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機械要素共通化選択法最適機能生みだす設計法最適機構設計ポイント安全対策設計留意点

目次
はじめに
製造業の現場では、製品の高機能化やコスト削減、短納期化といった要請が常に高まっています。
その中でも、機械要素の「共通化」と「最適機構設計」は、効率的なものづくりに不可欠な戦略のひとつです。
また、モダンな設計で機能性と生産性を高次元で両立させるには、安全対策にも十分配慮した設計思想が必要です。
この記事では、約20年にわたる現場での経験をもとに、共通化選択の実践ポイントや、安全性・最適機能を両立させるための機構設計のノウハウを、実務目線で詳しく解説します。
アナログな風土が根強く残る製造業界においても、次世代ものづくりを担う方々の参考となる内容をお届けします。
機械要素共通化の選択法
共通化の目的とメリット
機械要素の共通化とは、複数の製品やラインで使用する部品やユニットを標準化・統一することです。
そのメリットは多岐に渡ります。
1. 材料費や部品購入コストが減る
2. 在庫管理が効率化され、スペースや管理工数の削減につながる
3. 生産ラインや組立作業の標準化が進み、教育や作業の属人化リスクを下げられる
4. サプライヤーの選定や調達交渉においても有利に働く
これらは単なるコストダウンにとどまらず、ものづくり全体の品質や納期短縮にも良い影響を及ぼします。
共通化選択時の現場的視点
共通化をただ進めればいい、という考えは現場では通用しません。
なぜなら、共通化が裏目に出てオーバースペックや無駄なコスト増につながる事例が現実に存在するからです。
例えば、「本来は小出力で良いモーターを、大型製品との共用化のために大きなものに統一した結果、全体のコストが増えた」というケースがその典型です。
現場で大切なのは、「共通化すべき要素」と「個別最適化した方が良い要素」を論理的に仕分けることです。
以下のような観点を取り入れましょう。
- 年間使用数量が多い/複数製品で利用頻度が高い部品は共通化メリット大
- 若干のスペック差で使い分けが生じるものは本当に統一可能かラインごとの実機検証をする
- 調達ルートやサプライヤー事情を加味し、調達面でのリスクや納期遅れも精査
共通化の壁と現場での突破法
昭和期から続くアナログな現場では、設計部門と製造部門、あるいはバイヤーと設計者のあいだに「縦割り意識」が根強い場合が多いのも現実です。
結果として「設計部門は仕様通り独自設計」「購買部門は標準部品導入を推進したい」という温度差が生まれやすいのです。
共通化選択を本当に機能させるには、部門間での情報共有と現場実態の可視化が欠かせません。
「デジタルBOMの導入」「共同レビューによる部品リストの棚卸し」「サプライヤー合同会議への設計部門参加」など、組織を越えたコミュニケーション強化が重要です。
実際に私の現場では、設計会議にバイヤーを同席させ、設計変更時のサプライチェーンリスクを事前検証することで、安定調達とコストダウンを両立できました。
最適機能生みだす設計法の考え方
ニーズに応える「ちょうど良い」設計とは
設計現場でありがちなミスは「いいものを作ろうとしすぎる」ことです。
しかし、現場が本当に求めているのは、必要以上でない「適切にコントロールされた機能・品質」です。
最適な設計のためには、以下のアプローチが重要です。
- 製品ごとの用途・運用シーン・市場ニーズを徹底的にヒアリングする
- 現場作業者や保守担当者の目線で実際の使い勝手や整備性を検証する
- 試作・評価段階で過剰品質(スペックの過剰)となっていないか客観的に見直す
メーカーの設計者としては「一つ上のスペックで安全マージンをとる」のが習慣となりがちですが、そこで敢えて「顧客目線のちょうどいい設計」を選択することで、余計なコスト増や重量増、調達困難化を防げます。
設計変更時の実務的な注意点
設計段階で共通化・標準化を進めた場合、後からの設計変更(設計見直し)が発生することも少なくありません。
