- お役立ち記事
- ノベルティを廃止する決断が難しい組織の共通点
ノベルティを廃止する決断が難しい組織の共通点

目次
はじめに:なぜ今、「ノベルティ廃止」が議論されるのか
現代の製造業界では、取引先や顧客にノベルティを配る文化が根強く残っています。
昭和の時代から続く「付き合い文化」や「気配りの象徴」として重宝されてきたノベルティですが、近年では持続可能な社会やコスト最適化の観点から再考が求められています。
にもかかわらず、実際にノベルティ廃止を決断できる組織はごくわずかです。
この記事では、長年製造業に携わってきた視点から、ノベルティをやめられない組織に共通する課題や背景に迫ります。
また、調達購買やサプライヤーがバイヤーから求められるもの、今後のアナログ業界の可能性についても掘り下げます。
なぜノベルティが廃止できないのか ── 昭和的慣習の名残
取引関係の「潤滑油」という固定観念
ノベルティは多くの場合、取引先との関係維持や新たなビジネスのきっかけ作りの役割を担ってきました。
たとえば、お歳暮や季節のご挨拶として配布されるタオルやカレンダー。
「これがないと気まずい」
「他社はやっているのにうちだけ辞めたらどう思われるか」
という心理的なバイアスが働きます。
日本型の商習慣の特徴として、形式や前例踏襲を重視する傾向があります。
絶対的な成果が見えづらい対人的な活動こそ、「とりあえず続けよう」となりやすいものです。
「空気を読む」組織文化
製造業の多くは年功序列や長期雇用が根付く組織です。
そのため、新しい提案や変革案に対して慎重すぎる反応が多くなりがちです。
ノベルティの廃止も、合理的な議論というより
「昔からやっていることを急に変えるのは…」
「役員や上層部が何と言うか分からない」
といった空気が、実質的なブレーキになっています。
評価指標やガイドラインの明確化不足
業績やコストダウンの成果を数値で語るのが主流になった現代でも、「ノベルティコストを廃止したことで得られる効果」が定量的に評価されていない場合が多いです。
営業利益率の向上、顧客満足度への影響など、廃止によるリスクとベネフィットを組織としてしっかり可視化できていない──そこにクリアな根拠の欠如が、決断を鈍らせています。
ノベルティ廃止が難航する組織の共通点
1. 慣習的な意思決定プロセス
多層的な承認プロセスや稟議文化は、変革のスピードを大幅に遅くします。
「誰が最初に声を上げるのか」「前例がないから後回し」など、意思決定の主導権が曖昧になりがちです。
また、「社歴の長い人=決定権がある人」というヒエラルキーがあると、斬新な意見が通りにくい傾向にあります。
2. 測定しづらい「付き合い」の価値
昔からの商習慣では、「目に見えない関係性の維持」に重きを置く傾向があります。
ノベルティ廃止による、得意先やサプライヤーとの空気感・信頼関係の変化を定量評価しづらいのです。
「下手にやめて、取引関係がギスギスするのでは…」という過度なリスク回避思考が先行します。
3. 一律なルール化の困難さ
商材や取引先、業界によってノベルティの意味や価値が異なります。
「○○部署では必要だけど、△△部署では不要」となりやすく、「全社的に最適なルール」を作るのが難しいのが現実です。
そのため、統一した方針すら作らず、各部門ごとに“なあなあ”で対応してしまう組織が散見されます。
4. 経営層の無自覚さ
経営層が「ノベルティの有効性を問う」という問題意識を持っていない場合、そもそも廃止が議題に上ることがありません。
また、経営層自身が「受け取る側」としてある種の満足感を感じているケースも見受けられます。
現場からボトムアップで課題提起をしても、トップが納得しない限り改革は進まないというジレンマがあるのです。
ノベルティ廃止がもたらす本当の価値とは
コストと労力の最適化
ノベルティ関連のコストは、実は無視できない規模になりがちです。
商品自体の費用だけでなく、発注・納品管理・梱包・配送・納品書やお礼状の発行まで、現場の担当者の手間も見逃せません。
これを廃止することで、調達・購買部門や経理部門、営業部門の「隠れ工数」を劇的に削減できます。
浮いたリソースをより戦略的な施策や業務改善に振り向けることが可能になります。
サスティナビリティへの対応
使われずに廃棄されるノベルティは、環境負荷という観点でも社会的コストを生み出します。
今やグローバルサプライチェーンの一員として、ESG経営やSDGs対応が必須です。
「無駄な贈り物文化をやめ、必要な価値に資源を振り向ける企業姿勢」は、長期的な信頼構築やブランド価値向上にも繋がります。
取引先との関係性の再定義
本当に必要なのは、顔の見えない配布物ではなく、組織同士・担当者同士が対話し、理解しあうことです。
ノベルティを配らなくても円滑な関係性を築ける企業は、「フェアで本質的な付き合い」を実現できています。
それが新しい製造業のあるべき姿であり、強固なパートナーシップの基礎になるのです。
成熟した調達購買・バイヤーが目指すべき姿
「ノベルティがなくても選ばれる」信頼の醸成
調達購買担当やバイヤーは、「本当に必要なものを、最適なコストで、安定して調達する」ことがミッションです。
ノベルティや付き合いにとらわれない、透明性のある取引を体現することが、今後ますます評価されます。
「ノベルティを廃止する勇気」は、自社の価値提案や製品・サービスに自信があるという証拠にもなります。
サプライヤーが知るべきバイヤーの本音
サプライヤーとしては「ノベルティを渡さないと評価されないのでは」と不安になることもあります。
しかし、現場のバイヤーの多くは
「ノベルティに頼らず、中身や品質で勝負してほしい」
「発注や納期、品質対応を的確にやってもらう方が、よほどありがたい」
と感じています。
ノベルティで“顔を覚えてもらう”よりも、本業の信頼構築こそが取引持続のカギです。
ノベルティ廃止を推進する組織改革のヒント
1. データに基づいた事実の見える化
定量的なコスト削減効果や、業務工数の削減量を試算します。
同時に、廃止後の得意先ヒアリングなどで「実害が本当に出ているのか」も検証しましょう。
データとして示し、説得材料を蓄えることが重要です。
2. 一律廃止ではなく「例外枠」も設ける柔軟性
たとえば、全てのノベルティをゼロにしなくてもよいのです。
・新規重要顧客のみ
・創立記念など特定イベントのみ
といった絞り込み実施も効果的です。
「全部やめる」ではなく、「本当に必要な場面だけ」に限定することで、現場の反発も抑えられます。
3. トップダウンとボトムアップの融合
経営層自らがノベルティ廃止の必要性を発信しつつ、現場現実を吸い上げて進めることが重要です。
「社内文化を変えるチャンス」として発信すれば、長年染みついた昭和型商習慣からの脱却も加速されます。
まとめ:昭和的慣習の再定義から始めよう
ノベルティ廃止ができない組織には、根深い文化や慣習、数値化しにくい「安心感」への固執が共通しています。
しかし、これからの製造業は、ムダの最適化・関係性の本質化・サステナビリティなど、より本質的な価値観で成長していく必要があります。
自社やお取引先にとって「古き良き習慣」と「変わるべき習慣」を見極め、より良い業界を共に創り上げていきましょう。
ノベルティを廃止する決断は、「業界をアップデートする第一歩」に他なりません。