- お役立ち記事
- 消耗品OEMの量産移行で発生しやすいトラブルとその防止策
消耗品OEMの量産移行で発生しやすいトラブルとその防止策

目次
はじめに
消耗品OEM(相手先ブランドによる製造)の量産移行時には、設計から試作、量産、出荷の各ステージで多くのトラブルが発生しやすいのが実情です。
特にアナログな体制が色濃く残る日本の製造業では、古くからのやり方に固執するあまり、最新のトレンドや手法を取り入れられず、同じ問題を繰り返してしまう傾向が強く見られます。
今回は、現場で20年以上にわたり培った知見をベースに、リアルな現場目線で「消耗品OEMの量産移行で発生しやすいトラブル」と「その具体的な防止策」について解説します。
バイヤーを目指す方、サプライヤーとして現場と向き合う方双方に役立つ内容をまとめましたので、ぜひ実務に役立ててください。
消耗品OEM量産移行でよくあるトラブル
製品仕様の認識違いによる品質トラブル
量産移行時の最大の壁は、「仕様の思い込み」から来る品質トラブルです。
バイヤーとOEMサプライヤーの間で、寸法、公差、材質、性能、梱包などの仕様が曖昧なまま量産へ進んでしまうことで、意図しない品質問題が多発します。
特に図面の不備、現物サンプルとの微細な違い、工程能力(CP、CPK)の認識齟齬など、昭和の方法論のまま「暗黙知」で進めてしまうリスクが高いです。
納期遅延と調達トラブル
消耗品の場合、納期遅延が甚大な影響をもたらします。
部品単体は低コストであっても、生産ラインのストップにつながれば全社損失は計り知れません。
原因としては、サプライヤー側の生産計画誤りや設備障害、資材調達の遅れがあげられます。
「古くからの月次発注・FAX手配」に頼り、部品不足にも気づかないといったレガシーなやり方が根強く残っている現場も散見されます。
工程内不良の流出
トライアル中は管理が徹底されても、量産フェーズへ移行した途端、継続的な品質監視が甘くなり、工程内不良が一気に市場に流出するケースも多いです。
日報・帳票は紙ベース、現場報告も口頭・メールに依存していると、工程異常の初期兆候を見逃しやすくなります。
原価変動とコストアップ
消耗材に関しては、金属原材料や合成樹脂などの価格変動リスクも非常に大きいです。
量産開始後にコストアップ要因が発生し、バイヤー・サプライヤー間の関係が悪化することも少なくありません。
初期見積もり段階で価格改定条項や調達契約の見直しがなされていない場合、両社で責任の押し付け合いになることが多いです。
トレーサビリティ不備
納品済みロットで品質問題が発覚した際、どの工程・どの材料ロットが起因か即時特定できず、無関係な製品まで回収・返品となるリスクがあります。
消耗品は多数の品番・ロットが混在するため、トレーサビリティの仕組みが脆弱だと、後始末コストが膨らむ原因となります。
トラブルの本質を昭和と令和視点で考察
多くのトラブルは、「人の慣習に依存」「紙・口頭・現物サンプル主義」「現場改善(カイゼン)に丸投げ」といった昭和的なマインド・体制に起因します。
一方で、令和のトレンドは「デジタル化で情報共有を徹底」「エビデンス・データドリブンな工程管理」「バイヤー・サプライヤーのパートナーシップ志向」への転換です。
本質的には「相手の立場になって考える力」と「情報を正確に伝える習慣」が決定的に不足しているのが、永続的なトラブル原因といえるでしょう。
実践的な防止策とそのポイント
1.共通言語を持つための標準化とドキュメント整備
まず、バイヤー・サプライヤー双方が同じ仕様情報・手順書・検査基準を参照できるように、標準化されたドキュメントを用意しましょう。
曖昧ワード、現場言葉、図面の行間などは厳禁です。
最新のCAD/PLMデータ、電子署名付きの仕様書・工程表・検査帳票をクラウドで常時共有することが理想です。
