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モノづくり力に付加価値を与えるソフトウェアの共同開発手法と応用

目次
はじめに:なぜ今「モノづくり」と「ソフトウェアの共同開発」が注目されるのか
かつて「ものづくり」とは、決まった工程の中で確実にモノを作りあげることこそが最大の価値とされてきました。
ところが近年、グローバル競争やサステナビリティ要求、IoT・AIなどデジタル技術の台頭、さらには少子高齢化による人手不足など、製造業を取り巻く環境が大きく変化しています。
特に、製品自体が「物」から「サービス」や「体験」へとシフトする中で、日本のお家芸である現場の改善ノウハウや熟練工の知見だけでは、競争優位は維持できなくなっています。
こうした時代背景を受けて、「ソフトウェアを軸とした共創」こそが製造業の新たな付加価値を生み出す切り札として注目されているのです。
この記事では、現場目線のリアルな課題感とともに、ソフトウェアの共同開発によるモノづくり強化の方法論や成功のポイント、バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場で得られる気付きについて深く掘り下げていきます。
「モノづくり×ソフトウェア」共同開発の全体像
伝統的な製造現場の限界とソフトウェア活用の必然性
日本の製造業現場は「現場力」「カイゼン」を武器に世界をリードしてきた時代が長く続きました。
しかし、製造ラインの複雑化や製品バリエーションの急拡大、グローバル分業など、もはや人が“現場感覚”のみで乗り切れる状況ではありません。
たとえば小ロット・多品種生産、納期短縮ニーズ、設備稼働率の向上、製品個体トレーサビリティの要請。
こうした多様な難題をコストを抑えつつ解決するには、現場知とIT(特にソフトウェア)の融合による新たな生産方式の確立が欠かせません。
ソフトウェアの共同開発とは何か? ~定義と特徴~
ここでいう「ソフトウェアの共同開発」とは、単なるシステムの発注・導入ではありません。
現場(製造部門や生産技術、品質管理等)と情報システム部門、あるいは外部システムベンダー・サプライヤーが垣根を超えて、要件定義~設計~運用まで一体となって課題を抽出し、解決・改善していく開発手法を指します。
業界によっては「共創開発」「アジャイル開発」「カスタムメイドMES開発」などと呼ぶケースもありますが、
現場の「ありたい姿」や「使い勝手」を最優先しながら、IT技術者と現場有識者がラボメンバーのように密に連携してシステムを作り込む点が重要なポイントです。
共同開発型の応用事例
製造ラインのIoTデータ収集・可視化システム
熟練作業者のノウハウ継承+デジタルマニュアル作成ツール
AI需要予測を活用した自動発注システム
現場品質チェック履歴のペーパーレス化&AI異常検知システム
設計部・調達部・生産管理部をまたぐ受発注進捗一元管理ソリューション
このような「モノづくりの深い知見」と「ITならではの可視化・自動化・最適化」がうまく融合したケースが、現場競争力の爆発的な底上げを生み出しているのです。
なぜ共同開発なのか? ~従来手法と比べたメリット・デメリット~
従来のシステム導入の課題と限界
従来のシステム導入(外部ベンダー発注・パッケージ製品導入)は「現場とITの距離」が遠く、どうしてもうまくいかない事例が散見されます。
代表例としては以下が挙げられます。
現場ニーズに合わず、結局Excelや紙運用に逆戻り
システム運用負担が増し、逆に生産性ダウン
導入したがカスタマイズ費用が膨れ、ROI悪化
この背景には、「製造現場の本当の困りごと」が正確に伝わらない、または予算やITスキルの壁で妥協の産物になってしまうという根深い課題があります。
共同開発型の強み
一方、共同開発型の最大の利点は「現場課題への解像度の高さ」と「現場発アイデアによる進化」です。
たとえば以下のような価値があります。
現場に即した業務フローや、作業者ごとに異なる運用を考慮した柔軟な仕様設計ができる
現場改善ニーズの変化に素早くアジャイル対応できる
最小工数・コストでのPoC(実証)→実運用拡大というスモールスタートが可能
既存資産(古い設備、Excel台帳等)を活かした段階的DX推進に対応
