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決済条件の比較TT/LC/DP/DA:キャッシュとリスクを両立させる設計

目次
はじめに:製造業における決済条件の重要性
製造業において取引先との信頼関係は事業の基盤ですが、同時に「決済条件」は経営の安定性やキャッシュフローに直結する重要なファクターです。
時代が進む中でも、昭和時代から根強く残る商習慣やアナログな合意形成が、現場に複雑な「しきたり」や「リスク」として残っています。
本記事ではTT(電信送金決済)、LC(信用状付決済)、DP(書類渡し支払)、DA(引受渡し支払)という国際取引の主な決済条件の特徴を、20年以上の現場経験に基づく実践目線で詳しく解説します。
キャッシュフローの最適化とリスクヘッジの両立方法、バイヤーやサプライヤーの具体的な立場と心理、そして最新業界動向まで深く掘り下げていきます。
決済条件が経営に及ぼす本質的な影響
経理や財務に詳しくない方でも、決済条件が企業の存続や信用規模に大きく影響することを本能的に理解されているでしょう。
特に製造業は、
– 原材料仕入れから生産・納品・入金まで長いサイクル
– サプライヤー・顧客・銀行との三角関係
– 資金繰りのひっ迫や在庫負担のバランス
という「川上から川下」まで複雑に絡み合ったビジネスモデルです。
決済条件一つ変わるだけで、会社全体のキャッシュフローが激変します。では、それぞれの決済条件にはどのような特徴とリスクがあるのでしょうか。
TT(Telegraphic Transfer:電信送金)決済の特徴と現場の本音
TT決済とは何か
リードタイムが短く、相手先の信用リスクに依存する「アナログ業界でも徐々に浸透しつつある」決済方法です。
注文者(バイヤー)が送金し、サプライヤーが着金確認後に出荷するか、もしくは出荷時点で送金されます。つまり、
– 先払(Advance TT)
– 後払(TT at sight)※出荷書類と引換え
などがあります。
現場での具体的メリット・デメリット
メリット
– 手続きが簡素
– 決済スピードが速い
– 信用状など発行コストが不要
デメリット
– 先払側(バイヤー)は資金拘束と未納リスク
– 後払側(サプライヤー)は未回収リスク
大手メーカーでは、先払を強く要求する海外サプライヤーも増えており、「どちらが主導権を握るか」で激しい綱引きが現場で日常的に行われています。
LC(Letter of Credit:信用状付決済)という「昔ながら」の鉄壁スキーム
LC決済とは何か
バイヤーの銀行(開設銀行)がサプライヤーの銀行(通知銀行)に対して「一定条件を満たした書類が期日までに揃えば、必ずその代金を支払います」と約束する仕組みです。
確かにアナログで「敷居が高い」面もありますが、昭和から続く製造業、とくに長期安定取引や高額商材で今も根強く利用されています。
LC決済の現場的考察
メリット
– 書類の完全性次第で確実に回収・支払される
– 高リスク国や初取引には特に安心
デメリット
– 書類作成の手間とコストが大きい
– 銀行手数料が高額
– 万一書類不備だと決済不能
現場レベルでは「紙一枚の違いで決済不可」となるため、とにかく資料の作りこみとチェック体制がカギとなります。
DP(Documents against Payment)/DA(Documents against Acceptance)のリアルな位置づけ
DP(D/P:書類渡し支払)
サプライヤーの銀行からバイヤーへ「船荷証券などの書類」を渡す際、その場で支払い(送金)してはじめて書類を受け取れる方式です。
売り手・買い手の相互信頼が一定以上なければ成立しづらいですが、TTとLCの中間的メリット・リスクを両立しています。
DA(D/A:引受渡し支払)
サプライヤーは「代金支払を約束する為替手形」をバイヤーに引き受けさせ、一定期限に支払いが行われます。
現場での敬遠されやすさは否定できません。未回収リスクかつ、バイヤーが資金力でサプライヤーに圧力を掛けやすいからです。
DP/DAの「現場あるある」
– 新興国や中小サプライヤーが交渉力を上げる場合に活用
– 取引実績のある関係性でのみ使用されやすい
– 与信管理の強化とセットで使用する企業が多い
現場目線で語る、キャッシュフローとリスクのバランス設計
自社(バイヤー・サプライヤー)の立場別戦略
バイヤー側は、
– できるだけ支払いサイトを長く取りたい(キャッシュ流出抑制)
– でも、サプライヤーからの信頼失墜や調達遅延は避けたい
サプライヤー側は、
– キャッシュ回収をなるべく早め、貸倒リスクをゼロに近付けたい
– 取引の継続性・規模を重視した妥協やトレードオフも必要
このバランス設計の妙が、現場での「駆け引き」や「条件交渉」の正念場となるのです。
経営管理者から見る決済条件の最適化
調達部門・営業部門・経理部門が一丸となり、自社の資金繰り、取引先の信用度、そして業界慣行を「多層的」に考慮することがキャッシュフロー最適化のポイントです。
現場に根付くアナログ慣習や「ウチの伝統」をむやみに変えず、改善の余地がどこにあるかラテラルシンキングで見つめ直しましょう。
世界・日本の業界動向に見る「決済条件」はどう変わるか
グローバル化・デジタル化の潮流と現場ギャップ
近年、
– 決済プラットフォームやFintechサービスの発達
– AI・電子契約・ブロックチェーン技術の導入
などで、決済条件は従来より透明でスピーディになっています。
一方で、日本国内やアジア市場では「契約書によらず口約束」「上意下達で交渉余地が少ない」という文化も根強く、デジタル化とのギャップが現場にはまだ残っています。
製造業バイヤー像の多様化とサプライヤーの対応
従来「大手一強」の時代に比べ、今や中小・ベンチャー企業、越境EC型バイヤーなどプレイヤーは多様化しています。
サプライヤーは相手の交渉力や資金力に目配りしながら、TT・LC・DP・DAをシナリオに応じて使い分ける柔軟性がより求められています。
ラテラルシンキングで考える決済条件の「新たな常識」と実践例
新時代の現場担当者は、「交渉力×テクノロジー×従来商習慣」の3軸でイノベーションを起こすことが期待されます。
たとえば、
– 主要取引先だけLC、その他はTT決済にして回収サイクルを「ブレンド」する
– 定期的な与信審査をAIやデジタルツールで行い、人手と手間をカット
– サプライヤー側が逆提案として短期回収を条件に価格・仕様で折衷案を出す
こうした「バリアブル設計」がリスク最小化とキャッシュ効率化の双方に貢献します。
まとめ:製造業現場こそ、柔軟な決済条件設計で新時代に踏み出そう
TT、LC、DP、DA ― どの決済条件も「万能」な正解はありません。
自社の経営環境・資金繰り・パートナーの信頼度・業界標準、それに現場独自のノウハウや歴史的背景を踏まえて、柔軟に設計・アップデートし続けることがこれからの製造業の競争力です。
最後に、購買・調達現場の方、バイヤーを目指す方、サプライヤーサイドの方問わず、決済条件設計の深層を理解し、戦略的に使いこなすことで、事業の安定と発展に大きく貢献できるはずです。
昭和の「しきたり」と最新のデジタル技術、プロのラテラルシンキングで橋渡しをしながら、次世代のものづくり現場をともに切り開いていきましょう。
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