投稿日:2025年8月13日

OEMとODMの使い分けで設計費を抑えながら日本品質を確保

OEMとODMを正しく使い分けることで設計費を抑え、日本品質を保つ方法

製造業が抱える「コスト」と「日本品質」のジレンマ

現在の製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
グローバル化、原材料高騰、慢性的な人手不足、品質保証体制の見直しなど課題は山積しています。
その中で、日本独自の高品質を守りつつ、いかにコストを抑えていくかは現場の大きなテーマとなっています。

特に中堅・中小メーカーでは「自社設計」で全てを進めるには設計人材や工数の不足、開発スピードへの要求、そして何より設計コストの増加が重くのしかかっています。

そうした背景の中で、OEM(Original Equipment Manufacturer)とODM(Original Design Manufacturer)の活用に改めて注目が集まっています。
これらを単なるコストダウン手法ではなく、「いかに日本品質を守りつつ活用するか」という視点で深く掘り下げていきます。

OEMとODM、それぞれの本質的な違い

OEMの本質:自社で設計・仕様を握る

OEMは「自社ブランドの商品を、外部の工場(サプライヤー)で製造してもらう」ビジネスモデルを指します。
OEMの強みは「設計・仕様」を自社主導でコントロールでき、日本の品質思想や細かなノウハウを反映しやすい点にあります。
設計セクションがしっかり存在する日系メーカーでは、「ここは自社で握る」「ここまでは外部化する」など設計責任を分割できるのもメリットです。

ODMの本質:設計そのものを委ねる

ODMは「設計・開発から製造までをサプライヤーに一気通貫でお願いする」モデルです。
つまり、自社で一から企画・設計しない分、開発スピードや初期投資(設計費用)の最小化が図れます。
逆に言えば、設計の主導権が相手方にあり、自社独自のこだわりや「日本品質」は伝え方によっては失われやすくなります。

この違いを正しく認識し、どの部分を自社で握り、どの部分を外部に頼るかをきちんと見極めることが、設計費を抑える鍵となります。

設計費用を抑えつつ日本品質を守るラテラルシンキングの視点

重要なのは「コア技術」と「非コア技術」の仕分け

設計費を削減したいと思う企業は多いですが、単純に外部丸投げでは品質が犠牲になりかねません。
ここで重要になるのは自社の「コア技術」と「非コア技術(コモディティ化した部分)」の厳密な区分です。

コア技術=顧客価値、製品差別化に直結する領域です。
ここは絶対に自社主導で設計を握る必要があります。

例えば、精密機器メーカーなら、駆動部品や制御ソフト、センシング精度などは自社で設計責任を持ちたいでしょう。
一方で、外装カバーやコネクタ、共通ユニット、簡易な金属パーツなどはODM化・OEM化しやすく、設計費も圧縮できます。

基準は「顧客がその製品を選ぶ理由となるポイント」を自問自答し、そこを死守しながら上手に外部リソースを使うことです。

昭和時代からの現場気質が持つプラスとマイナス

日本の製造現場は「全部自社でやる、丸投げは品質が悪い」という伝統が強く根付いています。
この文化が極めて高い品質と細やかなモノづくりを生み出していた一方で、設計人的資源の過多投入(オーバースペック)、コスト増、開発リードタイムの長期化を招いています。

ここで、ラテラルシンキング(水平思考)を活用し、「本当に全部を自社でやる必要があるのか?」とあえて問い直すことが、次世代の製造業の競争力を生み出します。
判断する一例を挙げます。

– 相手先の過去納入品サンプルを評価して品質が合格なら、ODM主体に任せる
– 外装品・基板アッセンブリ等、グローバルで標準化されたパーツはODM設計化
– 法規認証/安全規格/環境規制など、日本市場独自の部分だけ自社監修

昭和の気質で重要なのは「工程管理」と「最終検査」だけは一歩も譲らず自社で責任を持つという哲学です。
これを守りながら設計を見極めて委託すれば、コストも抑え、日本品質も担保できます。

