投稿日:2025年11月25日

インフラの長寿命化に向けた新しいメンテナンスビジネスを創出するための共創プロセス

はじめに:インフラの長寿命化が求められる背景

社会インフラの老朽化が進む中、日本では橋梁、トンネル、上下水道、電力などのインフラの維持管理が大きな課題となっています。

特に高度成長期に集中的に整備されたインフラは半世紀を過ぎ、老朽化リスクが顕在化しています。
一方、人口減少や地方の過疎化、予算縮減など環境は厳しく、単純な建て替えや刷新だけでは立ち行かなくなっています。

そこで注目されているのが「長寿命化」と「メンテナンスビジネス」です。
持続可能なインフラのために、ライフサイクル全体を視野に入れた新しい維持管理のあり方が問われています。

インフラメンテナンス市場の現状と業界動向

インフラメンテナンス市場は右肩上がりです。
国土交通省の推計では、橋梁・トンネルなどの老朽化対策費は2048年に2.6倍に拡大する見通しです。

こうした状況下、業界では従来の「点検・補修」一辺倒から
「予防保全」「遠隔監視」「データ利活用」といった先進的なアプローチが徐々に浸透してきました。

しかし、現場は未だに昭和時代から続くアナログ文化も根強く残り、デジタルツールや自動化が普及していない会社も少なくありません。
そこに大きな変革の余地と、新しいメンテナンスビジネス創出の可能性が眠っています。

新しいメンテナンスビジネス創出の鍵は「共創プロセス」

従来型からの脱却——縦割り・属人的運用の限界

従来のメンテナンス業務は事業者、自治体、サプライヤー、ゼネコンなど複数企業が縦割りで進めるのが一般的でした。
情報や知見が組織内にとどまり、担当者の経験や勘に頼る属人的な運用が多かったため、効率や品質に課題がありました。

また、調達・購買段階でも「コスト削減とリスク回避最優先」の姿勢が強く、現場ニーズとの乖離やエンジニアリング知見の共有不足が指摘されてきました。

共創プロセスとは何か

「共創」とは、異なる立場や専門性を持つ関係者が協力し、価値を共に創り上げる考え方です。

インフラ長寿命化に向けては、発注者(自治体・インフラ事業者)、バイヤー、サプライヤー、技術ベンダー、メンテナンス現場スタッフが早期から一体となり、次のようなプロセスを構築していくことが有効です。

  • ニーズや課題の明確化(現場・設計・経営層の知見交流)
  • 技術・サービスのシーズ・アイデア出し(技術者と現場が情報交換)
  • プロトタイプ・PoC(概念実証)の共同行
  • 中長期運用を見越した契約・調達スキームの再設計
  • データに基づく効果検証・改善

この「共創」を通じ、単発の発注・受注に終わらない、持続的なメンテナンスエコシステムが誕生します。

現場目線で見た長寿命化共創の具体的アプローチ

1. アナログ現場の実態把握と「見える化」から始める

メンテナンス現場では、紙図面や日報、電話・口頭連絡など、アナログ運用が色濃く残っています。
まずは現状の課題やムダ・ムリ・ムラを丁寧に把握し、デジタルツールで「見える化」することが共創の出発点となります。
例としては、点検・補修データのタブレット入力や、異常検知のセンサ設置、クラウド管理などが挙げられます。

