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テレマティクスサービスの導入判断が遅れる企業の共通点

テレマティクスサービスの導入判断が遅れる企業の共通点
はじめに:製造業DXの遅れはテレマティクスサービスにも現れる
製造業界においてデジタル化や自動化への取り組みが叫ばれて久しいですが、現場レベルで見ると、今もなお紙や電話、FAX、メールによる連絡が根強く残っています。
とりわけテレマティクスサービス――つまり「車両や設備、機器などの位置情報や稼働データをリモートで管理・分析し、業務最適化や安全向上を目指すサービス」――の導入は、なかなかスピーディーに進みません。
この記事では、自身の20年以上の現場経験を通じて感じた「テレマティクスサービス導入判断が遅れる企業の特徴」と、その背景や本質、解決へのヒントを深掘りします。
アナログに依存する企業文化
製造業では「現場主義」、つまり実際に目で見て・手で触れて・職人の勘で動くといった昭和時代の価値観が根強く残っています。
多くの企業で、情報共有はホワイトボードや伝票が主役です。
ドライバーの日報や機械の稼働記録は、今も手書きです。
このアナログな運用が企業文化にまで根付いていると、「データ自動取得・見える化」といったテレマティクスサービスは「馴染みがないもの」「余計なもの」になりがちです。
「現状でも困っていない」「細かな手作業や目視確認が安全・確実」と考えてしまい、新しいIT的な仕組みには慎重、いや、消極的になります。
コスト感覚とROI(投資対効果)の捉え方の違い
テレマティクスサービスは、「導入すればすぐにコスト削減や売上増加につながる」と単純に言えるものではありません。
霞ヶ関の助成金申請のように、「導入前にROIを具体的に示せ」と上層部が要求すると、現場担当者は二の足を踏みます。
なぜなら、多くの場合「いきなり利益につながる」わけではなく、「長期的な安全性向上」「人員配置の最適化」「故障リスク低減」「予防保全強化」など、定量化しにくい部分が多いからです。
結局、「コストが上がるだけ」「本当に効果があるかわからない」となり、導入の足が重くなる状況が生まれています。
現場では「手間が増えるだけ」と感じやすいのも特徴です。
例えば、運転データや燃費データの自動取得機能にしても、「事故削減や燃費改善」という未来より、「新しい端末をいちいち操作しないといけない手間」のいまに意識が向いてしまいます。
全社横断のリーダー不在と組織サイロ化
テレマティクスサービスの恩恵は「サプライチェーン全体」「工場〜物流までの垣根を超えたデータ活用」によって最大化されます。
しかし、多くの企業では生産管理、物流、輸送、購買、営業、経営企画がそれぞれ情報を囲い込んでしまい、横串でイノベーションを巻き起こすリーダーシップが不在です。
「現場(物流現場、運転手など)」と「管理(事務、経営層)」の間で意思疎通がうまくいかず、どちらかが積極的でも、反対側が踏みとどまる――このパターンが非常に多く見受けられます。
また、導入メリットが横断的(全社的)であるがゆえに、「誰の案件として予算化・推進するのか」担当部門が決まりにくいこともあります。
これが導入障壁となり、「結局流れてしまった」プロジェクトの姿を何度も目にしてきました。
失敗を許容しない企業風土が決断を鈍らせる
日本の製造業現場では、未だに「失敗を恐れる文化」が根強くあります。
「うまくいかなければ担当者の責任」「導入後に何かあったらどうする?」というプレッシャーの下では、トライアル導入や小規模パイロットすら踏み切りづらい空気です。
しかし、テレマティクスサービスの多くは「現場でのフィードバックでカスタマイズ」しながら本格運用の形を探ります。
この「やってみる→改善する→拡大する」というサイクルが出来ないと、導入はいつまでも“検討中”のまま。
小さな一歩すら踏み出せなくなり、進化から取り残されてしまうのです。
下請け構造・サプライチェーン全体の事情も影響
製造業の特徴として、「下請け構造」や「多重請負構造」が挙げられます。
たとえば、「発注元が何も言わないなら新しいサービス導入は控えよう」「発注側がテレマティクスを要求しなければ必要ない」という思考が根強いのも、導入判断が遅れる要因です。
また、導入にはサプライチェーン全体の協力が不可欠ですが、協力会社・下請会社との関係性や調整コストの大きさもブレーキとなります。
発注側(バイヤー)の目線では「安定稼働と品質確保が最優先」となり、新しいチャレンジを求めないことも。
一方で、サプライヤーからは「バイヤーが何を必要としているのか分からない」「リスクばかりが大きい」と不満や疑念が生まれやすくなります。
導入遅延がもたらすリスクと未来の視点
テレマティクスサービスを導入しないままでいるリスクは年々高まっています。
グローバルで見ると、欧米や中国の製造現場ではすでにIoT/M2MやAIによる統合的なオペレーション最適化が進んでいます。
これに対し、日本のアナログな現場は「人の経験や裁量」で回していますが、少子化・熟練者不足により、その土台が崩れ始めています。
データの蓄積がない企業は「次の一手」を打つ材料すら手にできません。
見える化や分析、協調型の最適化が出来ていない現場は、競争力を徐々に落とし、「あの会社の取引は他よりもロスが多い」「事故や故障が減らない」「協力会社への情報共有すら遅い」という評価に繋がってしまうのです。
導入推進のために現場が取るべきアクション
この状況を打破するには、現場・マネジメント双方が「小さな一歩」を踏み出せる環境づくりが不可欠です。
1. 「現状把握」と「課題の洗い出し」を全社的に共有する
日々の紙データや手作業のムダ・リスクを「見える化」し、「ここにこそ導入効果がある」と根拠を出すことが大切です。
2. ROIは「長期」「定量+定性」の両面から考える
「安全性向上」「法令遵守」「脱熟練依存」など定量化しにくい効果にもフォーカスします。
定性的な価値も積極的にアピールしましょう。
3. 小規模パイロット・トライアルの積極活用
いきなり大規模導入ではなく、スモールスタートを認め、PDCAをまわして良さを全社展開する「ラテラルシンキング」の発想が有効です。
4. 組織横断型プロジェクトチームの編成
単一部門に任せるのではなく、現場・管理部門・経営層が横断して取り組みます。
成功体験を社内・サプライチェーンに積極発信しましょう。
まとめ:変化を恐れず、“共創”で挑むのが次世代の強い現場
テレマティクスサービスの導入判断が遅れる企業には、アナログな風土・ROIへの過度なこだわり・決断力不足・分断組織・失敗回避志向など多くの共通点があります。
しかし、時代は確実に変わりつつあります。
「まずやってみる」「共創する」「現場が自らリーダーとなる」ことで、競争力は取り戻せます。
バイヤー・現場・サプライヤーの垣根を超え、“新しい地平線”を切り開くのは、現場から始まる小さな勇気と、明確な未来志向です。
これから製造業で活躍するあなたにこそ、変革の一歩を踏み出し、現場をアップデートする未来を切り拓いてほしいと強く願っています。