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モーダルシフトが机上論で終わる企業の共通点

目次
モーダルシフトが進まない現場のリアル -昭和を引きずるアナログ体質
モーダルシフトとは、従来トラックなどの自動車輸送に依存していた物流を、環境負荷の低い鉄道や船舶などへ切り替える取り組みです。
CO₂排出量削減やドライバー不足対策として業界全体で進めようという動きが強まっています。
しかし現実はどうでしょうか。
多くの企業で、モーダルシフトは「耳当たりのいい経営目標」であっても、現場まで浸透せず、いつまでも机上の空論に終わってしまっているのが現状です。
昭和の時代から染み付いた「どうせできない」「今のやり方が一番楽」「手間が増えるだけ」といったメンタリティが根強く残っています。
さらに、現場と経営層の温度差、サプライチェーン全体を見通す力の欠如、アナログな管理手法、デジタル化の遅れなど複合的な要因が絡んでいます。
この記事では、製造業20年超の現場目線から、なぜモーダルシフトがいつまでも「やったふり」になってしまうのか、その本質的な要因に切り込みます。
また、調達バイヤーやサプライヤーの立場で知っておきたい、企業の変化を止める“思考のクセ”や、アナログ産業特有の障害についても掘り下げます。
なぜ「やったふり」に終わるのか?モーダルシフト失敗企業に共通する思考パターン
1. 目先の「部分最適」に終始、本質的な全体最適を見ていない
製造業の現場は、かつてのジャスト・イン・タイム思想が強く、物流コストの最小化=トラック一辺倒の発想に陥りがちです。
そのため、ある出荷ロットだけモーダルシフトする「お試し」は導入するものの、全拠点・全品目で運用できる仕組み作りまで踏み出せません。
例えば「〇〇地区から△△工場への部品輸送だけは船を使う」といった形で部分的な導入事例だけが増えていきます。
ところが一部だけ切り替えても、バッファ在庫や納期保証、積載効率、港・鉄道ターミナルの使い勝手など、現場の本音に寄り添った運用設計をしないと全社展開はできません。
結果として「うちはモーダルシフト対応しています」という言葉だけが一人歩きし、ラストワンマイルのトラック利用は増加、実態としては何も変わっていない−そんな状態から抜け出せないのです。
2. 現場と経営のコミュニケーション断絶
「ESG経営」や「サステナビリティ」の大合唱。
経営会議や方針説明会で耳心地のいい目標が掲げられますが、現場責任者からは「それ、うちでやれと?」との冷めた視線が注がれるケースがほとんどです。
これは、モーダルシフトの本質や業務メリット・リスクが、経営層から現場に降りてこないからです。
一方現場も「現実的じゃない」と無意識下で思考を停止してしまい、積極的に現状を変えようとはしません。
こうした「経営−現場間のキャッチボール」の稚拙さは、昭和の終身雇用型組織や閉鎖的な工場文化にも根差しています。
デジタル変革やDX推進が進まない企業とモーダルシフト未達成企業は、驚くほど顔ぶれが重なっています。
ここが変わらなければ、思考停止による机上論体質は今後も色濃く残るでしょう。
3. “人依存”と“逸脱許容文化”が染み付いている
物流マネジメントにおいても、工場内の生産現場と同様、属人的な知見や現場のベテラン頼みが今なお根強く残っています。
「〇〇さんが明日何時に積み込みに来る」「□□運送さんに電話一本でなんとか頼る」といったやり方が続く限り、スケジュールベースの鉄道・海運に最適化した運用は難しいままです。
また、ルールより“現場の事情”を優先させる「逸脱許容文化」によって、「今日だけ特別に直送で……」「材料入荷遅延時は最悪、タクシーやチャーター配送で凌ぐ」といった現場裁量が黙認されています。
このようなやり方が常態化していると、モーダルシフトのガイドラインも結局“抜け穴”だらけになり、「運用しているつもり」で終わってしまいます。
アナログ体質な製造業が変革を阻む因習
1. デジタルツール活用の遅れ
製造業では依然として手書きの伝票、FAX、エクセル管理などのアナログ業務が幅を利かせています。
モーダルシフトには、複数の輸送手段をまたぐ情報連携や納期・在庫の動的管理が欠かせません。
ところが、現場の多くは「システム入れると余計面倒」「ミスが怖いから今のままで」と乗り遅れがちです。
