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油中異物が摺動部材を摩耗させる理由

目次
はじめに:油中異物と摺動部材の関係性
製造業の現場では、機械装置の長寿命化と安定稼働は最重要テーマの一つです。
中でも“摺動部材”は各種装置の心臓部であり、その耐摩耗性やトラブルの抑制が生産性や信頼性へ大きく直結します。
摺動部材の摩耗要因として、多くの現場で見逃せないのが「油中異物」による攻撃です。
油といえば潤滑、すなわち摩耗抑制のために供給されるものですが、なぜこの油中に混入した異物が問題となるのでしょうか。
昭和から続くアナログな現場実務も踏まえつつ、バイヤーやサプライヤー、現場従事者の方々へその理由と対策を徹底的に掘り下げてご紹介します。
油中異物とは何か?
油中異物の正体と発生要因
油中異物とは、潤滑油や作動油などに混入する本来“油”と機械に必要のない微粒子や水分、化学的な汚染物質の総称です。
その代表的な存在は次の通りです。
– 金属摩耗粉(摺動や衝撃によって削り出された鉄粉、銅粉など)
– 塵・砂、外部環境からの微細な固形異物
– プラスチックやシール、パッキンのかけら
– 水分、冷却水由来の混入
– 酸化生成物やスラッジなどの劣化油成分
これら異物は装置の組立時・オーバーホール時の清掃不足、油補給時の管理不備、シール部の劣化等によって容易に油中に紛れ込みます。
現場では“ごみがちょっと入ったくらい”と軽視されがちですが、この小さな異物が摺動部にとっては大敵となるのです。
摺動部材の素材と潤滑油の役割
摺動部材の種類
摺動部材は、機械の回転部や直線運動部において動きの滑らかさを担保するための重要部分です。
例えばベアリング、ギア、カム、スライドレール、シリンダー、ピストンリングなどが該当します。
これらは鋼、アルミ合金、銅合金、焼結金属、さらには樹脂やセラミックスなど多様な材質が使われています。
部材ごとの硬度や表面性状によって、油中異物の影響度も異なります。
潤滑油の基本的な働き
潤滑油は、摺動面間に薄い油膜を形成し「金属同士の直接接触を防ぐ」ことが本来の役割です。
摩擦や発熱を減らし、錆や腐食も防ぎます。
また油が流れることで生じる「フラッシング効果」によって、発生した摩耗粉や微細な異物を洗い流す自浄作用も担っています。
一方、油がその役割を果たせば果たすほど、異物を“拾い上げて”運搬し、全摺動部へと知らず知らず運んでしまう危険性もはらんでいます。
油中異物が摺動部材を摩耗させる理由
1.アブレッシブ摩耗(粒子によるこすり摩耗)
もっともポピュラーで、かつ深刻な問題が「アブレッシブ摩耗」です。
摺動部の表面同士が油を介して滑るとき、本来なら油膜で守られているため金属同士が直接触れ合うことはありません。
しかし油中に硬い異物(金属粉、シリカ、砂粒など)が混入していると、これが“研磨材”のごとく摺動面に引きずり込まれ、表面を削り取ってしまいます。
オイルに含まれる異物粒径は数μm~数 10μm程度でも、摺動部の設計上のクリアランスより大きければ、油膜を容易に破壊して局所的な接触摩耗を招きます。
現場では「ベアリングで謎のスジ傷が発生した」「ギアの山が均等に削れている」といった現象に悩まされがちですが、ほとんどの原因が油中異物によるアブレッシブ摩耗と考えてよいでしょう。
2.ピッティングやフレッティング損傷の促進
摺動部のミクロな表面には微細な凹凸(粗さ)が存在します。
油中異物がこうした部分に入り込むと局所的な圧力が生じ、局部表面破壊や微小なクラック(割れ・穴=ピッティング)を発生させます。
さらに油中異物が運ばれることにより、フレッティング(微振動による摩耗損傷)が促進され、最悪の場合にはスティック・スリップ現象、異音、焼付きなどの重大トラブルに至るケースも少なくありません。
3.潤滑油の劣化促進とスラッジ生成
