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複雑化しすぎた設計がレビューをすり抜け不具合の温床となる課題

目次
はじめに:設計の複雑化がもたらす現場のリアル
現代の製造業では、常に高性能・高機能化が追求され、多様化するニーズに対応した製品開発が求められています。
しかし、その副作用として設計が過剰に複雑化し、設計レビューをすり抜ける不具合が現場で多発しています。
その背後には、技術進化とともに高度化する現場の要求の一方で、アナログな発想や慣習が根強く残る日本の製造業界の特性が隠れています。
本記事では、複雑化する設計が現場でどんな課題を生み出し、なぜ不具合の温床となっているのか、現場目線・実体験をまじえて解説します。
また、バイヤーやサプライヤーにとっての実践的な気づき・ヒントも提示します。
複雑化しすぎた設計が現場にもたらす4つの弊害
1. 不具合発生の温床を生むシステムの肥大化
設計の複雑化により、構成部品が増え、組み合わせのパターンも膨大になります。
構成が入り組んだ結果、設計者本人でさえ全体像を把握しきれなくなり、「想定外」「予想外」の挙動が発生します。
たとえば、制御系システムや電子回路設計では、一部のモジュール追加や仕様変更が他部品に予期せぬ影響を与えることが増えています。
現場でありがちなトラブルとしては、「ある条件下でのみ発現する不具合」「試作段階や量産初回では気づかない不良」などがあります。
これは設計レビューで全てをチェックしきれないこと、仕様書や設計書自体が煩雑・断片的で全容がつかめないことが一因です。
2. レビュー工程での「見落とし」と「時間的限界」
昭和の頃から続く日本の製造業の多くは「アナログな職人技」や「現場勘」に頼る部分が大きかったため、設計レビューでも“人海戦術”が主流でした。
しかし、現代の設計はITによる自動化・モジュール化が進み、設計者一人の頭の中では完結できないレベルに達しています。
設計レビューの現場では、膨大な設計資料や複雑化した回路図、ソフトウェアコードの詳細まで全てを、一律にチェックすることは物理的・人的に不可能です。
「納期優先(時短)」や「数値管理」だけが先行して、設計リーダーから「ここはザッと確認で」「あとは大きな問題なければ通して」…といった流れ作業・形式化が定着しやすくなります。
結果として、設計者個々の「気付き」や「疑問」は埋もれ、後々重大な品質不具合を引き起こすリスクになります。
3. 下流工程へのしわ寄せと現場の疲弊
設計上の潜在的な課題がレビューをすり抜け量産化されると、組立・検査・出荷段階で予期せぬトラブルが続発することになります。
現場管理者としての私の経験上、不良の本質的原因が「そもそもの設計不備」に帰着するケースは少なくありません。
例えば、「狭すぎる公差指示」「加工が困難な寸法」「組付け時のアクセス性無視」「現場の人的作業や自動化ラインへの配慮欠如」などです。
これらは設計段階の検討不足によるものですが、結局は現場が応急対応や手直し、追加工に追われ「なぜこんな設計になっているのか?」と現場と技術部の溝が深まる原因となります。
4. バイヤー・サプライヤー間で生じる情報の非対称性
複雑化した設計は、調達や外部への説明も難解にします。
サプライヤーに対し「この設計で間違いなく量産可能か?」と尋ねる担当バイヤーも、その設計意図や本質を深く理解しきれていないことがあります。
逆に、現場目線で生産やコスト面から設計変更を提案したいサプライヤー側が、「設計者しか意図が分からないブラックボックス仕様」に悩まされることも珍しくありません。
この構造は「発注側→受注側」という“一方通行”型コミュニケーションを生みやすく、互いの納得感・共創に基づく品質向上の機会損失につながります。
なぜ設計が複雑化するのか? 業界の根深い事情
多機能化・高性能化と「カスタマイズ偏重」
顧客の細かい要求や「他社との差別化」、グローバル競争の激化により、部品そのものに多様な機能を盛り込む傾向が強まっています。
「うちの製品にはこれが必要」 「競合他社がやっているので、うちも」 といった短絡的なモノづくり発想のまま、必要以上に機能を積み増ししてしまう企業文化は根深いものがあります。
設計者の過重負担と「属人化」
技術伝承の遅れから、ベテラン設計者にノウハウが属人化し、若手が「設計の全体像」や「なぜこの仕様になっているのか」を納得する機会が充分にありません。
設計者自身が“自分の守備範囲”を無意識に拡げ、仕様書や変更履歴の整理が後手に回ります。
