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コンプレッサーで使うシール部材の材質選定とエア漏れ課題

目次
はじめに:コンプレッサーとシール部材の密接な関係
コンプレッサーは現代の製造業において不可欠な存在です。
多様な現場で活躍し続ける一方、エア漏れによるエネルギーロスや設備停止がしばしば厄介な問題として浮上します。
その根幹にあるのが「シール部材」の材質選定と管理です。
本記事では、長年現場を見てきた視点を活かし、材質ごとの特徴や、時代が進んでも根強く残る業界慣習、そして現場発想の失敗しない運用ノウハウまでを徹底解説します。
シール部材の基礎知識と役割
なぜシールが重要なのか
コンプレッサーの性能や安全性は、「エア(ガス)」の漏れを防ぐことに大きく依存しています。
実際、シール部材がわずかでも損傷すれば、段階的に効率低下 → 装置異常 → 生産ライン停止と重大な損失につながります。
特にエア漏れは、目で見つけにくく「隠れたコスト」として経営を圧迫します。
構造上のポイント
シール部材は回転軸やピストン部、接合フランジなど、摩擦・圧力差の激しい箇所に集中して配置されます。
主に「パッキン」「Oリング」「メカニカルシール」などが用いられますが、用途や要求仕様ごとに最適な材質選定が不可欠です。
材質ごとの特徴と選定のポイント
ゴム系(NBR、FKM、EPDMなど)
NBR(ニトリルゴム)は油に強く、コストも安価です。
ただし、耐熱性は中程度なため、高温用途には不向きです。
FKM(フッ素ゴム)は高温・耐薬品性に優れ、オイルフリーコンプレッサーや特殊ガスラインで多用されます。
一方、一般的なゴム材より高価格です。
EPDMは耐候性・耐熱水性を活かし主に屋外や湿気の多い工程で役立ちます。
しかし、鉱物油や有機溶剤には不向きなので注意が必要です。
樹脂系(PTFE、PEEKなど)
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は最も薬品に強く、摩擦係数も小さいため長寿命です。
ただし、柔軟性が乏しいので静的シールが主用途です。
PEEKは高強度・高耐熱性で樹脂の中では群を抜いています。
価格は高めですが、特殊用途や極限条件下での信頼性はトップクラスです。
金属系(ステンレス、ブロンズなど)
可動部のメカニカルシールや高圧部では金属部材(特にSUS系)が活躍します。
摩耗や機械的安定性を求められる場合はブロンズやハステロイ合金なども使用されますが、加工難度・コストも相応に上がります。
昭和から続くアナログ業界ならではの課題
未だに多い”経験則頼り”の材質選定
現場では「昔からこの材質だから」「前任者が使っていたから」といった守旧的な選定が意外なほど根強いです。
データよりも属人的な知識伝承が優先されやすいため、トラブルが発生した時に原因特定や再発防止策の徹底が難航します。
図面管理と実体の乖離
更新履歴が不十分なまま使われ続けている古い設計図や仕様書も多く、現品に実際使用されている材質と整合しない…という現場も珍しくありません。
これが修理時や部材購買時の大きなトラブル要因となっています。
現場・バイヤー目線で考える失敗しない材質選定術
1. 使用環境の正確な把握
「気温・湿度」「使用圧力」「圧縮空気の純度」「接触するガスや液体の種類」など、現場でのリアルな環境把握が第一歩です。
実際には想定以上の温度上昇、予測不可能な薬品混入などもあるため、余裕を見た材質選定がカギとなります。
2. ライフサイクルコストで考える
単価の安いNBRやウレタンを使い続けることは短期的にはメリットがありますが、頻繁な交換やトラブル対応、製造ラインの停止リスクを加味すると、耐用年数が長くトラブルの少ない材質(例:フッ素ゴムやPTFE)を選ぶほうが結果的にコストダウンにつながることも多いです。
3. 標準化・トレーサビリティの推進
ISOやIATFなどで求められる標準化、トレーサビリティは、材質管理にも直結します。
現品番・材質の一元管理や履歴管理を徹底することで、不適合品の特定や改善サイクルの高速化が図れます。
バイヤー目線での購買・サプライヤー管理
コスト・安定供給・品質の三本柱
バイヤーとしての最大のミッションは「QCD(品質・コスト・納期)」の最適化です。
シール部材のような消耗品では、カタログスペックだけでなく、サプライヤーのトレーサビリティ対応、安定した納期・リードタイム、および短納期時のバックアッププランも重要な評価要素です。
サプライヤーとの信頼構築と情報共有
昭和的な「任せきり購買」から一歩進み、サプライヤーと定期的な情報共有や現場見学、トラブル事例のフィードバックまで連携することで、未然のリスク回避やコストダウン提案も受けやすくなります。
グローバルサプライチェーンとリスク
世界情勢に伴う原材料価格の高騰や、サプライチェーン寸断リスクも無視できません。
複数サプライヤーの選定や予備在庫の分散化、それに応じた仕様変更の可否確認は、現代のバイヤーに求められる一歩先の視点です。
エア漏れ課題への実践的なアプローチ
定期点検とリークテストの徹底
シール部材の劣化を早期にキャッチするには、ルーティンとしてのリーク検知(石鹸水検査や超音波リークディテクターの活用)が有効です。
現場で簡単に実施できるチェックリストを整備し、運用者自身も巻き込んだ「見える化」を推進しましょう。
エア漏れは経営課題、損失の”見える化”がカギ
コンプレッサーのエア漏れを放置すると、月数十万円単位の損失が発生するケースも少なくありません。
IoTデバイスやエネルギーマネジメントシステムを活用し、「エア消費量・損失額」の定量化を行うことで、社内の危機感共有と投資判断の材料となります。
まとめ:未来を見据えた材質選定・現場改革のすすめ
コンプレッサーのシール部材は、たかが消耗品、されど生産設備の根幹を支える重要部材です。
材質選定ひとつで、現場の安全・安定性、そして企業のコスト競争力が大きく変わります。
今こそ、慣習や属人性に依存しない「理にかなった選定・管理手法」を徹底し、製造業全体の底上げを目指しましょう。
日々現場で奮闘されている皆さま、次代のバイヤーや技術者の皆さまにとって、この記事が少しでも気付きや行動のきっかけとなることを願っています。
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