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契約更新時の価格見直しを後回しにして損失を出す企業の特徴

目次
はじめに:製造業でよくある契約更新時の“値決め”の重要性
製造業の現場では、調達購買部門が取引先との契約を定期的に見直し、更新するプロセスが存在します。
その際、特に重要となるのが「価格見直し」のタイミングです。
しかし、日々の業務に追われる中で、価格交渉・見直しを後回しにし、結果として損失を出してしまう企業が多いのもまた事実です。
私は20年以上の現場経験から、「どうして多くの現場が価格見直しを後回しにし、気付けば多額のコスト増へとつながってしまうのか?」という点に疑問を感じてきました。
本記事では、契約更新時の価格見直しを後回しにしてしまう企業の特徴と、それによる損失がどのように発生するのかを解説します。
また、昭和的アナログ産業構造の中にある問題点、そして「バイヤー」「サプライヤー」双方のリアルな心理も掘り下げます。
製造業に携わる方、バイヤー志望の方、サプライヤーとしてバイヤーの思いを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
契約更新の“価格見直し”を後回しにする現場の実態
1. 日常業務優先で見直し作業を「面倒」と感じている
製造現場の調達担当者の多くは、案件ごとの発注、納期交渉、不良対応など、日々のルーティン業務に追われています。
「価格見直しを検討し、仕入先と交渉する」という作業は、確かに通常業務より頭も神経もエネルギーも使います。
つい、「次の契約更新タイミングで見直せばいいか」と後回しになりがちです。
忙しさが価格交渉の意思決定を鈍らせているのが実情です。
2. 長年の信頼関係が「現状維持バイアス」になる
昭和からのアナログ業界あるあるですが、「このサプライヤーとは長く付き合っているから」「前任者からの取引を踏襲しているから」という理由で、価格見直し交渉を控えてしまうパターンも多いです。
サプライヤーから「○○さんにはこれまで頑張ってきたし、今後も続けたい」と言われると断れず、つい惰性的に契約更新してしまいます。
「値段を下げてくれとは言い出しにくい」「多少高くてもトラブルのない現状が大事」と考えてしまう心理的バリアが、会社全体のコスト構造を悪化させる原因になっています。
3. 市場情報・原材料価格変動のキャッチアップ不足
現場では、「原材料価格の変動」や「為替動向」が背景となっている値上げ要請を鵜呑みにしやすいです。
一方で、逆に原材料が下がっている状況でも、「適正価格に戻す」交渉を忘れたり、情報収集ができていなかったりすることも少なくありません。
見積もりの根拠となる市場情報をアップデートせず、ベンチマーク意識が弱いと、“払わなくていいコスト”を漫然と負担し、競争力を失う結果となってしまいます。
損失はゆっくりだが確実に広がる:現場“あるある”の事例
1. 数年据え置き価格で数千万円規模の損失
例えば、某部品供給メーカーのA社。
5年前に取引が始まった際の初期価格が、「そのまま更新ごとに据え置き」で契約を継続していました。
市場では徐々に原材料価格が下落していたにもかかわらず、A社は価格改定交渉をせずに放置。
5年後、取引累計でみると2,000万円以上の損失が生まれていました。
2. 高値づかみ→コスト競争力低下で商談失注
別のケースでは、主要サプライヤーからの仕入単価が他社水準より10%高い状況で放置していたため、最終製品の原価が下がらず、大手顧客の新規案件を競合にさらわれる、という事態につながりました。
このように「小さな後回し」が最終的にはビジネスチャンス自体を失うリスクを孕んでいます。
3. 価格見直しを忘れたことでサプライチェーン全体が硬直化
昭和時代から付き合いのある固定サプライヤーばかりを使い続けたことで、業界の価格相場から逸脱し、サプライチェーン自体が硬直化するケースがあります。
特に自動車部品業界や精密機械分野で多く見られる現象です。
取引先との信頼関係やアナログな商習慣を重視するあまり、価格交渉の「習慣」が消え、変化に対応できなくなるのです。
なぜ企業は価格見直しを後回しにしてしまうのか?