2. 全体最適の発想で業務改革モデルを提案

サプライヤーや協力会社が、現場声をもとに「最小のコストで最大の効果、全体最適となる手順・体制」をデザインすることが重要です。

例えば「夜間に一斉点検」「技能伝承の映像マニュアル化」「ドローンやAIを活用した点検」など、
点検品質・効率・省人化・技能継承を同時に解決する提案を推進します。

3. 調達・購買プロセスから共創を仕掛ける

「見積依頼→発注→納品」だけの従来型プロセスでは、サプライヤー側からの創意工夫を反映しきれません。

バイヤーの立場では、仕様策定段階からサプライヤーや現場と対話し「RFP(要件仕様書)」の質向上に努めましょう。

また、サプライヤーには単なる下請けでなく、提案力・改善力・運用知見の提供も求められます。

相互に「欲しい情報」「困っていること」「現場でしか分からない知恵」などを日常から共有することで、要件のズレや無駄なコスト増を抑えられます。

4. 業界横断で学べる共通プラットフォームの活用

最近では自治体や業界団体が主催する「インフラメンテナンス共創ラボ」「点検IoT研究会」などのワーキンググループが活発化しています。

こうした場に積極的に参加し、自社だけでは得られない成功事例や技術情報、法規対応・助成金情報などの情報を入手し、自社の提案・改善活動に磨きをかけましょう。

昭和から令和へ——アナログ産業に迫るDXの波

現場で感じるDX化の課題

インフラ現場は「壊れた場所を修理する」から「壊さないために予防保全する」へのシフト、「人の目での4S確認」から「センサ+AI活用」への変革が求められています。

しかし、現場にはまだまだ「自分の経験が一番」「新しいソリューションはコスト高」という保守的な空気が根強いのも事実です。
また、現場作業員の高齢化とICTリテラシーのギャップも大きな壁です。

ただし、こうしたギャップこそが「現場と現場外の知見を融合させる共創プロセス」によって解消されていく余地と可能性でもあります。

DX推進で現場が幸せになるポイント

現役工場長や作業リーダーがメンテナンスDXを進めるなら、必ず「現場の手間・負担を減らせる、本当に役に立つか」という観点を持ち続けてください。
また、デジタル人材やIT企業任せにはせず、現場自身がデータやツールを使いこなす工夫を重視しましょう。

たとえば「スマホで簡単に点検報告ができる」「設備故障の予測タイミングがメールで届く」「ベテランのノウハウをAIが学習・継承できる」など、
身近で実用的なレベルから成功事例を積み重ねていくことが、本質的なDXであり、令和時代の製造業に不可欠な視点です。

バイヤー目線・サプライヤー目線で考えるべきこと

バイヤー(調達購買)の立場

発注者(クライアント)の立場では、単純な価格競争だけでなく、
「中長期的な協業・共創のパートナー選び」へと調達方針をアップデートすることが求められます。

・運用・保守フェーズでの改善余地はあるか
・運用データの共有設計はできているか
・現場の意見が反映されたソリューションか
・複数ベンダーと連携した横断的な運用ロードマップになっているか

こうした観点を盛り込むことで「買う」から「共に作る」「共に育てる」にシフトできます。

サプライヤー(協力会社・メーカー)の立場

サプライヤーは「求められたモノを単に作る」のではなく、
「運用・現場の困りごとを一緒に抽出し、技術と発想を組み合わせた提案をする」役割への進化が必要です。

現場ヒアリングや実査を重ね、「こうすると人手が3割減ります」「このデータを使えば新しい付加価値が出せます」と、ロジカルかつ現実的な提案ができれば、バイヤー側からの信頼も厚くなります。

さらには自社だけでなく、他のサプライヤーやベンダーと連携して“共創チーム”を組み、より良い解決策を生み出すことも時代の要請です。

共創を加速する、今後注目の技術・サービス

  • IoTセンサーやAI(異常検知、予知保全、点検ロボット化)
  • クラウド型点検記録・進捗管理プラットフォーム
  • 3Dスキャン・デジタルツインを活用した設備診断
  • リモート点検・遠隔操作システム
  • 技能伝承×動画・ナレッジ共有サービス
  • コンソーシアム型の開発・運用サービス(PPP/PFI活用)

これらのテクノロジーやサービスを核に、バイヤー側とサプライヤー側が立場を超えて共創し、現場起点での変革を提案していくことが、今後のインフラ長寿命化には決定的に重要となります。

まとめ:共創で新しいメンテナンスビジネスの時代を拓く

インフラの長寿命化という難題には、これまでのような縦割り、属人的発想では限界があります。
バイヤー・サプライヤーという役割分担を超え、「現場の知見」「新しい技術」「中長期的な視点」を共創プロセスで融合すれば、日本のインフラメンテナンスは大きく進化します。

まずは現場の小さな課題発見や「見える化」から始め、
業務フローや調達プロセスに現場声とデジタル技術を持ち込みましょう。

そしてサプライヤーも「提案・改善・協業パートナー」へと立場を変え、バイヤーと力を合わせて“価値を共創する新しい時代”を切り拓きましょう。

昭和のアナログ文化が残る今だからこそ、柔軟な発想と現場連携で、未来に誇れる日本のインフラを創っていきましょう。

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