投稿日:2025年11月17日

陶磁器カップの露光で高温耐久性を保つための膜厚コントロール法

はじめに

陶磁器カップは、日常生活のみならず、産業用途においても多様な場面で活用されています。
特に、高温環境下での使用には、耐久性・安全性の確保が求められます。
このため、カップ表面への膜処理、特に露光を用いた膜の形成技術が注目されています。
今回は、昭和時代から抜け出せていないアナログな現場で横たわる課題や、最新トレンドも交えながら、
高温耐久性を実現するための膜厚コントロールのポイントについて、現場目線で解説します。

陶磁器カップの高温耐久性と膜形成の基礎知識

高温耐久性とは何か

高温耐久性とは、焼成や加熱など高い温度環境下で繰り返し使用しても劣化しにくい性質を指します。
陶磁器カップはその分野で優れた素材ですが、過酷な使用条件下ではクラックや色変化、表面劣化が発生します。

露光膜とは

陶磁器の表面に施すコーティングには多様な方法がありますが、近年では露光(フォトリソグラフィ)技術が応用範囲を広げています。
露光とは、感光性材料(レジスト)に光を当ててパターンを形成し、その上に機能膜を堆積させる技術です。
この方式は膜厚コントロールが精密にできる点が最大の強みです。

製造現場での課題:昭和から続くアナログ工程の壁

属人化・経験則の限界

陶磁器カップ製作の現場では、今なお「勘」や「経験」に頼る工程が少なくありません。
例えば、釉薬(膜材)の粘度は熟練工が手触りで判断することもありますが、この方式はバラツキの元凶となります。
半世紀以上大手メーカーに携わった身としても、「均質性」「再現性」の獲得は永遠の課題でした。

デジタル化未導入のリスク

露光工程には照射時間や光強度、膜材の化学反応など多くの変数があります。
しかし、アナログな現場ほど「見た目」「保有ノウハウ」で判断しがちです。
その結果、不良率が下がらない、工程能力指数(Cp、Cpk)が上がらないなど、品質管理上の「見えにくいムダ」が潜んでいます。

露光による膜厚コントロールの要点

膜厚コントロールの意義

陶磁器カップの高温耐久性を高め、同時に美観も保つためには、表面膜の厚さを適正に、かつ均一に保たなければなりません。
膜厚が薄すぎると素地露出や耐薬品性の劣化の原因となり、逆に厚すぎてもクラックやピンホール発生リスクが高まります。

フォトリソグラフィでのコントロール事例

ステップ1:下地処理(素地面粗化、脱脂洗浄)
ステップ2:感光性レジスト塗布(ディッピング or スプレー)
ステップ3:露光工程(マスクパターン通り光照射)
ステップ4:現像、焼成(分離膜を除去、必要部分だけ膜生成)
ステップ5:保護膜の焼結
この各プロセスで、レジストの粘度・乾燥温度・露光強度・現像液濃度といったパラメータが、膜厚コントロールに直結します。

データ化・可視化で脱アナログ~現場イノベーションのすすめ~

SPC(統計的工程管理)を味方につける

従来は、サンプルカップを抜き取って膜厚計で測定、結果をホワイトボードやノートに記録するだけ、という現場も多いです。
しかし今求められるのは、IoTセンサーと自動測定装置を組み合わせたリアルタイムモニタリングです。
表面膜の厚みバラツキや異常の検知を迅速にフィードバックできれば、人為的ミスや目視検査の限界も乗り越えられます。

工程シミュレーションでロスを減らす

膜厚の推移をCAE(数値解析)やAI解析でシミュレートすることで、最適なパラメータ設定が事前に把握できます。
また、未然に工程異常の兆候を察知することで、無駄なロット廃棄や顧客クレームを大幅に低減できます。
これは、長年現場にいると「そんな先端技術はうちにはムリ」と思われがちですが、小さな投資でも十分効果が得られるフィールドです。

バイヤー・サプライヤー双方が知るべき視点

バイヤー目線:見極めるポイント

調達時には「コーティング方法の明確さ」「膜厚バラツキの検査データ」「SPC管理の有無」などを必ずチェックすべきです。
特に、高温耐久品の場合は、JISやISO基準をクリアしているか、第三者試験データの有無も重要となります。
現場を深く理解するバイヤーほど、表面処理工程のロット毎の安定性を重視すべきでしょう。

サプライヤーは何を伝えるべきか

サプライヤー側は、膜厚の管理方法や露光工程のパラメータ・実績データを積極的に開示することで信頼感が得られます。
さらに、万一異常が発生した場合の是正対応手順や改善プロセスも、提案型資料として準備するのが望ましい姿勢です。

今後の業界動向と実践的アドバイス

顧客ニーズの多様化

SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、鉛フリー・低温焼成・リサイクル対応などの新技術需要が拡大中です。
こうした動向を踏まえ、露光による精密膜形成で最先端材料にも対応できる体制づくりが鍵となります。

人とデジタルの融合力を高める

露光技術そのものは古くから存在しますが、膜厚コントロールへの応用は今なお進化の余地に満ちています。
重視すべきは、昭和の勘と、令和のデータ活用をいかに融合させるか、という”現場力の革新”です。
新卒バイヤーや若手技術者であっても、積極的にデジタル管理ツールや現場のベテランとの対話を通じて、現場改善に挑戦することで大いなる成長が期待できます。

まとめ

陶磁器カップの高温耐久性向上には、精密な膜厚コントロールが欠かせません。
露光をはじめとする新旧技術の意味を正しく理解し、現場の経験則とデータ管理をバランスよく活用することで、アナログ業界にもイノベーションの波を起こすことができます。
バイヤーやサプライヤー、製造現場のすべての立場で「見える化」された工程管理と、現場の知恵の融合を強く意識し、令和型のモノづくりに挑戦していきましょう。

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