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電子部品の腐食メカニズムと防食対策

目次
はじめに:なぜ電子部品の腐食が問題になるのか
電子部品は、現代の製造業において欠かせない基盤技術です。
スマートフォンや自動車、産業用ロボット、工作機械など、あらゆる製品に実装されています。
しかし、工場現場や最終製品の現場でよく耳にするトラブルの一つが、電子部品の腐食による機能低下や故障です。
特に近年は、グローバル化による多様な環境下での運用や、省力化・高集積化の影響で部品の小型・微細化が進み、腐食のリスクがより顕在化しています。
「なぜ電子部品は腐食するのか」「どのような防食技術が有効なのか?」――本記事では、長年製造業の現場で培った知見をもとに、腐食メカニズムと防食対策について実践的な視点で詳述します。
電子部品腐食の基本メカニズム
腐食とは何か-その種類と電子部品への影響
腐食とは、金属が外部環境との化学反応や電気化学反応によって劣化し、性質や形状が損なわれる現象です。
電子部品の場合、多くはリードフレームや端子、配線パターン、はんだ部など金属部位に腐食が発生します。
主な腐食の種類は以下の通りです。
– 電気化学的腐食(ガルバニック腐食)
– 大気腐食(酸素や水分による酸化)
– 塩害腐食(塩化物イオンによるもの)
– 化学腐食(酸やアルカリ性物質の付着)
特に電子部品は小型で微細な構造を持ち、微細な腐食ですら導通不良やショート、さらには製品全体の不具合を引き起こすため、信頼性面で致命的な問題となります。
なぜ腐食が進行するのか-現場あるあるの要因分析
製造業現場でよくある要因として、
– 経済性を優先した材料選定の妥協
– 洗浄工程の不徹底
– 高湿度・塩害・粉塵などの使用環境
– フラックス残渣や人為的な手油の付着
– はんだ不良による微小隙間の発生
などがあります。
特に昭和時代から受け継がれがちな「古い工程設計」「現場まかせの管理体制」が残っている工場では、腐食要因が潜在化していることが多いのが現実です。
電子部品腐食の現状と業界動向
グローバル化・小型化トレンドと腐食リスクの高まり
グローバルサプライチェーンの常態化により、電子部品は世界中の様々な気候・環境下で使われるようになりました。
そのため、従来十分とされていた防食設計でも、未経験の環境下では新たな腐食リスクが現れることが増えています。
また、IoT機器や自動車の電子化、5Gインフラ対応による高密度実装が進むと、端子やはんだ部の微細化・薄膜化が進み、従来よりわずかな腐食でも信頼性を大きく損ないやすい構造になっています。
このような業界背景を受けて、調達バイヤーだけでなくサプライヤー側も腐食リスクと真剣に向き合い、本質的な防食施策を講じなければなりません。
昭和から引き継がれる「現場感覚」と新時代のギャップ
製造業界は、未だに「人の目・職人的勘」で工程を維持しがちな部分があります。
「今まで問題なかったから大丈夫」という昭和型の楽観に囚われると、新素材や新プロセス、海外環境での腐食トラブルに対して後手に回ります。
腐食は目に見える時間軸では徐々に進行します。
そのため、短期的な不具合として現れないとしても、中長期的な信頼性評価やPL(製造物責任)リスクを見据えた対策が今こそ重要なのです。
現場レベルでできる電子部品防食対策
1. 材料選定と表面処理の最適化
腐食対策の基本は、環境に応じた適切な材料選択と、金属表面への防食処理です。
例えば、安価な鉄系部品ではなく、耐食性に優れたステンレスやニッケルメッキ・金メッキ品の採用が有効です。
ただし、コストと相談しつつ、必要な個所への「必要最小限」というバランス感も大切です。
メッキの種類や厚みも実装環境・ライフサイクルにあわせて再検討してください。
現場でよく陥るのは「仕様書どおりで大丈夫だと思った」という思い込みです。
調達の見直しや、社内外の材料技術者との意見交換で、腐食に強い材料/表面処理のアップデートを習慣化しましょう。
2. 工程内管理の徹底と標準化
腐食は生産工程の中で“見えないうち”にリスクを孕みます。
– 部品の洗浄・乾燥の徹底
– 手袋・ピンセットの使用による油分防止
– 粉塵・塩分の多いエリアでの保管・作業不可
– 急激な温度・湿度変化の回避
といった基本動作が抜けている現場では、どれだけ良い材料を使っても腐食リスクが高まります。
現場の管理責任者は、ここを標準化マニュアルだけでなく、5S活動や日常のチェックポイントにも落とし込むと良いでしょう。
3. 設計段階での腐食リスク低減
部品設計では、なるべく湿気や異物の侵入を防ぐ構造、通気性の確保、隙間部の最小化を検討します。
– 基板実装の際、はんだ部の露出を最小限に
– 基板コーティング(コンフォーマルコート)の導入
– 密閉パッケージの採用
といった工夫は、防食に大きな効果を発揮します。
設計と製造が一体となって、社内で腐食事例のフィードバックサイクルを回すと、現場のノウハウ蓄積にもつながります。
4. 現場でのモニタリングと早期発見体制
設備の自動化が進んでも、現場での「人の観察力」も依然重要です。
– 量産立ち上げ時や季節の切り替え時に重点的な抜き取り検査
– 端子部の変色・錆・曇りなどを日常点検項目に追加
– フィールド修理時のフィードバック体制強化
腐食は軽症のうちに発見すれば、部品交換や環境改善で大きなトラブル回避につながります。
サプライヤーとバイヤーが協働すべきポイント
サプライチェーンが複雑化するほど、腐食リスクは見えにくくなります。
– サプライヤー側:自社部品の腐食実験・耐久データを積極的にバイヤーへ提供
– バイヤー側:実使用環境・想定寿命の情報をサプライヤーへフィードバック
というように、相互の知見を組み合わせて腐食対策を強化しましょう。
「現場での失敗事例」「納入後の不具合履歴」なども、情報をオープンに交換できる関係性が、最終的な品質保証力の強化につながります。
今後の腐食対策・業界動向の展望
今後は、AIやIoTセンサ技術を活用した「腐食予兆モニタリング」「異常診断」も進化しています。
加えて、グリーン材料やサステナブルな表面処理の開発も加速しています。
バイヤーや製造現場の責任者は、今の延長線だけでなく、新技術・新素材へのアンテナも高く持ちつつ、古き良き現場目線の「現物・現場・現実」を忘れず、デジタルとアナログの両面から腐食対策をアップデートしてください。
まとめ:腐食対策は“現場の知恵”と“技術進化”のかけ算
電子部品腐食は、昭和の頃から変わらない“ものづくり現場”の永遠の課題です。
一方、現代的な技術進化やサプライチェーンの複雑化によって、より一層の総合的な管理力が求められています。
製造業に携わる全ての方々が、現場の“当たり前”をゼロベースで見直し、業界の最新動向も学びつつ、腐食対策の「これから」をともに作っていくことが、製造業の継続的成長と信頼性向上のカギとなります。
今後も具体的な課題解決事例などを、経験者目線で発信していく予定ですので、ご期待ください。
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