- お役立ち記事
- 試作品を評価するときに陥りやすい“作り手目線”の偏りと修正法
試作品を評価するときに陥りやすい“作り手目線”の偏りと修正法

目次
はじめに:試作品評価に潜む“作り手目線”とは
ものづくりの現場では、新製品開発や改良、部品調達の際に必ず試作品が登場します。
この「試作評価」は、完成品の品質や市場評価を左右するきわめて重要な工程です。
しかし、私たちがしばしば陥る落とし穴があります。
それが“作り手目線”の偏りです。
長年、製造現場や調達購買、生産管理の現場に身を置く中で、多くの現場担当者が「自分たちの常識」にとらわれ、真のユーザー価値を見失う場面を数えきれないほど見てきました。
また、昭和から続くアナログな評価手法や、社内文化・業界慣習が、その“偏り”を助長していることも否めません。
この記事では、この“作り手目線”による試作品評価の偏りが発生する構造を深掘りし、実践的な修正手法までをわかりやすく解説します。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場でバイヤー思考を知りたい方にも役立つ、現場のリアルなヒントをお届けします。
なぜ“作り手目線”の偏りが生じるのか?
1.「技術的達成感」が本来の目的を曇らせる
試作評価の場では、「予定した通りの機能や寸法が実現できた」といった、設計・製造側の達成感が評価に影響しがちです。
たとえば、新技術を組み込んだパーツが“何とか組み上がった”という段階で満足し、「ユーザーが本当に必要とする価値や課題」は置き去りになってしまう場合があります。
2.評価基準の曖昧さと、部門横断の壁
現場では評価基準が「あいまいで根拠に乏しい」「設計や製造の都合に引っ張られる」といった事例がよくあります。
生産技術や設計、品質保証、調達など部門ごとの視点がバラバラで、全体最適ではなく「自分本位」「自部門本位」になりやすいのです。
3.使う側(お客様・ユーザー)の視点が抜け落ちる
試作品の評価で「組み立てが簡単」「想定工数内で組み立てられた」といった指標に終始し、本来「現場作業者やお客様がどう使うのか」「現場負担が本当に減っているか」を具体的に深掘りしていないケースが多発します。
昭和的アナログ文化がもたらす“思考停止”
日本の多くの製造業は昭和時代から続くアナログな“現場重視文化”が根強く、これは一面では製品品質の高さや現場力の強さにつながっています。
しかし、現代の市場変化やグローバル競争、サステナビリティへの要求のもとでは、古い思考習慣が「新たな発想の妨げ」となってしまう場合もあります。
特に、現場のカイゼン精神や“大先輩の経験則”が評価基準のベースになっており、数値化や客観化、ユーザー目線でのフィードバックが十分に織り込まれていないケースが目立ちます。
こうした時代遅れの評価文化が「思考停止」を招き、新たな価値の探索・イノベーションの芽を摘んでしまいます。
“作り手目線”の偏りがもたらすリスク
ユーザーニーズとの乖離
ものづくり現場が“作り手目線”に偏ると、「なぜ売れないのか?」「納入先から苦情が多い」といった、現場にとっては痛い結果が起こります。
いくら社内評価をクリアしても、最終顧客が期待している使用感・性能・コストに合致しなければ、商品価値は認められません。
形骸化した“合格ライン”の危険
“合格しているつもり”でも、実は本質的な価値を逸脱している場合があります。
例えば、
・図面の寸法公差はOKでも、現場作業者が「嵌め合いが固くて使いづらい」
・テスト環境ではOKでも、実際にライン上で使うと「操作性に難あり・不良率が増える」
など、現場での「問題の早期発見」が遅れてしまいます。
現場発・実践型「作り手目線からの脱却」方法
1.現場で“使う人目線”のヒアリングとフィードバックを組み込む
現場作業者や実際の使用者と一緒に評価を行い、その場で徹底的に「何が使いづらいのか」「どこが改善ポイントか」をフィードバックします。
たとえば、試作品を数日間現場に置き、実際に使いながら感想を出してもらう「ユーザーテスト会」を実施。
ただ単に「使ってもらう」だけでなく、使用時の感情や困り事、理想を具体的に聞き取ることが重要です。
2.部門横断での評価基準策定と数値化
試作品の評価軸を「設計・製造・現場作業者・品質保証・調達」など部門横断で集まり、一つ一つの評価ポイントを定義・数値化します。
例えば「組み立て時間」「作業負荷」「必要な冶具の有無」「不良発生率」「ユーザー満足度」などをKPIとして設定します。
評価シートには“感覚的なコメント”ではなく、具体的・客観的なデータを記入し、課題があれば根本要因まで追求することが大切です。
3.ラウンドテーブル方式の定例会の導入
評価メンバーが固定化されると視野が狭まりがちです。
そこで、若手や女性、外部ベンダー、さらには顧客の現場担当者も交えたラウンドテーブル方式の試作品評価会を定例化しましょう。
多様な立場・視点が交わることで、盲点に気づきやすくなります。
特に営業やマーケティング担当も巻き込み、「売る側・選ぶ側・使う側」の声を評価に反映させる仕組みが極めて有効です。
4.“なぜなぜ分析”と「ほんとうにそれが必要か?」の繰り返し
試作品レビュー時に「なぜ、この設計にしたのか」「なぜこの仕様がユーザーにとって最適なのか」と、“なぜ”を徹底的に掘り下げていきます。
また、「この機能は本当に必要なのか?」「現場負担を減らす別なアイディアは無いか?」と、一見当たり前に見える仕様も立ち止まって再度問い直します。
既存の常識や慣習を疑うラテラルシンキングが、現場起点の新たな価値を生み出します。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場から見る評価の違い
バイヤー視点
バイヤーは「コスト・品質・納期」の三大条件を満たすだけでなく、自社の生産現場への適合性や、不良リスク・アフターケア体制なども重視しています。
彼らが試作品評価で重視するのは、「安全マージンをどこまで確保できるのか」「標準作業書通りに誰でも一定品質で作業できるか」といった実用性の高さです。
バイヤーを志望する方は、「なぜその仕様が必要か?」「トータルコストの観点から本当に最善なのか?」を自問しつつ、現場ユーザーの生の声をヒアリングし、意思決定に生かす能力が求められます。
サプライヤー視点
サプライヤーは「コストダウンの圧力」「納期厳守」「品質改善」など顧客の要望に追われがちです。
そのため、試作品提出時はどうしても“自社の得意技術アピール”や“手間のかからない製法”に偏りがちです。
しかしバイヤーや最終ユーザーが「実際にどこで満足し、どこで不便を感じているか」を常に意識しましょう。
バイヤーが重視する「現場適合性」「作業のしやすさ」「歩留まりの良さ」などの本質的な価値に寄り添うことで、長期的な信頼関係が築けます。
まとめ:現場目線から“本質”を見抜く目を養う
試作品評価は、“作り手目線”のバイアスをいかに外すかが鍵となります。
そのためには、現場作業者・ユーザーの生の声をヒアリングし、客観的な評価基準を策定、部門横断の多様な視点を取り入れることが不可欠です。
加えて、「なぜなぜ分析」で本質を掘り下げ、従来の慣習に囚われず、現場から新たな気づきを得るラテラルシンキングも求められます。
昭和的な“思考停止”から一歩抜け出し、現場基点のイノベーションを起こすことが、これからの製造業の鍵なのです。
同じ業界で働く皆様が、より良い評価プロセスを通じて、お客様の真の満足を共に創り上げ、お互いの価値を高め合えることを心から願っています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)