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お菓子の個包装がズレない連続ヒートシールとテンション制御

目次
はじめに|お菓子個包装の「ズレ」に悩む現場
お菓子業界における個包装のズレは、現場で働く人なら誰もが一度は頭を抱えた経験がある課題です。
きちんと揃った美しい個包装は、お客様の信頼を勝ち取る商品価値の要。
しかし、実際の現場ではラインスピード向上、素材の個体差、外気温や湿度の影響など、多彩な要因が微細なズレを生みます。
この一見単純に思える「ズレ」の制御は、調達、購買、生産管理、品質管理、そして現場の技術者が一丸となって取り組まねばならない、まさに究極の現場課題です。
本記事では、連続ヒートシール方式の個包装で「ズレない」仕組みを実現するための要点と、昭和的アナログ現場でも今日から活かせるテンション制御の具体的方法について、時代の潮流も交えて実践的な視点から詳しく解説します。
個包装の「ズレ」発生メカニズムを正しく知る
お菓子の個包装工程は、単にフィルムを封止するだけではありません。
ラミネートフィルムの給紙からトラッキング、ヒートシール、カットまで、全てが一連で流れる高速連続工程です。
このどこか一つでもズレが生じると、結果的に袋の柄とお菓子本体の位置がずれたり、シール部が歪んだり、見た目にも品質にも大問題となります。
具体的なズレの発生原因は主に以下のポイントに集約されます。
フィルム供給部のテンション不均一
フィルムが巻き戻される際の張力、すなわちテンションが不安定だと、ライン途中でフィルムが伸び縮みします。
テンション不足ではフィルムは弛み、逆に張り過ぎると素材自体が引き伸ばされて、パターンの合致が困難になります。
同期制御のズレ
フィルム送りの長さとヒートシール・カッターのタイミングが僅かでも合わないと、規定より早く・遅れてカットされてしまいます。
この問題は機械の電子的な制御だけでなく、ローラーやギアなどの摩耗も影響してきます。
外部環境の変動
特に湿度や温度が変わると、フィルムの寸法が微妙に変化します。
夏場やエアコンが不調な現場だと、朝と夕方でライン調整が必要になることも珍しくありません。
「連続ヒートシール」とは——なぜズレやすいのか?
連続ヒートシール方式は、シールの一貫生産と高速性が武器ですが、その反面「ズレ」が顕著に現れやすい仕組みでもあります。
なぜなら、シール部が常にライン上を流れ、一瞬たりとも停止しないため、一つの誤差がそのまま連鎖してしまうのです。
また、お菓子業界では色鮮やかなパッケージやキャラクター印刷が好まれるため、より位置決め精度が厳格です。
少しのズレも消費者クレームやリコールの原因となります。
テンション制御とは何か?〜アナログ現場からの脱却〜
個包装のズレ対策で最重要となるのが「テンション制御」です。
テンション制御とは、経路途中のラミネートフィルムにどれだけの張力(テンション)をかけて送り出すかを適切に維持すること。
伝統的には単なる重りやバネ、機械式の摩擦クラッチ、大径ローラーの利用など、物理的な方法で調整してきました。
しかし、今や主流となっているのはダンサーローラー、ロードセル(張力検出器)、インバーター制御モーターなどを組み併せた、より精緻な自動テンション管理システムです。
デジタル制御のメリット
・過去の手動調整に比べ、ミクロン単位でテンション調節が可能
・フィルムごとの個体差、ロットごとの巻き状態に自動で応じて最適化
・モニター上でログを追えるため、不具合原因の特定がしやすい
・AIやIoTと連携し、異常発生前に予兆監視もできる
昨今ではアナログ現場にも小規模なテンションモニターが導入されつつあり、ちょっとした投資で「ヒトによる定期調節」の属人化から脱却できる空気も漂っています。
「テンション×クロス制御」でズレゼロへ
テンション管理だけではなく、ラインのクロス制御(フィルムの横方向の位置合わせ)との合わせ技が、「ズレない個包装」の実現には不可欠です。
特に重要なのが「センサーの活用」です。
近年はマーク検出(レジマークセンサー)、サーボ制御モーターとの協調、CCDカメラによる画像処理を組み合わせる事例も増えています。
これにより、フィルムの模様や目標位置、あるいは商品そのものの位置情報をリアルタイムで取得し、瞬時に補正動作を反映できます。
しかもこれらのシステムも、かつては数千万円単位の投資が必要でしたが今や200万円程度から始められ、町工場でも導入事例が増えています。
現場目線でやるべきこと
・現状のフィルムテンションを必ず日ごとに数値化(「今日は〇〇N」など実測する)
・ズレ発生時のログ(気温、湿度、ロット、機器メンテ履歴)を残す
・社歴10年超のオペレーターの「勘ピューター」も合わせてヒアリングし、最良条件のデータベース化
・他部門(調達、品質、設備保全)と「三現主義」的現場観察を必ず行い、ライン全体の問題点を抽出
調達・購買が知っておくべきこととサプライヤーとの連携
テンション制御は設備だけの問題ではありません。
調達・購買担当者が包装フィルムのロット毎の特性、納入時の巻き乱れや芯ブレの有無、歩留まり率、そしてサプライヤーからの技術情報などにも密接に関わっています。
実際、現場が常に求めているのは「均質で優れた伸張特性」を持つフィルム素材です。
コストダウン最優先で安価品を調達すると、結局は不良率やライン停止で逆にコスト高になる事例も少なくありません。
サプライヤーの選定時は、スペックシートだけでなく「現場立ち合い検証」「実績ベースでの評価」といった手順を省略しないことが重要です。
また調達担当者自らが現場実地を歩き、「なぜズレが起こるのか」を体感することで、サプライヤーにもより精度の高い要望伝達ができるようになります。
品質管理・生産管理が果たす役割
品質管理では、客先クレームや不良報告書だけでなく、「狭義のズレ」と「広義のズレ」(あいまいな筋の乱れやパターン崩れなど)を分けてデータ収集することが大切です。
生産管理は一歩進んで、機械の稼働率や歩留まりのKPIだけを見るのではなく、不定時の微調整工数、再セット回数、廃棄ロスなども併せてPDCAを回す文化を醸成しましょう。
現場と連携したヒューマンエラー削減、5S活動の徹底も、「ズレない」システム固定の基本です。
昭和的アナログ現場「あるある」脱却へのヒント
未だに「ベテランの手間暇」と「現場の慣れ」で乗り切る工場も多いですが、「ズレない個包装」は現場目線×デジタル技術の徹底が必須です。
機械メーカー任せ、調達任せ、オペレーター任せにしない姿勢へシフトしましょう。
また、改善活動は小さく始めて小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
工場長や管理職は、「数字で語れる改善」「他部署を巻き込む横串チーム」「現場の意見を無視しないハンズオン」を徹底しましょう。
まとめ|「ズレない個包装」は現場知の結集
連続ヒートシールとテンション制御は、一見「地味」な現場課題ですが、いざ突き詰めると現場オペレーター、管理職、調達、品管、サプライヤーまで、ものづくりの全ての知が結集する、まさに「製造業の真髄」です。
アナログ的な経験値も尊重しつつ、デジタル技術や最新センサーも柔軟に取り入れ、データドリブンで改善を進める。
これこそが、今日的な製造現場が直面している最前線の知恵と言えるでしょう。
工場現場に根付いた昭和の知恵と、令和のテクノロジーの本質的な融合こそが、「ズレない個包装」を実現する最大の鍵となります。
明日の現場改善に、ぜひこの記事の実践ポイントを活かしてください。
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