ただし、開発期間の伸長リスクや、本当に「自分ごと化」して取り組む推進体制づくりなど、運用・マネジメント面での難しさも隠れています。
現場目線から見た共同開発成功のポイント
1. ゼロベースで「あるべき姿」を描く ワークショップ設計
現場とITベンダー双方が「どうあるべきか」をフラットに議論する時間を設けることが重要です。
机上の要件定義に終始せず、現場工程の現物・現場・現実(三現主義)を堅実に確認しながら、理想像→課題の見える化→優先順位づけというステップを踏むことで、失敗の芽を減らします。
2. “使われ続ける”ためのアジャイル・フィードバックループ
月単位・週単位の短サイクルで画面・機能・運用方法を仮リリースし、実際の現場ユーザーからのフィードバックを随時取り入れる。
システム開発後の“やらされ感”を払拭し、「使ってみていい、じゃあさらに〇〇できないか?」と自主的に改善提案が出てくる空気感を作ることが大事です。
3. “紙運用・アナログ資産”との併存、段階的移行の設計
昭和時代から続く印鑑・伝票・手書きノートといった運用に根強い現場では、いきなりフルデジタル化では定着しません。
まずは「紙帳票をスキャン+OCRで自動入力」「紙とデジタルのダブル運用」といったハイブリッド運用を設計し、少しずつ現場の納得感・安心感を積み重ねながら段階的な刷新を進めましょう。
4. “カイゼンマインド”のデジタル化へ
従来のカイゼン活動(QCサークル、小集団活動)をIT上で集約・蓄積・見える化する取り組みも共同開発で真価を発揮します。
属人化しやすい問題発見→改善ノウハウを、全社共有資産としてシステム化することで、ひとり現場力から“企業全体の底上げ”へと発展させることができます。
共同開発型DX推進でバイヤー・サプライヤーが得られる価値
バイヤー視点:競争力向上と柔軟なパートナーシップ構築
生産現場やサプライチェーン全体でのDXに取り組むことで、
「QCD(品質・コスト・納期)」向上、
新規事業へのスムーズな対応、
災害や地政学リスクへの強靭性などを高めることが可能になります。
なお、実際に業務を体験した現場の声を的確に把握し、
自社の「本当に必要な機能、価値」 を見極めるバイヤー力が今後ますます重要性を増すでしょう。
サプライヤー視点:共創パートナーとしての存在価値
多くの下請け/サプライヤーは、単なる「指示されたモノを納める」業務から、「バイヤーの課題を解決するパートナー」への進化が求められています。
例えば製品納入時、現場の複雑な使い方や潜在課題を解決するために、付加価値サービスとして共同でソフトウェア開発を提案できれば、構造的な取引関係自体を変革できます。
この動きは、コストダウン要請に応えるだけでなく、サプライヤー自らが“取引の主導権”を持つ大きな契機ともなり得ます。
新たな地平線へ:製造業の未来を切り拓くために必要な思考法
共同開発型の「モノづくり×ソフトウェア」推進は、従来のオペレーション発想から「サービスデザイン発想」への脱皮が不可欠です。
単なる作業効率化ツールに終わらせるのではなく、「現場で起こる変化」そのものが顧客価値創出につながる…そんな“ラテラルシンキング”が求められる時代です。
製造業が持つ現場力やカイゼンマインド、泥臭い“人”の知恵を、いかにしてソフトウェア技術によって社会に拡張し、自治体・業界・サプライチェーン全体へ波及させられるか。
分断・縦割り構造から解き放たれた「共創するものづくり」こそが、日本の製造業を再び世界の先頭に躍り出させるカギとなるでしょう。
まとめ:現場主導×IT共創で生まれる、新たなモノづくり価値創造
IoT、DX、AI、サステナブル経営…さまざまな潮流の中で、今問い直されているのは「現場とITの距離感」と「共創のあり方」です。
この記事で紹介した共同開発型アプローチは、現場目線の実践知とITの力を最大限に引き出し、“使われて初めて意味のあるシステム”を生み出す強力なフレームワークです。
バイヤーも、サプライヤーも。
ともに「新たな価値」を共創し、いつの時代も変わらぬ「ものを作る喜び」と「社会への貢献」を実感できる未来へ。
あなたもまずは自社の現場から、ソフトウェアを味方にした新たな一歩を踏み出してみませんか。
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