試作時の議事録や変更履歴は、口頭・メモではなくナレッジベースに保管することで、責任の所在、経緯が明らかとなります。
2.徹底した量産立ち上げ会議・ラインオフ審査
試作→量産の切り替えタイミングでは、開発・生産・品質・購買の4部門合同で「量産立ち上げ会議(PPAPやラインオフ審査)」を徹底するべきです。
設計意図の再確認から工程能力(CPK値、歩留まり、ごみ見本)、工程FMEAレビュー、初期流動数値の現物確認まで、データと現物の両面から抜け漏れを潰します。
量産初期ロット(パイロットロット)は必ず全品検査し、「問題ゼロ」確認の後、抜き取り検査へシフトするルールが必須です。
3.サプライヤー現場の可視化と定期監査
バイヤーは書類上の管理だけでなく、実際にサプライヤー工場で生産現場・設備・在庫・人員体制を現認し、ギャップを早期に把握することが重要です。
特に調達依存度が高い場合は、定期的な工場監査・パトロールを実施し、現場の温度感(コミュニケーション課題、作業安全、人材定着率)もチェックしましょう。
必要に応じて工程改善のための技術支援、人材派遣もバイヤーの取るべき選択肢となります。
4.デジタル化・自動化の推進
工程監視、部品追跡、在庫の可視化、トレーサビリティについてはIoT、RFID、MESなど最新のデジタルツールを導入し、リアルタイムデータで異常の早期発見を可能にします。
紙・FAXに頼る慣習を脱却し、バイヤー・サプライヤー間の受発注、納期、出荷検査、仕損報告をオンライン化することで、手配ミスや情報遅延を最小限に抑えます。
5.契約段階での価格変動・品質責任範囲の明確化
契約段階から「原価変動リスク」や「瑕疵発生時の責任範囲」「返品・補償スキーム」を明記しましょう。
こうすることで、トラブル発生時の責任押し付け合いを防ぎ、両者が建設的に解決へ進む土台を作れます。
短期でなく長期パートナーシップを念頭に入れ、「ジョイントコストダウン(共に利益を生む仕組み)」を契約に盛り込み、価格面での信頼も構築することがポイントです。
バイヤー・サプライヤーそれぞれが実践すべき姿勢
バイヤーに求められる視点
バイヤーには、「価格だけ」で比較するのでなく、サプライヤーの現場マネジメント力・人材・技術力まで見極める総合力が求められます。
また、協力会社の強み弱み、現場の実態をしっかり把握し、共に問題解決にあたる「パートナー志向」がこれからの主流です。
短期間の値下げ圧力には限界があり、むしろ「どれだけWin-Win関係を築けるか」が生産安定のカギとなります。
サプライヤーに求められる視点
サプライヤー側は、「バイヤーの要求仕様・商流」を理解し、なぜその品質基準・納期設定が重要かを知ることが大切です。
現場目線で説得力ある報告・改善提案を行い、バイヤーの信頼と評価を高めることが、安定受注・信頼関係の強化につながります。
現場の問題点・課題を恥ずかしがらずに開示し、逆に「設備自動化・品質監視・工程改善」など自社の強みを積極アピールしていきましょう。
まとめ:昭和的発想から脱却し、パートナー型ものづくりへ
消耗品OEMの量産移行では、多くのトラブルが「過去の常識」「人依存の体制」「アナログな道具や情報伝達」に根差しています。
時代の変化に合わせて、「デジタル化」「情報の透明化」「責任区分・リスクコミットメントの明確化」を進め、真の意味で「バイヤー・サプライヤーが対等なパートナー」となることが必要です。
この記事で紹介した現場目線の実践策、業界動向をベースに、ぜひ皆さんの現場改善や品質/コスト競争力向上に役立ててください。
積み重ねた経験や知恵、そして時代に即した新しいアプローチで、日本のものづくりがさらに発展していくことを期待しています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)