投稿日:2025年7月11日

メンバーを伸ばす指導育成コミュニケーションとモチベーション実践術

はじめに:昭和から令和へ、製造業現場の「人を伸ばすコミュニケーション」とは

いまだにアナログ色の強い昭和の価値観が根強く残る製造業界において、指示命令型のコミュニケーションや、作業重視のマネジメントは決して珍しくありません。
現場主義、根性論、長年の慣習——。
しかし、モノづくりの現場を真に活性化し、メンバー一人ひとりが力を発揮するためには、現代的かつ実践的な「育成コミュニケーション」と「モチベーションの上げ方」に大きな転換が求められています。

長年、工場の現場で人材育成に携わってきた私が、現場で通用する実践例、昭和マインドの刷新、組織風土と個の成長という視点から解説します。

なぜ今、「育成コミュニケーション」が重要なのか

少子高齢化と技能伝承の危機

かつて「背中を見て覚えろ」「体で覚えろ」は当たり前でした。
しかし技術伝承の担い手が減り、働き方や価値観も多様化した令和の現場では、属人的なOJTや精神論では人は育ちません。
知識・技能だけでなく、「自走する人材」をどう育てるか、そのカギがコミュニケーションです。

多様なメンバーと新しい価値観への対応

ダイバーシティが進み、外国人技能実習生や女性、高年齢者まで現場に増加しています。
「同じ価値観の集団」ではなくなった今、年齢や立場、文化の違いを踏まえた指導や動機づけ手法が求められています。

バイヤー・サプライヤー関係でも重要なコミュニケーション

製造業現場は自社内だけでなく、調達・購買部門やサプライヤーとのやりとりも不可欠です。
社内外を問わず、相手の立場や考えを理解し交渉を進める基盤としても、現場目線のコミュニケーション力が競争力の源泉となります。

現場で実践する「育成コミュニケーション」5つのコツ

1. 聞く力——「よく聞く」ことから始めよう

ベテランはつい、全てを教えたがったり、先回りして指示をしがちです。
けれど、まずは相手の考えや疑問・課題を「傾聴」することが育成の第一歩。
口数が少ない現場メンバーこそ、「どう感じている?」「何がわからない?」と問いかけ、じっくり耳を傾ける姿勢が重要です。
これこそが、俗に言う“心理的安全性”を創る土台になります。

2. やってみせる・一緒に考える

「まず俺がやるから見ておけ」だけでは本質的な伝承にはなりません。
やってみせ、やらせてみて、一緒に振り返りを行う——。
「なぜ、どうしてこうするのか?」を対話の中で説明し、考えさせる機会を与えることが、現場の“気づき”と“成長”につながります。

3. 失敗を責めず、次への提案を促す

何度も失敗を繰り返す若手や新入社員に「何やってるんだ!」「ちゃんとやれ!」と檄を飛ばしてしまう方は多いはず。
しかし、失敗を即“叱責”に変えるのではなく、「なぜ間違えたのか一緒に整理しよう」「次はどう工夫する?」と“問題解決型の会話”につなげることで、本人の学習意欲も高まります。

4. 役割と期待を”ちゃんと言語化”する

「俺の気持ちはお前に伝わってるはず」は幻想です。
「君にはこの作業を任せる理由がある。●●なところを信頼しているからだ」「ここを改善したら、もっと良くなる」と、具体的な役割や期待水準を“言語化”して伝えることが、メンバーのセルフイメージを高めます。

5. 小さな成功体験を積ませる

自信を付けるには、いきなり大きな役目よりも、ステップ式のハードル設定が有効です。
「今回はこの工程を5分短縮しよう」「資料作成はここまで任せる」など、目標を細分化し、小さな達成を積み重ねることが、やがて大きな成果と自立心につながります。

現場モチベーションUPの実践術

自分の成長・評価を見える化する

頑張りや改善提案が現場リーダーの“胸先三寸”で評価されるようでは、社員・作業員のやる気は長続きしません。
工場の生産日報や業務改善活動、カイゼン提案、習得スキルの進捗など、「見える形でフィードバックする仕組み」を作りましょう。
社内掲示や月例ミーティングでの表彰・発表も、意外と効果的です。

チーム目標=現場感覚でつくる

上意下達で「数字」だけを割り当てるのではなく、現場の意見や“今の困りごと”をすり合わせた実感値のある目標設定が重要です。
「この工程でミスをゼロにしよう」「今日の不具合をみんなで共有しよう」など、当事者意識を醸成する目標こそ、モチベーションのドライバーになります。

バイヤー的視点を現場にも——「お客様意識」を持とう

購買・調達部門では「自分たちがお客様」「相手がサプライヤー」という関係になりがちです。
しかし、現場メンバーも「下流工程は自分たちのお客様」という意識で製品や工程を見れると、主体性や責任感が数段UPします。
「この資料は誰に何のために渡すのか」「この部品はどこでどう使われるのか」といった目的共有が、現場のパワーを引き出します。

「昭和的価値観」とのギャップを乗り越える現場コミュニケーション

アンタッチャブルな“暗黙知”を言語化する

長年“現場の空気”で伝わっていた不文律——実はムダや無駄遣い、非効率につながっているかもしれません。
「なぜそのやり方なのか」「他に良いやり方はないか」と明るくディスカッションする場作りが、若手や多様な人材の発言チャンスを生みます。
業務マニュアルや手順書整備の際も、「現場のベテランにその理由を言語化してもらう」トレーニングが必須です。

感情のコントロール——怒りを伝達力に転換する

情熱的な昭和の現場指導を「今の若者は受け入れない」と嘆く管理職もいるでしょう。
大切なのは、“怒る”より“伝える”です。
「なぜそんな言動をしてしまったか」を冷静に伝え、「あなたには期待している」とポジティブなメッセージとして送りましょう。

サプライヤーの立場からみる「バイヤー目線コミュニケーション」

現場会話を拾い上げて信頼関係構築

バイヤー(発注側)はコスト削減・納期短縮などのプレッシャーをサプライヤーにかけがちです。
しかし、サプライヤーは日々現場のボトルネックや工程変更に直面しています。
「なぜこの納期が難しいのか」「どんな現場工夫が裏側にあるのか」など、現場担当者の生の声をしっかりヒアリングし、アクションアイテムや問題解決に真剣に向き合うことで、バイヤーの信頼を得やすくなります。

「YES」だけではなく提案を——協力関係の一歩

「全部お任せ、イエスマン」でいるよりも、「この方法だとリードタイムが短縮できる」「御社のニーズを満たすためにこの資材を推薦したい」と主体的に提案することで、「頼れるパートナー」として認識されるようになります。

まとめ:人が伸びれば現場も伸びる。コミュニケーションこそ競争力

製造業の最前線における「育てるコミュニケーション」と「モチベーションづくり」は、昭和的指導から大きく変わりつつあります。
意見を傾聴する力、一緒に考える対話、小さな成功体験による自信付け、そして現場の空気に埋もれた「暗黙知」の見える化は、これからの指導者・リーダーに必須のスキルです。
サプライヤー、バイヤー、すべての製造業パーソンにとって、人が伸びる組織こそ時代を超えて強くなれます。
現場目線の「人を大切にする実践コミュニケーション」、あなたの職場・あなた自身にぜひ取り入れてみてください。

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