バイヤー・サプライヤー双方に求められるコミュニケーション力

バイヤーの視点:安易なコストダウン交渉は逆効果

OEM・ODMを進める中で、バイヤーが往々にして陥りがちなのが「とにかく安いところに頼めばよい」「設計は丸投げ」という安易な調達姿勢です。
しかし、これは品質トラブルや納期遅延、海外工場とのコミュニケーションロスを生みやすい典型例です。

バイヤーは、「自社の要件を明確に言語化し、図面・仕様書・標準サンプルで相手にしっかり伝える」ことと、「不明点や疑問を必ず事前に共有し、早期発見、即時対応の体制を組む」ことが最重要です。

さらに、サプライヤーの得意分野、不得意分野を見極め、丸投げできる部分・自社設計を死守する部分の線引きを明確に指示する力も必要です。

サプライヤーの視点:バイヤーの「こだわり」を察知せよ

サプライヤー側としては、設計指示があいまいなまま丸投げされたときこそ、「顧客が一番重視しているのはどこか」を深く掘り下げて理解することが品質確保のカギとなります。
– 製品のデザインか
– 機能か
– コストか
– 検査工程の厳格さか

日本メーカーのバイヤーはよく「品質さえ担保されればコストが高くてもいい」と口では言いますが、設計工数やトラブル時の対応力もひそかに重視しています。
細かい仕様確認や中間報告、試作品レビューなど、日本ならではの「途中チェック」の文化を取り入れることで信頼関係も強化されます。

また、バイヤーが設計コスト削減のためODM化したい時でも、「本当に外部化してよい工程なのか?」を真剣に問い直し、疑問があれば正直にバイヤーに返す。
こうした「ラテラル」なコミュニケーションが製造現場での不良品発生率を大幅に下げることにつながります。

OEM・ODM使い分けによる業界トレンド:昭和から抜け出す「ハイブリッド設計体制」

国内における実践的な取り組み事例

例えば大手自動車部品メーカーでは、構造部品や重要部位はOEM・自社設計で厳しく管理しつつ、内装部材や周辺部品は中国・東南アジアのODMサプライヤーと連携しています。
重要なのは「階層ごとに分業」「工程別に検査基準を設定」という運用体制です。
これにより設計費トータル20%削減、製造リードタイム30%短縮といった成果が報告されています。

また、家電業界では、デザイン家電の外観や基本ユニットをODMに任せつつ、「心臓部」だけは日本設計者が図面チェック・試作レビューを徹底しています。
品質トラブルが多い製品カテゴリでは必ず「バイヤー・ODM技術者・品質管理」の三者が定例会議を行い、進捗・課題管理を徹底しています。

AI、IoT、自動化時代のOEM・ODMの進化

AIやIoTの発展により、一層コモディティ化が進む領域と、日本独自の価値を発揮しやすい領域の明確化が進んでいます。
例えばAI搭載カメラの「AI処理部分」や「クラウド連携設計」は世界のODMに任せつつ、「筐体の堅牢性」や「現場設置ノウハウ」「日本語UI」などはOEM・自社開発という具合です。

今後重要になるのは、「どこまでをODM化できるか?」と同時に「何を自社で握り、現地でどこまで日本品質を指導できるか?」という現場の管理能力です。

まとめ:OEMとODMの戦略的使い分けで日本品質とコストの最適解を

OEMとODMは単なるコストダウンのための手法ではなく、設計費削減と日本品質維持のための戦略ツールです。
求められるのは、自社の「こだわるべき部分」「コストを抑えていい部分」を明確に線引きし、パートナー選定から運用体制まで工夫し続ける現場目線の知恵です。

昭和日本の「全部自社で品質管理」から一歩進んで、ラテラルシンキングで外部リソースを使いこなす。
この発想こそが、設計費を抑えたまま日本品質を維持し、グローバル競争を勝ち抜く新しい製造業の姿といえるでしょう。

今後もOEM・ODMの進化と共に、「現場で磨かれた日本品質の目」を最大限に発揮し、持続可能なものづくりの発展に貢献していきたいです。

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