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人手不足問題の相談が長期化する企業に共通する判断ミス

目次
はじめに:深刻化する製造業の人手不足とその背景
製造業の現場では、「人手不足」が日常的な課題となっています。
業界の高齢化や若年層の就業離れ、さらには新型コロナウイルスの影響による生産体制の混乱も追い打ちをかけ、あらゆる企業で人材の確保と定着が困難になっています。
その結果、「人手不足問題をどう解決すればよいか」という相談が相次ぎます。
しかし、実際には問題解決が長期化し、同じ課題を何年も抱え続けてしまう企業も少なくありません。
この記事では、現場目線から「人手不足問題の相談が長期化する企業に共通する判断ミス」と、その根本要因、そして具体的な打開策までを、アナログな業界動向にも目を配りながら深く掘り下げていきます。
人手不足問題が長期化する企業の典型的なパターン
問題の先送りと“その場しのぎ”の応急対応
人手不足の深刻化が叫ばれて久しいですが、実際には「なんとか回せばとりあえずは現場が動く」という安易な考えが支配している企業が多いです。
現場リーダーは、自ら率先して残業でカバーし、時には非正規社員やパートタイマーを一時的に増やして乗り切ろうとします。
その結果、「現場がなんとか持ちこたえている間は根本策を打たなくてもいい」と判断してしまうのです。
問題を本質的に捉えていない“対症療法”
また、多くの企業が求人広告費を増やす、派遣会社に頼ってみる、場合によっては定年を延長するなど、表面的な施策のみを繰り返します。
一時的に応募者数が増えても、思うような即戦力が定着してくれず、また人手不足に逆戻り。
これらの対応は“対症療法”でしかなく、現場力維持や生産性そのものを向上させる根本的な体質改善を避けているのです。
決断力の欠如と責任の所在曖昧化
現場でよく見られるのが、「人事部頼み」「経営層の判断待ち」といった決断の先送りです。
現場が苦しくても、「ウチの職場は特殊だから仕方ない」「じきに昔のように人が戻る」といった昭和的な発想に甘えてしまう現象も、依然としてまかり通っています。
主体的に動こうとする人材が評価されにくい、組織風土そのものが時代遅れになっているケースも散見されます。
人手不足問題が長期化する企業に共通する“判断ミス”とは
1.「人を増やせば、すべて解決する」と思い込んでいる
慢性的な人手不足に直面したとき、最も短絡的でありがちな判断ミスは「今よりも多くの人員を採用できれば、元通りになる」という幻想です。
確かに、かつては新人が潤沢に入ってきて、丁寧なOJTのもとで熟練職人へと育成され、現場の座組みが自然に回っていました。
しかし、少子高齢化が進み、製造業自体が若者にとって魅力的な職業ではなくなりつつある現代は、もはや“人を増やせばよい”時代ではありません。
2.業務プロセスそのものの見直しを怠っている
人手不足が慢性化している企業の多くは、従来なじんできた業務のやり方そのものを疑いません。
「今までこれでやってきたんだから、変える必要はない」と現場や管理職が無意識に現状温存を選びがちです。
特に、紙の伝票処理や手書きの日報・チェックリスト、電話・FAXでの発注といったアナログな慣行が今も深く根強いています。
このアナログ業界の“聖域”を放置したままでは、人手不足が永遠に解消することはありません。
3.現場の「多能工化」推進が進んでいない
作業の専門分化はかつての大量生産型には最適でした。
しかし、少人化や多品種少量生産・高変動対応のためには、現場の多能工化(オペレーターが複数の業務を担当できる体制)こそが命綱になります。
導入コストや教育の手間を理由に、多能工化を進めない判断は、持続不可能な工場体質を強化するだけです。
4.従業員目線の“現場DX”が進んでいない
人手不足が加速した令和の時代においては、業務の自動化やデジタル化の推進、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠です。
「IT投資は高額」「ウチのような中小零細には無理」という固定観念から、時代に取り残されている企業も多く見受けられます。
また、「とにかく何かシステムを入れれば良い」というシステム導入ありきの姿勢も、現場への実装・定着が進まず、結果的に人手不足の緩和には繋がりません。
