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OEMパーカーの大量発注で起きる“色差問題”の原因と回避策

目次
はじめに:OEMパーカーの大量発注に潜む色差のリスク
OEMパーカーは、アパレルブランドや企業ノベルティ、学校のユニフォームなど幅広く活用されています。
しかし、こうした大量生産の現場では「色差問題」、すなわち同じデザイン・指示色で発注したにも関わらず、生産されたパーカーに微妙な色の違いが発生する現象が頻発します。
この色差は小さな差に見えても、ブランドイメージや商品価値を大きく損なうことになりかねません。
本記事では、20年以上の製造業経験、特に調達・生産管理・品質管理の現場でつかんだ知見をもとに、OEMパーカーの色差問題の原因を深掘りし、現実的な回避策を詳しく解説します。
昭和時代から続くアナログな慣習の中にこそ、色差問題が根深く潜んでいる点にも触れます。
製造業の現場担当者やバイヤー志望の方、サプライヤー側で交渉力を高めたい方に、明日から使える実践的なヒントをお伝えします。
色差問題はなぜ起きるのか?
染色ロットによる「ロット差」
まず、色差問題で最大の要因は「染色ロット差」です。
染色は意外と化学的・技術的な“ブレ”が大きい工程です。
同じ色レシピ(配合)で染色しても、染料のロット、原綿の状態、染色加工機のコンディションや温度・湿度によって色の出方が微妙に異なります。
特にパーカーのような厚地アイテムでは、染液の浸透ムラが生じやすく、1バッチ目と2バッチ目、また、工場(協力工場)ごとに色が微妙に異なることが多いです。
アパレル現場の感覚値ですが、おおよそΔE=1.0(色差計測値)が許容値とされますが、並べてみないと分からないような“小さい差”でも消費者の目には意外と違和感として映ります。
素材由来の発色差
ベースとなる生地そのものにも“癖”があります。
コットン(綿)素材なら、同じ規格・混率でも生産時期や産地により原綿繊維の微妙な成分差があります。
また、再生繊維や化繊混による合成繊維が少量混ざっていても染色時の発色が食い違います。
OEMパーカーは一つの受注で複数メーカーから生地調達をするケースが多いですが、このとき生地メーカーごとに染色がズレやすく、これが色差の第二の大きな要因になります。
アナログなQC体制と人的感覚
工場によっては昭和から続く“勘と経験”頼りの色合わせが多く、基準サンプル(色見本)と「目視」でしか確認しないこともしばしば。
計器による管理やバラつき分析が十分でないケース、「色はこんなもんでしょう」という阿吽の呼吸が横行している現場では、色差トラブルが頻出します。
また、光源(蛍光灯、昼白色、自然光等)の違いに気づかず検査してリリースされるパターンや、外注先ごとに品質基準の認識ズレが起こりがちです。
いまだ紙ベースの指示書や現物サンプルのみで情報伝達している工場では、色味の揺れを完全には把握できていません。
大量発注特有の分納・納期分散トラブル
もう一つの要因が、大量発注時の「分納」や「納期ずらし」です。
一度に全数を染めきれない、あるいは生地が揃わないなどの理由で複数回に分けて生産・納品する場合、先に生産した分と後日生産分とで色味がズレやすくなります。
これは染色窯が洗浄されて前回の染料が完全にリセットされなかったり、原料生地の仕入ロットが異なったりするためです。
また、納期短縮や予備分追加など急な段取り変化でも色差の生じるリスクが上がります。
色差問題を回避するためにできること
厳格な管理基準とサンプル管理
色差を疑似科学的に、かつ実務目線で制御するには、まず「管理標準色(スタンダード)」の設定が必須です。
必ず一枚、「マスターサンプル(色見本)」を定め、これを色差計でΔE値管理し全工程・全協力会社に共有します。
また、色差基準(たとえばΔE=1.0以下)も明文化し、入庫時検品や最終出荷検査のチェックリスト化を徹底しましょう。
色見本はできる限りマスターコピーを複数作製し、各工程・各現場へ物理的に共有します。
