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OEM商品化を進める際の契約書レビューと知財保護対策

目次
はじめに:製造業におけるOEM商品化の実際とリスク
製造業の現場では、他社ブランドの製品を自社で設計・製造し、相手先企業のブランドとして販売するOEM(Original Equipment Manufacturer)ビジネスが、今や業界の成長戦略に不可欠な選択肢となっています。
一方、OEM商品化を推進する過程では、製品開発から量産、納品、アフターサービスまで多くの課題とリスクが潜んでいます。
特に契約書のレビューと知財(知的財産)保護対策は、昭和から続く慣習的な取引手法が今なお色濃く残る業界においても、現場レベルで早急に改善すべき重要テーマです。
ここでは、実際の製造業現場目線での実践的ノウハウや、業界特有の“アナログな壁”をどう乗り越えるか、そしてこれからの時代に求められる知見について解説します。
OEM契約の基本構造とレビューの重要性
なぜ契約書が重要視されるのか
OEMは相手先企業(バイヤー)と自社(サプライヤー)の信頼関係によって成り立つビジネスです。
しかし、数千万~数億円規模の開発投資や設備投資を伴う現場では、たとえ良好な関係だったとしても、200点にも及ぶパーツや複雑な仕様の中では「言った・言わない」のトラブルや責任範囲の不明確化が起きかねません。
製品品質の不具合や、量産リードタイム遅延、知財侵害などが発生した際にも、曖昧な契約だと解決に余計な時間とコストを要します。
したがって、契約書のレビューは“万が一”を防ぐ現場の安全装置でもあり、事業成長に直結する経営課題なのです。
OEM契約書で押さえるべき主要項目とは
製造業のOEM契約において、最低限チェックすべき主要項目は以下です。
・製品仕様:仕様一覧表・設計図の明確化と差分管理
・価格条件:単価、値引き条件、リードタイム短縮時のコスト負担
・生産数量とスケジュール:最小/最大Lotや納期
・検査と品質:出荷検査方法、不良時の対応、瑕疵担保責任範囲
・知財権の帰属:設計図面、ノウハウ、意匠・特許の帰属先
・秘密保持(NDA):情報流出防止、社外協力会社との情報共有可否
・契約解除条件:解除時コスト、在庫や型の帰属
見落としがちな点として、国内外にまたがる部品調達や委託先での生産時の“下請法”や、輸出時の法規制(特定技術・データの越境移転など)も忘れてはなりません。
製造現場目線でのレビュー“あるある”
現場視点では、設計部門と購買部門で「どこまでが自社責任?」「バイヤー要求の変化の吸収範囲は?」など、契約範囲の解釈ズレが意外に多発します。
また、図面や仕様の“バージョン管理”が追いきれず、古いデータで試作を進めてしまうケースも見受けられるため、管理台帳や図番管理の徹底が必要です。
デジタル管理が遅れがちな現場ほど、ヒューマンエラーを防ぐためにも、紙ベースの帳票・押印文化から脱却し、デジタル契約・電子承認フローの導入が強く求められます。
OEMビジネスにおける知的財産保護対策のポイント
なぜ今、知財保護が急務なのか
メーカー自らが新たな設計・技術・ブランドを磨き上げたとしても、OEM先や協力会社の転職・流出・技術模倣リスクが年々高まっています。
2020年代に入り、サプライチェーンが中国・東南アジア、さらには北米・中東にまで拡大するなか、各地域での特許、意匠、商標、営業秘密の保護を“現場任せ”では済まない状況となっています。
バイヤー企業との間で「図面やノウハウの権利帰属」「共同出願時の取り決め」「製造現場で知り得た情報の利用制限」などを明記しなければ、数年後に模倣品が市場に出回ったり、元バイヤー企業から類似品開発で訴えられるリスクも依然残ります。
知財保護で現場がやるべきこと(実践論)
1. 情報の持ち出し・協力先管理
現場レベルで“必要最小限”の情報しか開示しないルール作りが肝要です。
