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海外製造業との商談で必要な“簡潔さと論理性”

目次
はじめに:グローバル社会で必須となる“商談力”
製造業はもはや日本国内にとどまるビジネスではありません。
中国をはじめとするアジア各国、さらには欧米、東南アジア、中東など、多様な国・地域の工場やサプライヤー、バイヤーとやり取りする時代です。
このグローバルな取引の現場で今、誰もが痛感するのが「言語の壁と文化の壁」、そして「簡潔さと論理性」の重要性です。
昭和の時代、日本の製造現場には“阿吽の呼吸”や“十年ひと昔”といった暗黙の了解がありました。
しかし海外の製造業現場では、共通認識をもとにロジカルかつスピーディーに意思決定を進めることが求められています。
本記事では、20年以上の現場経験をもとに、具体的な商談シーンに即した「簡潔さと論理性」の高め方、交渉を有利に進めるコツを現場目線で解説します。
なぜ「簡潔さ」と「論理性」が求められるのか?
文化の違いが言葉を複雑にする
日本語は婉曲表現や空気を読む文化です。
一方、多くの海外ビジネスシーンでは結論ファーストが原則。
意思決定のスピードと正確性が企業競争力となるため、商談やメールでの長い前置きや曖昧な表現はかえって誤解を招きます。
例えとして、中国や東南アジアの工場とスペックや納期交渉を行う際、「できればこの期日までに…」といった遠回しな表現や、「ご都合のよい範囲で」という曖昧な依頼はビジネスの現場では意思疎通の障害となりがちです。
また、会議や資料では「何を聞かれているのか」「ゴールは何か」が一瞬で理解できるフレーミングが不可欠です。
商談に潜む“思い込み”の罠
長年続く日本的な現場慣習や「自分たちの常識」が、海外バイヤーやサプライヤーには通用しない場面が多々あります。
例えば品質に関する温度感、調達価格の根拠、工程改善の背景説明など、説明責任が突如として高まるのが海外商談ならではの特徴です。
その場当たり的な対応、社内資料の横流しでは信頼は築けません。
ロジカルシンキングで筋道立てて物事を説明し、シンプルな言葉で伝え切ることが、グローバル商談では命綱となります。
現場で実践する!“簡潔さと論理性”を磨く5つの方法
1.結論から伝える「PREP法」を身につける
海外工場やバイヤーとの商談で迷ったら、まずは「結論・理由・具体例・再度結論(PREP)」のフレームワークを活用しましょう。
商談のゴール(納期短縮なのか、コストダウンなのか、品質向上なのか)を明確に伝え、なぜそれが必要なのか、前例やデータを交えて一貫性を持たせます。
2.図や数字を積極的に活用する
言語や文化の違いを埋める最良の共通言語は、「数字」と「図解」です。
品質不良率、サイクルタイム、LOTサイズ、単価推移グラフなど、“可視化”して説明するとロスタイムや誤解が激減します。
加えて、エクセルのピボットやパワーポイントのフローチャート機能など、視覚化ツールの基本操作も武器にしましょう。
3.日・英 二言語で情報整理するクセをつける
多国籍の現場では和文だけでは通じません。
日⇔英で簡潔明瞭な表記・翻訳が必要です。
Google翻訳やDeepLの力も借りつつ、専門用語や業界慣習に注意を払いながら両言語に強くなりましょう。
「日本語しかできない購買担当者」というレッテルは、グローバル現場では即座に不利な状況を招きます。
4.Why型コミュニケーションを徹底する
現場起点の改善提案、納期遅延の謝罪、価格交渉など、あらゆるビジネスシーンで「なぜ(Why)」を大切にしましょう。
「なぜその条件が必要か」「なぜ難しいのか」「なぜこれが解決策なのか」。
しっかり理由を根拠(ファクト・数字)とセットで語ることで、相手の納得度や信頼度が格段に高まります。
5.反論・質問を歓迎するスタンスを持つ
グローバル商談では“イエスマン”ではなく、建設的な議論と相互信頼を重視します。