5.現場と経営層の“温度差”を放置している
経営層は“戦略”だけ、現場は“実務”だけに目を向けており、本質的な「どうあるべきか」という議論を避けてしまうケースも少なくありません。
現場から根本的な構造転換の必要性が声として上がっても、「前例がない」「出来ない理由」が先行し、改善へのドライブがかからないままになるのです。
実体験から読み解く人手不足“長期化”の悪循環
私はこれまで工場長、そして現場の中核として、さまざまな解決プロジェクトに参画しましたが、判断ミスが起き続ける現場には次のような悪循環が絶えず発生しています。
1. 担当者たちの残業や応急措置で目の前の出荷はなんとかなり、問題の深刻さを経営が認識できない
2. 一時的な増員でしのいだとしても、教育体制が不十分で離職者が増加
3. 本質的な自動化・省人化投資に踏み切れず、同じ業務が同じやり方で回り続けてしまう
4. 負担増・労働環境の悪化が「人が定着しない」職場イメージを助長
5. 業界動向の変化(注文形態の多様化、小ロット化、納期短縮など)に現場対応が遅れ、競争力を失う
以上の悪循環が、まるで昭和から時間が止まっているかのように、現代の多くの製造現場で繰り返されています。
人手不足問題を根本解決するための道筋
業務プロセスの徹底棚卸で“ムダ”を可視化
まず取り組むべきは、「増員以外で人手を減らす方法」に目を向けることです。
現場の作業・間接業務をすべて棚卸し、非効率な流れや重複作業、使われていない帳票や二重管理システムなど、「当たり前」になってしまった仕事に“赤ペン”を入れましょう。
特にアナログな現場ほど、このムダの埋蔵量は想像以上です。
現場の担当者と一緒に、“ひと・もの・金・情報”の流れを書き出し、真の仕事量を把握することで、削減余地が明らかになるでしょう。
多能工化・チーム制による柔軟な人員運用
工程や職種に壁を作らず、スキルマップを活用して複数の作業に対応できる人材を育てる多能工化は必須です。
人数が減っても生産性が落ちない体制づくりには、チーム制・ローテーション制の導入が有効です。
ベテランや中堅が持つノウハウの“見える化”と、現場OJTによる体系的な育成プログラムが勝敗を分けます。
“現場に聞いて、現場と動く”姿勢が重要です。
省人化・自動化を部分的にでも着実に推進する
工場全体のフルオートメーション化は難しくとも、たった1つの工程、1つの資料作成、1つの定型入力から着手できます。
例えば、紙で運用されている発注・納品業務をクラウド化、自動通知システムの導入、バーコードやRFID利用による在庫管理省力化など、“できること”から着実に推し進めましょう。
投資対効果を具体的数字で示し、経営層の納得感を得るためにも、パイロット導入や他社事例を積極的に共有しましょう。
人に“選ばれる”現場づくりの徹底
「うちの業界はブラック」「きつい・汚い・危険」というレッテルは、今の時代には命取りです。
労働環境や福利厚生、キャリアパスの明確化、柔軟な働き方設計など、“人が辞めない・人が集まる”職場ブランディングを強化しましょう。
具体的には、職場見学や現場社員との直接対話の機会を増やす、採用面接に現場社員を参加させるなど、人を重視したアプローチが鍵です。
トップダウンとボトムアップの融合
経営層と現場の対話促進、全社的な意識改革を促すためのオープンな議論の場を意識的に設けましょう。
経営側は現場の“痛み”に共感し、現場は経営の“苦しさ“に理解を示す。
この双方向の信頼関係が現場改善の第一歩です。
部分最適ではなく、「全体最適」で人と業務を配置するダイナミックな発想も求められます。
まとめ:人手不足問題の“本質的判断”を現場こそが担う時代へ
人手不足問題は、単なる採用や人員増だけで解決する時代は終わりました。
なぜ自社では人が定着しないのか、本質的な業務のあり方や組織体質、経営戦略レベルの変革まで掘り下げ、「新しい地平線」を開く覚悟こそが不可欠です。
これからの製造業では、現場とサプライヤー、バイヤーの立場を超えて、「現場目線」に根差した抜本的な見直しこそが持続的成長の鍵となります。
判断ミスの共通項を一つずつ可視化し、“自分たちの未来は自分たちで切り拓く”強い現場が、日本のものづくりの希望となるでしょう。
変革の一歩は、小さな業務改善から始めてみてください。