異物は単に物理的な攻撃だけでなく、化学的な損傷や潤滑油自体の劣化も促進します。
例えば水分が油中に混入すると油の乳化、酸化、さらにはサビの発生を引き起こします。
また金属粉やスラッジが蓄積するとオイルの粘度や性能が低下し、油膜の切れやすい状態となり、摩耗進行のダブルパンチとなるのです。
つまり異物混入は一回限りのダメージではなく、「累積的に装置全体の寿命にじわじわ悪影響を与える」と認識することが大切です。
油中異物のリスクが強く残る“昭和的現場”の実態
なぜ異物混入が今なお多いのか
令和の時代でも、油中異物によるトラブルが根絶されないのはなぜでしょう。
その背景には、以下のような昭和から連綿と続く現場慣習が影響しています。
– 「ちょっとくらい異物が入っても、装置は頑丈だから大丈夫だろう」という経験主義
– 油の適正管理(ろ過・交換・サンプリング分析)の軽視
– 装置導入時の清浄度管理、部品洗浄の簡略化
– 簡易作業の優先(油補給時のポリバケツ使い回し、注油口の不潔さ)
– コストダウンの圧力によるオイルフィルター径の過小設計やオイルの長期使い回し
とくに古参社員が多い組織ほど、「昔からこれで良かった」と危険領域に鈍感になりがちです。
現場に根強い“油=滑るもの”という発想から一歩進んで、油が「トラブルの運び屋に化ける」リスクを、今一度認識する必要があります。
バイヤーが価値を見抜くべき油管理商材・技術
調達購買の観点:異物管理関連の優先順位
昨今の部品調達、工場設備対応において、バイヤーは“最安”だけではなく「現場のリアルな財産を守る」観点が不可欠です。
油中異物トラブルの低減という観点から価値ある製品やサービスは以下の通りです。
– 高性能オイルフィルター(濾過精度1ミクロン・持続的濾過性能)
– オイルサンプリングツール(簡易測定・定量管理体制を構築)
– クリーンポンプ・密閉オイル供給システム(異物防止のワンタッチ注油容器)
– 部品洗浄技術・油中清浄度分析会社との提携
これらの設備投資費用や管理コストを単なる経費ではなく、「長期的な装置寿命への投資」と見極める発想が欠かせません。
サプライヤー側も、“安さ”ではなく「異物混入防止によるトータルコストメリットや、生産ラインの停止リスク低減」という切り口での提案が今後は求められます。
昭和的現場こそデジタル&ラテラルシンキングの導入を
現場改善の突破口:IoT・AIの活用へ
近年では、油流路に流量監視センサーや異物粒子カウンタを設置し、リアルタイムで「油の清浄度」を見える化する現場も増えています。
またAIを活用し、異常データが出ると自動警告やメンテナンス計画の見直し提案が可能なシステムも登場しています。
今までの“経験則と感覚”に頼った油管理から、「データに基づく客観的な管理」にシフトすることで、異物による摺動部材の摩耗を未然に防ぐことができるのです。
加えて、ラテラルシンキングすなわち既成概念にとらわれず、「そもそもなぜ異物が混入するのか?」を現場内で分解し、“異物混入の源流対策”まで遡ることも有効です。
たとえば、外気の導入ルート(換気扇、開放シャッター)や作業者の持ち込み工具・手袋、部品の荷下ろし時の砂埃まで、現場全体にアンテナを張ることが重要です。
まとめ:摩耗ゼロ戦略は“油を疑う”ことから始まる
油中異物と摺動部材の摩耗というテーマは、機械工学の基礎理論だけでなく、現場での管理品質・メンテナンス文化そのものを問うテーマでもあります。
「なぜ油中の微細な異物ひとつが、重厚長大な機械装置全体の命運を左右するのか」という視点を持ち、油管理・清浄度対策を単なる“些細な作業”で終わらせないことが、これからの製造業の底力を決めます。
バイヤー、サプライヤー、技術者、一人ひとりが“ラテラルシンキング”で現場を見直すことで、次世代の強くしなやかなモノづくり現場を実現しましょう。
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