相手の質問や反論には正面から向き合い、論理的に再説明や追加資料を用意できる態度が評価されます。
「なぜこうしたのか?」と問われることは成長のチャンスです。
議論を恐れず、事前準備も忘れずに臨みましょう。
よくあるNG商談シーンとその解決策
“曖昧な日本語メール”の落とし穴
【NG例】
「御社のご提案について、本社に持ち帰って検討させていただき、追ってご連絡申し上げます」
このような定型句は、海外企業には「反応がない=NO」と捉えられがちです。
また、どのタイミングで誰からどう連絡が来るのかが不明確です。
【改善例】
「Thank you for your proposal. We will discuss internally and give you our feedback by June 10th.」
(貴社ご提案は社内で検討し、6月10日までにご回答します)
「いつ、誰が、何をするのか」を簡潔に添えることで、次のアクションが明確になります。
“日本式の品質報告書”が理解されない
【NG例】
A3用紙一枚に美しい議事録や対策一覧を書いても、現地工場のエンジニアやバイヤーには重要点が伝わらないことがあります。
【改善例】
「Issue(課題)・Background(背景)・Countermeasure(対策)・Deadline(納期)」の4項目を英語&図解でまとめる
極力シンプルな単語を使い、説明責任(Accountability)を重視した構成にします。
サプライヤー&バイヤー、双方に必要な“相互理解”
バイヤーが持つ視点と優先順位
海外の調達・購買担当者は「品質」「価格」「納期」「安定供給」「コンプライアンス」「リスク回避」など、多面的な評価軸を持っています。
自社工場の都合や各国法規制など、複雑な社内事情がある場合も少なくありません。
「なぜ値下げ要請が来るのか」「なぜ急にスペック変更を要求するのか」など、背景にあるロジックや現場の制約も理解することが、長期的な信頼構築につながります。
サプライヤーが知っておくべき“バイヤーの本音”
サプライヤー側にとっても“相手は何を重視しているのか”を正確につかみ、論理的な説明資料やタイムリーな進捗報告、チャレンジングな改善提案などをアクションとして示すことが不可欠です。
逆に「空気を読む」「言われたことしかやらない」「反論しない」姿勢は評価されません。
むしろ主体性や問題提起の積極性が、日本以上に求められるといってよいでしょう。
アナログ業界から脱却、論理的思考で生き残るために
いまだに「ハンコ文化」や「FAX発注」が残る製造現場もあるかもしれません。
しかし、デジタル化・グローバル化の流れは不可逆です。
今この瞬間も、世界中の競合企業がスピーディかつ論理的な商談力でサプライチェーンの新たな地平を切り開いています。
時代に合わせた「簡潔さと論理性」は、商談や交渉のみにとどまりません。
問題発見から課題解決、現場改善まで、すべてに通じる“現場起点のビジネス力”です。
昭和の常識や「なんとなく」「慣習だから」といった曖昧さを脱し、筋道だった思考と交渉術を身につけることが、これからの製造業プロフェッショナルに必要不可欠となっています。
まとめ:世界基準に通用する人材への道
海外製造業との商談で成果を出したい、グローバルバイヤーや現場管理者を目指したい、という方々には、“簡潔さと論理性”をぜひ日常業務から磨いてほしいと思います。
「なぜを問う力」「根拠を持って説明する力」「結論から端的に伝える力」。
この3つを主軸に、データや図、二言語表記といった現実的な手段も活用すれば、どの国・どの現場でも通用する実践力が身につきます。
最後に――日本のものづくりは世界に誇れる技術と現場力を持っています。
その“現場知”を、合理的に、論理的に、そして端的に、グローバル市場で堂々と発信していきましょう。
あなたの現場から世界が変わっていきます。
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