その結果、「設計者以外誰も分からない構造」が量産ラインや調達バイヤーにまで波及します。
現場との対話不足と分業体制の問題
設計現場と生産現場が物理的・心理的に分断され、設計者が「現場で何が起きているか」を知らずに仕様を進めるケースが増えています。
また、システム設計・筐体設計・製造技術・調達など、各部門の連携が「手順」で終わり、本質的な意見交換が不十分になりがちです。
この“分業の落とし穴”が、設計内容の本当の妥当性を問う機会喪失に直結しています。
現場目線で考える「設計複雑化」への処方箋
1. 「設計の目的」に立ち返るレビュー文化の構築
設計の複雑化は、往々にして“作りやすさ”や“使いやすさ”、“保守・修理のしやすさ”といった観点を二の次にし、「何でも盛り込み型」になっているケースが多いです。
重要なのは、「何のための設計か」「何を最優先するか」を設計初期段階で関係者全員で共有し、その目的に立ち返ることです。
レビュー時点でも「この仕様は本当に必要か」「現場の作業負担は増えないか」など、実務レベルの指摘とチェックリスト化が必須です。
2. 多部門協業・現場対話の場を増やす
調達バイヤー・サプライヤー・生産現場・品質管理など、実際に“手を動かす人”の知恵を設計段階に取りこむ仕組みが不可欠です。
具体的には、設計検討段階から調達や生産技術の担当者が入る「ボトムアップ型チームレビュー」や、現場作業者による設計モック確認会など、“紙と画面だけではない本物の議論”の場が機能します。
3. 属人化防止のためのドキュメント整備・仕様共有
設計工程ごとに誰がどんな判断をしたのか、変更理由や根拠のトレーサビリティを、分かりやすい言葉・図解で残すことが重要です。
これにより、バイヤーやサプライヤーが仕様を理解・議論しやすく、製造現場での応用・応変対応も格段にしやすくなります。
バイヤー視点:設計複雑化が購買・外部調達に与える影響
購買バイヤーにとって、複雑な設計は「調達コスト増大」「納期・品質トラブルのリスク増」に直結します。
特に海外調達では、「設計意図が伝わらない」「現地サプライヤーが独自解釈する」ことで、思わぬ生産ストップや品質苦情の芽になりえます。
賢いバイヤーは、自分が設計・技術全般を深く理解できなくても、「どこが、なぜ複雑なのか」「現場やサプライヤーの声をどれだけ吸い上げているか」に着目し、設計部門との連携強化に努めるべきです。
また、設計簡素化や「モジュール化提案」などのコストダウン策も、従来以上にバイヤー主導で現実的な選択肢として交渉の場で提示していくことが求められます。
サプライヤー目線:バイヤーとの賢いパートナーシップ形成
サプライヤーは「お任せ・言われた通り」だけでなく、現場生産・工程設計の知見を活かした改善提案力が今後ますます重視されます。
バイヤー側が設計意図を十分把握しきれていなければ、「納品して終わり」ではなく、「この仕様だと不具合リスクあり」「現実にはこの工法+この品質でやるのが最適」といった迅速なフィードバックが信頼獲得のカギになります。
サプライヤーもまた、ドキュメントや仕様書だけでなく、現場でのテスト・検証や共同現地立ち会いを積極的に行い、本質的な品質保証活動に参画すべきです。
昭和から令和へ:変わりゆく設計・製造現場のこれから
設計複雑化の問題は一朝一夕で解決できるものではありません。
ですが、現場を知る全ての人が「現実を直視し、新しいコミュニケーション」を積み重ねることで、必ず変えていけます。
設計・購買・現場・サプライヤー、すべての立場が「最終製品の価値」「顧客目線で本当に良いものは何か」を考える。
昭和の職人技だけに頼るのではなく、デジタル技術やグローバルな多様性も活かす。
その上で、「設計は簡素に」「レビューは本質的に」「現場の知恵は最大限に」——これが、次代へ“勝てる日本のモノづくり”の道となると私は考えます。
まとめ:本当の価値を生むために、設計複雑化を見直す
複雑すぎる設計は、品質不具合やコスト、ロス増大の温床となるだけでなく、現場全体の士気低下や成長の阻害要因となります。
「設計の見直し=現場の未来創造」と捉えなおし、多様な知恵と現実に根ざした仕組み作りにチャレンジすることが、令和の製造業にとって最大の競争力となるはずです。
この記事が、設計業務に携わる方だけでなく、バイヤー、サプライヤー、現場で働く全ての方へのヒントとなり、より良いモノづくりに向けた第一歩となることを願っています。
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