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複雑な分析をデザイン化できないことで現場が理解しない問題

目次
はじめに:製造業現場と「分析の壁」
ひと昔前、製造業の現場は熟練の職人が五感と経験で物事を判断し、仕事を回してきました。
しかし、現代の工場ではIoTやAI、DXという言葉が飛び交い、データに基づく分析結果による改善要求が日常茶飯事となっています。
それでも、多くの現場では「分析の壁」に苦しめられているのが実情です。
「こんな分析グラフを急に渡されても、何が問題なのか分からない」
「パレート図を貼り出したけれど、誰も足を止めて見ない」
「現場の声とかけ離れている資料ばかりが先行し、対策が空振りする」
これらの背景には、複雑な分析を「デザイン化」、すなわち誰でも直感的に理解できる形に咀嚼して提示できていない問題が根底にあります。
本記事では、現場目線でなぜこの問題が起きるのか、その本質、そして解決のヒントについて掘り下げます。
データ活用が進まない理由:現場とのギャップ
数字やグラフが「現場のリアル」と結びつかない
例えば不良分析一つをとっても、現場では
「また異物混入か、でもこの前も対策したし、原因が分からないよ」
「パレート図では『異物』がトップだけど、実際発生現場にはほとんど遭遇しない」
という声がよく聞かれます。
資料作成側は分かりやすさを心がけていても、使うグラフは棒グラフ・折れ線・散布図など定型化されがちです。
そこから現場の「納得感」や「なるほど感」が生まれにくいのは、データが『現場で物理的に実感できる現象・ストーリー』と結びついていないからです。
昭和から「暗黙知重視」の土壌に残る壁
世界に冠たる日本のものづくりは、現場の長年の経験や人の勘、長く受け継がれた標準に大きく依存してきました。
令和になっても、「新しい分析手法が入ってきてもピンとこない」「まずは体で覚えろ」という風土が根強く残っています。
この土壌が先端的なデータ分析の浸透を妨げ、「分析すごい=現場が分からない」の悪循環を生んでいるのです。
分析資料の「自己完結」問題
多くの場合、分析を担当するスタッフや管理職は、資料作成そのものが目的化してしまいがちです。
分析手法、カラフルなグラフ、難しい数式が並んでいるものの、「この分析結果を現場に落とし込むとこう変わる」という変化のイメージが薄くなりがちです。
現場に刺さらず、「なんか上が騒いでいる」資料認定で終わってしまうことが多いのです。
分析をデザイン化する、とは何か
「デザイン化」とは、単にグラフをカラフルにすることでも、おしゃれにレイアウトすることでもありません。
ポイントは
「現場の人が直感的に見て具体的なイメージが持てる」
「すぐ現場でアクションに移せる」
「現場の経験や感覚と、データ/分析結果がつながる」
この三点です。
ストーリーで伝える:現象から原因、そして対策へ
分析→グラフ→対策、ではなく
「なぜ・何が・どこで・どうなって・どう対応するか」
という現象からのストーリーを直感的に伝えることが重要になります。
例えば、「特定の工程で異物が多発している」問題を例にとれば、
1.ある現場の工程を分かりやすいイラストや写真で示す
2.各工程ごとに不良発生件数を工程図に重ねてビジュアル化
3.異物が多発している場所を強調し、「ここで何が起きているか」を現場スタッフと一緒に仮説立て
4.分析グラフと「目視」できる現場状況を照合
5.そのうえで、現場で実施可能なアクションを描く
という“デザインストーリー”があれば、現場の納得感が圧倒的に高くなります。
現場語で「翻訳」するのがカギ
専門用語満載の分析資料が現場で読まれないのは当然です。
できるだけ現場用語や図解、工程写真、例え話などを多用し、「あの作業が、こうなっている時に異物がつきやすい」など、イメージが湧く表現に「翻訳」する必要があります。
現場で喜ばれる「デザイン化された分析」とは
工程図+写真+発生現場ヒートマップ
「全体のどこで問題が起きているか」を俯瞰できる工程図をベースに、写真を組み合わせ、発生件数や頻度をヒートマップやアイコンで可視化します。
グラフや表よりも圧倒的に「現場のイメージ」と対応できます。
動画やイラストを活用した「見える化」
動作解析やカイゼン提案などでは、作業者の動きを動画やイラストで「見える化」することで、誰もが一目で作業の良し悪しを共有できます。
分析グラフと組み合わせ、デジタルとフィジカルの融合がポイントです。
ストーリー仕立ての分析資料
例えば「○○という不良が増加→現場調査→工程異変を発見→仮説→検証→改善」までのストーリーをマンガやイラストで表現するだけで、現場との距離が縮まります。
「数字やグラフで詰める」のではなく、全体像と現場を結ぶストーリーテリングが効果的です。
昭和的アナログ精神と「デザイン化」の融合
「暗黙知」に分析を寄り添わせる
ベテラン作業員の「ここはやばい感じがする…」という直観や、作業の『クセ』と数字的分析が衝突するのではなく、
「その感覚をうまく意味化・言語化することがデザイン化の第一歩」と捉えなおします。
現場から「普段通り」が崩れる瞬間こそ、データ分析が生きる場面です。
デジタルツールを「道具」として使う
アナログな現場でも、スマートフォンの写真や簡単な表計算ソフトならすぐに使えます。
まずは「見える化」のツールとして気軽にデジタルを使い、現場で結果を共有できる環境を作ることが大切です。
バイヤー・サプライヤー間の「分析」を橋渡し
サプライヤーがバイヤーから複雑な品質データ分析を求められることが増えています。
この時「分厚い分析資料」ではなく、「現場写真+分析グラフ+改善ストーリー」といった『デザイン化された資料』こそ、相手の理解・信頼を勝ち取るカギとなります。
自社では当たり前の内容も、相手視点で「分かりやすく噛み砕いた」資料にするのが、これからの時代の必須スキルです。
分析デザイン化の導入ステップ
1.現場担当と分析担当を「ペア」にする
資料作成や分析時、必ず現場担当者とペアを組ませ「そうそう、現場だとこうなんだよ」と指摘をもらいながら進める仕組みが有効です。
分析担当者は現場の空気感や現実課題を、現場担当者は分析の意図やデータの読み方を、それぞれ体得できます。
2.小さな「現場フィードバック」を積み上げる
デザイン化に自信がない場合も、まずは社内の掲示板や朝礼で「今月一番多かった問題と場所」を貼り出すなど、まず“反応”を得ることから始めましょう。
現場の「なぜ?」「どうしてそうなる?」の声が分析の精度と現場とのつながりを強化します。
3.シンプル&レスポンシブが原則
複雑なグラフや表を並べるより、一枚絵、シンプルな工程写真、現場に即した例え話など、「一目で分かる」「その場で行動に移せる」アウトプットを目指します。
反応に応じてブラッシュアップし、現場からの仮説や改善案を積極的に取り込みましょう。
おわりに:新たな時代に向けた分析コミュニケーション
今後、製造業ではますますデータドリブンな課題解決が求められますが、そのためには「複雑な分析」を「直感で分かるデザイン」に落とし込む力が不可欠です。
これはアナログで昭和的な現場でも、デジタル先進現場でも同じです。
バイヤーを志す人、サプライヤーの立場を強化したい人こそ「相手に伝わる・伝える」分析デザインのスキルが武器になります。
現場の経験、暗黙知、匠の勘を大切にしつつ、データ分析を橋渡しする“翻訳者”となることが、日本のものづくりの命脈を支える新たな役割なのです。
複雑な分析を「現場が理解できる」デザインに落とし込む――その一歩を、今こそ踏み出してみませんか。
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