1. 日本特有の“和”の文化と調達現場のメンタリティ
日本の製造業、とりわけ中堅・中小企業に根付く「和を以て貴しとなす」文化は、調達・購買の意思決定にも影響します。
サプライヤー側も「うちは昔から御社とは仲良くやってますから」と言う。
それに対し、「無理な価格交渉で波風を立てたくない」と現状維持を選ぶ担当者が多い傾向があります。
また、職人気質が強い業界ほど「仕入価格よりモノづくりそのものへのプライド」を優先しがちです。
2. KGI/KPI管理の未徹底と現場裁量主義の問題
欧米に比べ、日本の製造業では「調達コストダウン」に対する明確なKGI/KPI管理が弱く、調達担当者個々人の“属人的な判断”に依存しているケースが見受けられます。
役割分担や権限移譲が不明確なまま「持ち場は自分でなんとかしろ」という現場裁量主義が蔓延しているため、客観的・長期的視点での価格見直しが実行されづらいのです。
3. IT活用の後れによるコスト情報のブラックボックス化
近年、ERPや調達管理システムの整備が進みましたが、昭和的アナログ運用に止まっている企業も多く存在します。
紙やエクセルの履歴のみで契約履歴を追い、価格履歴や市況データとの照合が難しい。
「何年も続く複数サプライヤーの各案件を一つひとつ手動で洗い出すのは非現実的」という現場の声が、見直し遅れの大きな根本要因です。
バイヤー視点とサプライヤー視点の“腹の中”
バイヤー(買い手)側の本音と苦悩
バイヤーの多くは「本当は原価低減を実現したい」。
しかし、関係悪化を恐れて価格交渉に踏み切れなかったり、十分な情報・権限がなく上司や他部門からの支援も期待できなかったりすることが多いです。
また、新規仕入先開拓やベンチマーク(相見積もり)を実施しづらい文化や手間を理由に、「結局、今のままでいいや」となってしまいます。
サプライヤー(売り手)側の本音と戦略
一方、サプライヤー側も「値下げ交渉が来ないなら現状維持で収益確保できる」と、むしろ価格変更フリーズを歓迎するケースが一般的です。
特に、代替提案やミニマムコスト見直し提案などを自主的に持ち込む企業はごく少数です。
実際には、ちょっとした原材料高騰や円安をきっかけに値上げ交渉のみ活発になる傾向が続いています。
損失回避のための“攻め”の価格見直し術
1. IT/システムの積極導入で「自動気付き」体制を作る
最新の調達管理システムやAIを使い、「契約期間満了1カ月前アラート」や「市場価格連動アラート」を自動で受け取れる仕組みを構築しましょう。
Excel以上の情報武装をすることで、自社独自のベンチマーク価格や取引先ごとの価格変動も一目瞭然になります。
2. “ベンチマーク意識”を現場に根付かせる
同業他社、別エリアのサプライヤー、異業種交流会などから情報を仕入れ、「うちは他社より割高/割安」といった社内意識を醸成しましょう。
ベンチマーク意識が根付けば、現場から自然と価格見直しの提案・相談も活発になります。
3. 交渉情報のナレッジ共有・横展開
「いつ・どんな交渉をし・どんな成果や難航要因があったか」というナレッジを社内共有・ナレッジマネジメントすることが重要です。
属人的な成功例・失敗例を蓄積・分析し、価格見直し交渉の引き出しを増やすことで現場のパフォーマンスが確実に向上します。
まとめ: “見直し後回し”は企業の未来に響く
製造業における契約更新時の価格見直しは、「面倒なルーチン」や「現状維持」といった理由で後回しにして良いものではありません。
中長期的には、適正価格での契約見直しをきちんと実行できる企業ほど、コスト競争力と商機獲得力を増す傾向が強くなっています。
アナログな業界環境であっても、ちょっとした意識変革・IT化やベンチマーク意識の共有により、新たな地平線を拓くことは必ず出来ます。
損失を未然に防ぐため、まずは“契約更新のたびに価格見直しを行う”習慣化から始めましょう。
現場発の小さなアクションが、企業の未来を大きく変える一歩となります。
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