設計図、部品表(BOM)、生産プロセスのフルセットを無条件で全委託先に渡すケースがこの業界ではまだまだ多いですが、「分割開示」「黒塗り開示」などの工夫や、持ち出し履歴の管理を徹底しましょう。
2. 秘密保持契約(NDA)の深化
社内外協力会社や派遣社員、取引先グループ会社と個別に秘密保持条項を締結するのは当然として、「退職・契約終了後も○年間は遵守」「違反時の損害賠償責任」など、現場の人事異動までカバーできるか要チェックです。
3. 特許・意匠の共同出願と管理
OEMでは「共同開発した技術はどちらが特許出願するか」「名称や商標はどちらの名義にするか」が将来の火種になりかねません。
初期契約時点から“共同出願”か“サプライヤー単独保持”とするかを明示し、出願後の維持管理や利活用方針も合意しておくことが重要です。
4. 教育・啓発と現場巡回
いくら契約でガードを固めても、現場作業者レベルで知財リテラシーが低いと、コピー部品や不正持ち出しが横行しかねません。
社内ポスターや朝礼などでの啓発、抜き打ち巡回による現場チェックを地道に続けることが“最後の防波堤”となります。
リアル現場でよくある失敗例と、その回避策
事例1:図面データの無断流用
ある工場では、試作段階での設計図データを委託先に渡したところ、委託先が別プロジェクトにも流用。のちにバイヤー企業が激怒し、委託先ごと契約打ち切りとなりました。
回避策としては、「目的限定型」でのデータ開示、「第三者利用禁止」をNDAで細かく規定し、データ利用履歴を積極的に残すITシステムの導入が必須です。
事例2:知財帰属の曖昧さと開発費の負担トラブル
部品開発コストをバイヤー・サプライヤーで一部ずつ負担したが、開発したノウハウや生産設計(製造プロセスの工夫)がどちらの知的財産になるかが事前合意されておらず、市場展開時に揉めたケースがあります。
個別の部品単位まで、費用負担と権利帰属を契約書に記載し、双方の合意をドキュメント化しておくことが不可欠です。
事例3:下請け委託先からのリークリスク
外部委託企業A社がさらにB社、C社へ再委託していた場合、現場で“どこまで情報が漏れうるか”が管理されていないと、機密情報の拡散リスクが跳ね上がります。
契約書にて「再委託時の事前承認」「再委託先にも同等の守秘義務を課す」などを盛り込むとともに、実際にA社の現場監査を実施し、現地巡回や監査報告を義務付けましょう。
アナログ文化に根ざした業界風土とデジタル化の提言
昭和世代が築いてきた取引慣習や「現場の勘」「信頼重視」での口約束・FAXや紙ベースでのやりとりが、製造業では根強く残っています。
しかし、これからの時代、数十社が絡むグローバルサプライチェーンでは、全てを“現場力”のみで制御するのは限界です。
契約管理・知財管理のデジタル化、電子契約・電子承認システムの全社導入、図面やドキュメントのクラウド管理(アクセス権限・改ざん防止)へのステップアップが、大手だけでなく中堅・中小企業においても喫緊の課題でしょう。
現場発のデジタル活用事例や、AI活用による知財侵害の兆候検知など、新たなテクノロジーの導入を“投資”と見ず、未来への“成長エンジン”と捉えるマインドセットが、次世代のものづくりには不可欠です。
まとめ:OEM契約・知財保護は「現場主導」で仕組み化を
OEM商品化を推進する際、契約書レビューや知財保護対策は、経営と現場が一体になって進めるべき最重要課題です。
昭和的な“なあなあ”や人的信頼だけに頼った時代から脱却し、数字で管理、ルールで可視化、現場での運用徹底が企業価値向上のカギとなります。
バイヤー視点・サプライヤー視点の双方に立ちつつ、現場のリアリティと課題を“自分ごと”として捉え、一社一社の創意工夫が日本製造業の未来を切り拓いていきます。
OEM事業を安全かつ健全に成長させたい方は、ぜひ今回の内容を現場改善のヒントにしてみてください。
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