問われます。

– カメラ本体の価格(ROIの視点)
– 保守体制
– 旧来の目視ルールや帳票文化の刷り合わせ

これらを“現場巻き込み型”で進めつつ、目的を見失わないKPI設計(不良率低減・工数削減・品質向上など)が欠かせません。

距離画像処理ソフトウェアの実践的な活用法

主要な距離画像処理ツールの概要

– 専用SDK(カメラメーカー提供のAPI)
– 汎用3D画像処理ソフト(例:Halcon, OpenCV, ROSパッケージ等)
– データ解析/マシンラーニングプラットフォーム(Python, Matlab, TensorFlow)

撮像した距離画像から、点群変換・周囲物体の自動抽出・高さ計測・立体差分・欠陥検出など、多彩な分析処理が可能です。

PythonやHalconを使えば、現場サイドのエンジニアがカスタマイズして現場工程への「最適解」を自作できる点も今後ますます重要視されています。

実演:部品ピッキング工程の検出フロー例

1. TOFカメラでパレット全体を1秒以内に三次元撮像
2. 距離画像から物体ごとにラベリング(クラスタ抽出)
3. 座標点群から“持ちやすい”方向を算出
4. ピッキング制御ロボットと連携して指令出力
5. 作業ログ(NG/OK画像・パラメータ)を自動蓄積

このような一連の自動化ワークフローは、現場目線では「作業の見える化」「技術蓄積のデジタル化」そのものとなります。

距離画像技術の今後の展望と製造業へのインパクト

TOFカメラをはじめとした距離画像センサーは、今後さらに低コスト化と小型化、高精度化が進みます。

「現場作業の属人性脱却」「工程ばらつきの見える化」「品質判定の高度化」など、製造業の価値創造を根底から支える基盤技術となるでしょう。

調達購買部門・工場長・サプライヤー開発担当者は、、

– “目で見る”から“データで語る”へ発想転換を!
– 「これまでこうやってきたから」から脱却する観点を!

いち早く取り入れることで、他社との差異化・現場力の底上げにつながります。

まとめ:TOF距離画像カメラ活用で現場革新を

各種距離計測法の特徴を正しく理解し、TOF距離画像カメラの原理や性能、応用事例を押さえることは、調達〜生産〜品質すべての段階で武器となります。

昭和的な習慣にとらわれず、現場ならではの視点とテクノロジーを組み合わせることで、“人手・勘と経験”頼みから進化した工場づくりが可能です。

距離画像処理ソフトウェアと組み合わせれば、これまで見えなかった品質のばらつきや無駄の削減、さらなる工程最適化に道が開けます。

ぜひ“現場改革”の一歩として、TOF距離画像技術に目を向けてみてください。製造現場のDXは、今ここから始まっています。

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