調達部門も、生産部門との連携不足やサプライヤーとの紙ベースのやりとりが続き、全体最適な物流設計の議論が生まれません。
こうした“紙文化”“習慣優先文化”の温床こそ、変革の最大の敵です。
2. 物流コスト“だけ”を見て本質を見失う
現場管理職や調達担当者は、短期的な物流コストの削減に目を奪われがちです。
しかし、モーダルシフトは「サプライチェーン全体のリスク分散」や「環境対応」という大きな目的のためにあるはずです。
一時的なコスト増を恐れてチャレンジしない姿勢では、競争力強化にはつながりません。
また、「多少コストが上がっても煩わしい」と現場に敬遠されがちですが、海外・国内サプライヤーと連動した複線輸送体制への切り替えや、生産計画の見直しといった発想にはなかなか至りません。
現状維持バイアスと、部分最適主義という負のサイクルが現場に根付いているのです。
成功企業に学ぶ、モーダルシフトへの本気の取り組み
1. まずは“現場視点”で障壁を炙り出す
モーダルシフトに成功している製造業の多くは、経営層が現場に「任せきる」でもなく、「強権」で押し付けるでもなく、納入現場やバイヤー、物流部門、調達先サプライヤーと本音で徹底議論しています。
たとえば「3日納期でなく5日に伸ばしたら、何が困るか」「途中でエリア配送に切り替える選択肢はあるか」と“できない理由”を責めるのでなく、“できる条件”を一緒に考え抜きます。
昭和体質でありがちな「トップダウンの施策実行」より、現場巻き込み型のラテラルシンキングが成果につながります。
2. データマネジメントとガバナンス強化
輸送モード変更に伴う在庫管理、遅延時のオペレーション、調達先選定基準など、全社横断的なデータの一元化、見える化を進めること。
さらに、自社だけでなく取引先も巻き込んでルール化し、ルーチン業務として根付かせています。
先進企業は、デジタルツールを活用して輸送実績、リードタイム、積載率などのKPIを常に見直し、現場の“逸脱”にも即座に対応策を講じる柔軟性を確立しています。
これにより、「モーダルシフトは失敗するもの」という思い込みを打破しました。
3. ロングタームな視点とトップのコミットメント
モーダルシフトは、一朝一夕に成果が見える施策ではありません。
「数カ月で結果を出せ」と現場にプレッシャーをかける施策は失敗します。
むしろ、現状の課題を洗い出し、1年単位で段階的なシナリオを書き、現場・バイヤー・サプライヤー全体で“成功体験”を積み上げることが重要です。
トップ自らが率先して「試してダメなら、また改善案を再考する」と宣言し、全員参画意識を醸成する企業は概して成功率が高いです。
バイヤー・サプライヤー視点での対応策
1. バイヤーとしての交渉基準を見直す
サプライヤーに対して「現状コスト」「今の納期」を前提とした取引基準を見直し、モーダルシフトのスキームを盛り込んだ新たなSLAや評価制度・リスク共有スキームに切り替えることが必須です。
「コストメリットありき」ではなく、「環境」「納期リスク分散」「働き方改革」も含めた複合的な価値創造で社内を巻き込む工夫が求められます。
2. サプライヤー側も“現場まかせ”を脱却する
サプライヤーは「バイヤーがやれといったから」ではなく、自社でモーダルシフトに即した輸配送工程の最適化や、新たなサービス開発に主体的に取り組む必要があります。
現場主体の発想転換がなければ、いつまでも「やったふり企業」を脱却できません。
また、バイヤーと双方向で「できること・できないこと」を透明に伝え、失敗事例も共有する文化が求められています。
まとめ -「やったふり」から抜け出し現場主導のモーダルシフト実現を
昭和時代のアナログマインドが染みついたままの現場・調達・物流部門では、モーダルシフトを現実的な成功に導くことはできません。
デジタル化、現場巻き込み、部分最適から全体最適への視点、トップの覚悟、バイヤー・サプライヤー双方の主体的な変革。
これらが複合的に合わさってこそ、本当の意味でのモーダルシフト=持続可能なサプライチェーン構築が実現します。
将来の物流リスクや環境課題に備えるためにも、「やったふり」「形だけ」から抜け出した現場主導の取り組みが、今こそ求められています。
昭和的価値観を超え、データと現場の知恵を掛け合わせ、次世代型のモーダルシフトを共創しましょう。
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