投稿日:2025年11月3日

スニーカーのミッドソール素材に使われるEVAとPUの特性比較

スニーカーのミッドソール素材に使われるEVAとPUの特性比較

スニーカーの性能や快適性を大きく左右する要素のひとつが、ミッドソール素材です。
その中でもEVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)とPU(ポリウレタン)は、世界中のスニーカーメーカーが長年にわたり採用し続けてきた代表的な素材です。
本記事では、これら二つの素材の特性を実際の製造現場目線で比較し、さらに現場のリアルな課題や今後の業界動向も踏まえて、どのような観点で最適な選択がなされているのかを深掘りします。

EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)とは

EVAの基本概要

EVAはエチレンと酢酸ビニルを重合させて作る樹脂です。
発泡させることによって、高いクッション性と軽量性を持つフォーム素材としてミッドソールに採用されています。
スニーカーだけでなく、サンダルやスポーツ用シューズ、さらには断熱材や梱包資材など幅広い用途で使われている素材です。

EVAの主な特性

– 軽量である
– クッション性が良い
– 加工性・成形性に優れる
– 寒冷地でも硬くなりにくい
– 吸水性が低い(金型から外したときの寸法安定性が高い)

EVAはそのままでは柔らかすぎるため、発泡倍率の調整や、他の素材との複合化によって機能性を高めることが一般的です。
また、カーボンやゴム材と比較してもコストパフォーマンスに優れており、現在でもエントリーモデルからハイエンドモデルまで幅広い層で採用されています。

現場から見たEVAのメリット・デメリット

工場現場での視点から見ると、EVAは発泡時の物性コントロールが比較的容易であり、不良率も低いというメリットがあります。
特に自動成型ラインの導入有無に関わらず、比較的短いサイクルタイムで量産できる点は生産管理面でも高評価です。

一方、クッション性が高い分、長期間の圧縮や繰り返し荷重を受けることで「ヘタリ」が起きやすく、耐久性にやや課題が残ります。
高級モデルに求められる反発性や耐久性の水準には到達しにくい面があります。

PU(ポリウレタン)とは

PUの基本概要

PUはイソシアネート系とポリオール系の成分からなる高分子素材であり、発泡構造にすることで高反発・柔軟性・耐久性といった特性を引き出せます。
スニーカーのほか、家具や車両シート、工業用パッキンなど、耐久性と健康安全性が必要とされる用途に広く用いられています。

PUの主な特性

– 高い耐久性と反発弾性
– 長期間の使用によるヘタリに強い
– 経年劣化しにくい(特に高級PUの場合)
– 弾力があり履き心地が良い
– EVAよりも比重が高く、やや重い
– コストが高め

スニーカーにおいては、着地時の衝撃吸収と、蹴り出し時の反発エネルギーの両立を実現できるため、ランニングやスポーツパフォーマンスモデルに多く採用されています。

現場から見たPUのメリット・デメリット

成形に温度や湿度管理が必要で、不良発生率がEVAより高い傾向があります。
また、工場ラインの保守管理においても発泡剤や原材料調整に熟練したオペレーターが不可欠となるため、安定生産のためには現場力の底上げが不可欠です。

加えて、金型や設備投資コストもEVAより高額となりやすく、量産時の材料コスト上昇も無視できません。
ただし、製品のブランド価値や高機能を求める場合には、PUの貢献度はかなり高いと言えます。

昭和の常識とアナログなものづくり現場との対比

現場主義と材料選定プロセスの現実

かつて日本の製造業、特に大手スポーツシューズメーカーでは「使い慣れたEVA中心」という昭和からの常識が根強く残っていました。
現場では「前例主義」や「材料ロス最小化」が強く意識され、実験的な素材変更は敬遠される傾向がありました。
またサプライヤー側もEVAならどのメーカーも納期や品質対応が容易なため、双方の利害が一致しやすかったのです。

しかし、近年のグローバル競争、サステナブル志向、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れ、そして業界をリードする海外メーカーの積極的な素材チャレンジによって、旧来のアナログ体質からの脱却が進みつつあります。

EVAとPUの材料選定における現代的な考え方

材料選定の際には現場主義だけでなく、バイヤーとしての調達目線、製品設計側の設計意図、最終消費者の使い勝手までを横断的に考慮することが求められます。
実際には以下のような観点が評価軸となります。

– ライフサイクルコスト
– サプライチェーンの安定性
– SDGsや環境対応(EVAはリサイクル対応しやすい、PUは環境負荷が懸念される)
– カスタマイズや新規機能追加の柔軟性
– 品質管理とトレーサビリティ対応力
このような総合判断のもと、安易な惰性によるEVA一辺倒の意思決定は徐々に見直されてきています。

バイヤー目線でのサプライヤー選定と期待

価格競争から付加価値競争への変化

以前はEVAの安定供給力とコスト競争力が最大の評価ポイントでした。
しかし、製造業全体の付加価値重視の流れや、ブランド差別化の重要性の高まりを受けて、バイヤーは単に「安く速く」ではなく、より高い品質・機能や環境への配慮、さらには共創による商品開発力を重視し始めています。

サプライヤー側も単なる部材提供者ではなく、素材研究やミッドソールの設計段階から入り込む“パートナー”として期待されています。
例えば再生EVAなどのサステナブル素材や、独自発泡技術・添加剤による新機能提案などは大きな武器となります。

サプライチェーンリスクとBCP(事業継続計画)

ここ数年、原材料調達の不安定化やサプライヤー倒産・災害リスクに備えたBCP対応の重要性が再認識されました。
そのため、バイヤーはEVAとPUを単純に二者択一で選ぶのではなく、複数材料採用や複数サプライヤーによるマルチソーシング政策も推進しています。
安定供給力や品質保証体制の強化こそが、素材メーカーに求められる今後のコアバリューとなるでしょう。

今後のEVA・PUミッドソール業界動向と新展開

環境対応とイノベーションの波

ミッドソール分野も例外なく、サステナブル素材の研究開発が急加速しています。
バイオベースEVAやリサイクルPUの登場、グリーンケミストリーによる低環境負荷発泡剤の活用など、従来の「安定供給重視」から「持続可能性重視」へのパラダイムシフトが起きています。

また、デジタルツインやシミュレーション設計技術の進化により、材料物性と製品パフォーマンスの事前検証精度が格段に向上したことも、アナログ思想からの脱却を強く後押ししています。

消費者ニーズの多様化とカスタマイゼーション

今や消費者は「履き心地」や「デザイン」だけでなく、「環境にやさしい」「自分だけの特注モデル」など多様な要求を持っています。
こうしたニーズに応えるため、EVAとPUのハイブリッド構造や、新規複合素材の導入、AIによるパーソナライズ設計の現場導入も進んでいます。

まとめ

EVAとPU、どちらの素材にも固有のメリットデメリットがあり、その選択は単に「材料特性」だけでなく、調達・生産・設計・消費者までを見据えた全社的な最適化の中で行われます。
アナログで旧来型の現場主義だけでは、もはやグローバル競争に勝てない時代です。
今後はサステナビリティや付加価値追求、さらには現場の知恵とデジタルの融合による新たなものづくりの地平線が広がっています。

スニーカーのミッドソール素材一つをとっても、EVAとPUを軸に多角的・ラテラルな視点から考え直すことが、日本の製造業全体のレジリエンスと競争力向上への重要な第一歩になるのです。

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