- お役立ち記事
- 海外購買部門が検討すべき日本製品調達と現地OEM組み合わせ戦略
海外購買部門が検討すべき日本製品調達と現地OEM組み合わせ戦略

目次
はじめに
海外進出を拡大する日本の製造業において、調達戦略の巧拙は企業の成長スピードと競争力に直結します。
日本国内の優れた製品や部品の調達と、進出先での現地OEM(Original Equipment Manufacturer)との組み合わせによるハイブリッド調達は、コストダウン・品質確保・リードタイム短縮・BCP(事業継続計画)の観点からも重要なテーマとなっています。
本記事では、現場経験を活かした実践的な視点で、日本製品調達と現地OEM組み合わせ戦略について深掘りし、昭和的アナログ商慣行が残る現状と、そこを突破する新たな地平を考察します。
日本製品調達の強みと課題
ジャパンクオリティは未だ強し
多くの海外現場を見てきましたが、「日本品質」という単語は決して過去の遺物ではありません。
特に自動車、半導体、精密機器など高精度・高信頼性が求められる分野では今なお圧倒的なブランド力があります。
日本製品を調達することで、バイヤーとしては自社の最終製品全体のプレミアム価値向上や、納入後のトラブル低減による総コスト削減が期待できるでしょう。
調達現場が抱える3つの課題
一方で、私自身が苦労した点もいくつか挙げられます。
まず価格競争力です。
日本メーカーのコスト構造は、円安局面を迎えてもなお他国より高止まりしやすい側面があります。
次に、リードタイム・納期面の硬直さです。
昭和時代から変わらぬ受発注フローや、標準化されていない現場対応が頻繁にネックとなります。
三点目が柔軟なカスタマイズ・小ロット対応力の不足です。
高品質=画一化志向になりがちで、多様化するグローバル市場ニーズに即応できず機会損失が生まれやすい傾向も感じます。
現地OEM調達のメリットとリスク
地の利とコスト優位性が魅力
現地OEMとの連携は、コストダウンとリードタイム短縮の両面で魅力があります。
現地調達率を高めることで関税の回避、物流コストの削減、在庫圧縮といった直接的な利益が明確です。
加えて、急な仕様変更やカスタマイズにも近距離で小回りの効く体制が組め、ビジネススピードを上げやすくなります。
品質リスクと信頼構築の難しさ
ただし、品質管理の考え方や製造プロセス、トレーサビリティ意識が日本と大きく異なる場合も多々あります。
私の経験では、仕様書通りに作ってもらったと思っても微妙な解釈のズレや材料置き換えが起きている…といったトラブルが一定確率で発生します。
不良発生時のフィードバックループも遅れがちで、現場で肌身に感じた「当たり前」を伝達するには言語以外の苦労も伴います。
日本製品+現地OEMのハイブリッド調達戦略
選択と集中で「いいとこ取り」を目指す
両者の良さを活かすには、どこを「日本から調達するべきなのか」、どこなら「現地OEM化できるか」の見極め=選択と集中がカギとなります。
具体的には、クリティカルな品質部材・コア技術部品は日本製を用い、非コア要素や汎用的な消耗品・樹脂部材・簡単なサブアセンブリは現地OEM化するといった分類思考です。
機能とコスト、納期リスクを総合評価することで、安定供給と最適コストの両立を図ることができます。
現場目線での3つのポイント
1点目は、現地OEM先の「品質管理レベルと教育」に深く踏み込むことです。
図面や仕様だけで任せて終わり、ではなく、現場監査・工程監視・パートナー教育まで手間とコストを惜しまないことが、結局は全体最適に繋がります。
2点目が「設計段階から現地化を想定」する設計・開発思想です。
日本の開発部隊と現地生産現場が連携し、最初からモジュール化や部品共通化を意識することで、実装時のムダや後戻りを防げます。
3点目は、「供給リスク分散」として、同一仕様で日本サプライヤー+現地サプライヤーの並行採用体制を構築することです。
万一、日本側の供給ストップや地政学的リスクで一方が止まっても、素早く切替できるBCP体制を構築できます。
昭和的アナログ商慣行から脱却するヒント
曖昧な商談文化の弊害
長年の現場では「言わずもがな」「空気を読む」といった阿吽の呼吸に大きく助けられてきた反面、グローバル案件ではこれが混乱の元にもなります。
例えばスペック・品質不良時の対応や、責任の所在の曖昧さは、その後のトラブル拡大や信頼喪失に直結します。
データ主導の調達へ移行
現代では、サプライヤー評価・現場監査・出荷管理・品質トレーサビリティなど、全ての工程データを定量的に「見える化」し、どこでどんなリスクが発生しているかをリアルタイムに把握する体制が必須です。
また、仕様変更や突発的トラブルの際も「感覚」や「思い込み」に頼らず、明文化された基準やフローチャートをベースに対応策を協議するのがプロとしての調達バイヤーの鉄則です。
現地OEM活用でこそデジタル連携が生きる
クラウド型PLM(製品ライフサイクル管理)や、工程監視カメラ・IoTデバイスによるトレーサビリティの自動収集を導入し、日本側とリアルタイムで品質・進捗の情報共有をすることで、「海外OEMだから見えない」「現地任せだから管理不十分」といったリスクを大きく引き下げることが可能になります。
これこそ昭和から令和へ脱皮するための肝要な転換点であると私は考えています。
サプライヤーの立場から見たバイヤーの「本音」理解のすすめ
バイヤーは価格や納期だけでなく、「リスク最小化」と「サプライチェーン全体の強靱化」という視点を持っています。
サプライヤーとしてただ単に「発注をもらう」という受け身の姿勢でなく、提案型でコストダウンや改善策を発信できる企業が選ばれやすくなっています。
また、設計・製造・調達とそれぞれの部署で「何を優先し、どこに困っているのか」を会話しながら掘り下げていくことが、長期的なパートナー関係の醸成には不可欠です。
日本的な「お付き合い志向」も残しつつ、「提案型」のスタンスで課題解決型のお付き合いを構築しましょう。
まとめ:現場感+ラテラルシンキングのすすめ
日本製品の強みと現地OEMの機動力を最大限に活かすには、従来の延長線だけではなく、調達・品質・設計・現地運用のあらゆるフェーズでのラディカルな思考転換が不可欠です。
現場の苦労と知恵を尊重しつつ、根本的な「仕組み」「情報」「役割分担」をデジタル化・標準化・明文化していくことで、時代遅れのアナログ商慣行から一歩ぬけ出しましょう。
新しい調達像の地平線に挑戦し続けることで、日本製造業はグローバルで再び輝くことができると信じています。
この複雑でダイナミックな転換期において、互いに知見を共有し合い、進化しつづけましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)