その際、設計変更がサプライチェーンや製造現場に与える影響を軽視しないことが肝要です。
- 設計変更内容を現場に素早く周知(伝達ミス防止、切り替えタイミングの明確化)
- 現行部品の在庫処分計画や切替生産スケジュールをあらかじめ巻き込んで策定
- サプライヤーと密に連絡し新旧切り替え時の品質保証体制のスムーズな移行
この一連のプロセスが不十分だと、現場の混乱やクレーム、納期遅延が発生しやすくなります。
設計部門と調達部門、現場担当者とのコミュニケーションこそが成功のカギです。
最適機構設計のポイント:機能・コスト・現場対応の三本柱
1. シンプルな機構が現場に優しい
私が工場長として痛感したのは「現場でトラブルが起きにくい設計」の重要性です。
設計段階で「多機能・高性能」を追求しすぎると、結果として不具合発生率やメンテナンスコストを上げてしまう場合が少なくありません。
シンプルな機構のメリットは、
- 組立工数の短縮、作業者教育の容易化
- 保守性・分解洗浄性の向上
- 設計上のバラつきリスクが減少し、品質安定度が増す
複雑なメカニカル機能やセンサーを安易に盛り込まず、「必要な範囲でシンプルにまとめる」ことがポイントです。
2. 汎用部品活用とモジュール設計
現場で長く問題なく使われる設計を目指すなら、「メーカー推奨の汎用部品」や「調達しやすい標準品」の活用がポイントです。
独自形状や特殊部品は一時的にはカスタムメリットがあっても、将来的な入手難・修理不能、コスト高騰というリスクを孕みます。
また、「モジュール化設計(ユニットごとに機能を分け交換可能にする設計思想)」を採用することで、現場の保守や改良にも柔軟に対応できます。
これは作り手・使い手・直し手すべてにメリットがあるやり方です。
3. 製造対応性と現地現物主義
最適機構設計で見落とされがちなのは「製造現場での対応性」です。
設計者が机上で良いと思っても、実際の製造現場では材料加工や組立治具、作業姿勢による問題が生じることも多くあります。
そのため、設計段階から現場作業者を巻き込み、
- 製図段階での現地現物レビューの実施(モックアップやサンプルでの工程検証)
- 治工具・専用冶具の調達や3Dプリンタによる試作検証
- 現場視点での「作りやすさ」「組付けやすさ」のフィードバック反映
を実践することが、最適機構設計の大前提となります。
安全対策設計の留意点
安全設計の基本は「未然防止」思考
品質管理や生産管理の現場では、安全対策設計が軽視された途端に事故や大きな損害が発生します。
「安全設計はコスト」ではなく「事故を防ぐ最大の投資」であると肝に銘じることが肝要です。
- 物理的ガード(カバー・フェンス)の設定
- フェールセーフ設計(1点トラブル時も全体として危険動作とならない仕組み)
- 非常停止スイッチの適正配置、アンドンシステムの活用
- ヒューマンエラー防止のためのポカヨケ機能追加
など、ちょっとした設計配慮が、安全レベルを飛躍的に向上させます。
現場でのヒヤリ・ハット情報の活用
現場では設計者が気づかないヒヤリ・ハット(事故一歩手前)情報が上がってきます。
これら実体験情報を設計部門が積極的に吸い上げ、「設計FMEA(故障モード影響分析)」などの手法に生かすことが事故低減の近道です。
私の経験上、バックヤードで報告された小さなミスが、やがて大事故につながるケースは少なくありません。
小さな声を拾いあげ反映する「現場ファースト」の設計思想が、安心・安全なものづくりの根幹です。
おわりに:次世代ものづくりのために
機械要素共通化選択法・最適機構設計・安全設計は、現場経験に裏打ちされた実践力が求められます。
昭和時代から脱却し、部門横断で柔軟に協働する「現場目線」を持ち続けることが、真の競争力を生み出します。
この記事が、製造業に携わる方はもちろん、調達・バイヤー志望の方やサプライヤーの皆さまにとって、日々の業務改善や新しいヒントにつながれば幸いです。
私たち現場の叡智を次代に継承し、ともに未来のものづくりを支えていきましょう。
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