極力「見本から現品まで何工程挟むか」を減らし、現物主義を貫くことで伝達ミスを減らせます。
色差計・分光光度計などデジタルツール活用
従来の「人の目」だけには頼らずに、分光光度計などのデジタル測色機器を使った検査方式の導入が有効です。
現場実務では色差計(ハンディ型)でサンプルと現品、各ロットごとにΔE値を計測することで、目視検査では見落としやすい微妙な色ズレも数値で制御できます。
特にOEM生産・外注先間で色味の感覚ズレが大きい場合、客観的な数値基準があれば「ここまではOK」「これはリジェクト(不良)」と合意形成しやすいです。
染色ロットの極小化と一貫生産体制の確保
根本的な解決策は、一度に必要数分以上の生地を染色し、全量同一ロットで生産することです。
生産枚数・納期に余裕がある場合は、全量を1度の染色ロットで賄えるように工場と早くから調整しましょう。
また、裁断・縫製後の「部分補填」や追加生産をなるべく避け、分納時も必ず「同一染色バッチでまとめて出す」点をマニュアル化します。
この方法は一貫生産体制に強みを持つサプライヤーとパートナーシップを組むことで実現しやすいです。
発注前のサンプル確認と量産向け承認プロセス構築
OEM商品は量産前に「先上げサンプル」や「TOPサンプル」の色味を現場・クライアント双方で厳密に確認しましょう。
追加生産時、または他工場生産への切り替え時には、必ず既存の現品と新規分のサンプルを並べて比較し、色差が生じていないか数値管理と目視確認のダブルチェック体制を組みます。
また、承認プロセスをドキュメント化し、「仮サンプルでの承認→全数本生産」でなく、「本生産の最初の現品で再度承認」をルール化すると色差リスクは格段に下がります。
現場・サプライヤーとバイヤーの連携で変わる色差対策
バイヤー・仕入先間の常識のズレを埋める
製造業現場では「色なんて多少ズレても売れる」という“昭和の感覚”が根強く残っています。
一方、ブランド管理に厳しいバイヤーやエンドユーザーは、わずかな色差も見逃しません。
バイヤー側は、購買契約時から「色味はこのレベルでOK/NG」など現実的な許容値と検査方法(人の目か機械計測か)を仕入先と摺り合わせておくことが重要です。
サプライヤー側も「これくらい良いだろう」と甘えずに、バイヤーの意図を深掘りし、現場で管理すべきポイントを明確化しましょう。
また、数量・納期変更が発生した場合は、都度色差リスクについて双方で再確認するなど、腹を割った対話を欠かさないことが大切です。
色差問題は“現場の改革”で解決できる
OEMパーカーの大量生産現場では、経験と勘に頼った昭和的慣習のままでは色差トラブルは避けられません。
ですが、現場サイドが数値による客観的な色管理やロット制御を取入れ、発注者(バイヤー)とサプライヤー側双方で明確な基準とプロセスを共有するだけでも、驚くほど品質トラブルは減ります。
そして、AIやデジタルツールも積極活用しながら、「ヒューマンエラーの回避」と「仕入先との信頼関係構築」を両輪で追求することが、これからの製造業の当たり前の姿です。
OEMパーカーの色差問題を解決することは、単なる品質向上やクレーム防止にとどまらず、ものづくりの現場そのものをバージョンアップさせる、未来への一歩になります。
まとめ
1. OEMパーカーの色差問題の根本要因は染色ロット差や素材差、QC体制・分納体制の甘さにあること
2. 管理標準色/サンプル基準の徹底、デジタル計測や一貫生産体制の確保で現場主導の解決が可能
3. バイヤーとサプライヤー間で現実的な許容基準・承認フローを明確化し、共通認識を深めることが不可欠
昭和から続くものづくり現場でも、現代的な管理とコミュニケーション術で「色差問題」は確実に克服できます。
現場第一主義の視点から、一つ一つの工程に工夫を加えて、誰もが満足できるパーカー生産を実現していきましょう。
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