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段ボールの強度を維持する波形設計と糊付け温度の管理

目次
はじめに:段ボールの品質が製造業の現場で果たす役割
昨今、物流の効率化やコストダウンが製造業の大きな課題となるなか、製品を守る段ボールの「強度」はますます重要性を増しています。
特に自動車や精密機器、化学薬品など高付加価値製品を扱う現場では、段ボールケースの破損や変形がクレーム・コスト損失につながる事例が後を絶ちません。
にもかかわらず、「段ボールなんてどれも同じ」と軽視されがちなのが製造現場の実情です。
しかし実は、段ボールはその波形設計や糊付け温度の「ちょっとした違い」一つで、その強度や寿命が大きく変わってきます。
本記事では、20年以上の現場経験と業界動向を踏まえ、段ボールの強度を左右する波形設計と糊付け温度管理について、実践現場目線で分かりやすく整理します。
段ボールの強度を左右する2つのポイント
コルゲート(波形)構造の意味と基本
段ボールの中身、いわゆる「なみなみ」の部分はコルゲート(波形)と呼ばれます。
このコルゲートによって、段ボールは単なる薄い紙同士の合わせではなく、「軽くて丈夫」という特性を獲得しています。
実際、段ボール箱の主な強度指標には以下のようなものがあります。
– 圧縮強度(箱の重ね耐性)
– 積み重ね耐性
– 穿刺強度(鋭利なものに耐える)
コルゲート設計は、これらの強度に直結するコア技術と言えるでしょう。
なぜいまだに“B段・C段”が主流なのか
現場目線で整理すると「B段(2.5mm前後)」と「C段(3.5mm前後)」の2種類が主流です。
– B段:波高が低いが密度が高いのでぎりぎりの強度を持たせつつ省資源化
– C段:波高が高く、つぶれにくく高い耐圧を確保
現実にはこの2種類の組み合わせ(W段=複合段)も多く、
「仕様書に書いてあるから何となくB段」といった現場も多いのが実情です。
ですが、昨今では量販品・食品はA段(5mm前後:より軽量)、精密機器や重量物はW段(B+Cなど)が必要なケースも増えてきています。
コルゲート(波形形状)の工夫で強度を維持するコツ
側面強度と平面耐圧のバランスがポイント
段ボールの波形は単純な「高さ」だけでなく、「波のピッチ(山と谷の間隔)」も極めて重要です。
・ピッチが細かく波高が高い→荷重分散の効きが良くなる(積み重ね用途向き)
・ピッチが粗く波高が低い→衝撃・穿刺耐性がアップ(物流現場向き)
サプライヤーの視点では、顧客の求める「何を守りたいのか」「どこの強度を重視するのか」をヒアリングすることがカギとなります。
波形設計の“ひずみ”対策
紙質や含水率管理が甘い場合、波形プレス時に「波がつぶれる」「復元弾性が発生しない」といった現場トラブルがしばしば発生します。
長期間保管での「型くずれ」や、「底抜け」不良の原因にもなります。
設計段階で紙質の選定(長繊維・短繊維のバランス、リサイクル比率の調整)と、水分管理、段プレス温度、ロール圧力をきちんと管理することが重要です。
工場でよくある課題は「生産速度を上げすぎて波形が乱れる」ことです。
現場では「生産効率と品質のせめぎあい」をどう現場で“勘所”として持つかが重要な差別化ポイントとなります。
糊付け温度管理が段ボール強度に与える影響
糊付け品質=“剥がれ”防止の決め手
段ボールは基本的に外側のライナー紙と、中のコルゲートを「でんぷん糊」で貼り合わせます。
このとき、「糊温度」が低すぎると糊が十分に浸透・定着せず、“剥がれ”や“はがし強度低下”の原因になります。
逆に高すぎると糊が変質し、紙焼けや段構造全体の変形(強度低下)を引き起こします。
適正温度の「数度」の違いが、目に見えない品質差を生み出しているのです。
現実の現場でよくある“温度ムラ”の対策
設備によっては加熱管の劣化、温度制御の「ずれ」、極端な気候変動による工場温度の変化など、
製造現場ではどうしても「タレ落ち」や「貼りムラ」が生じやすいのが課題です。
ここで有効なのは“現場基準”の可視化です。
– 糊付け温度の自動記録(IoT化)、日々の記録表による傾向把握
– ピークリフトや外観検査で「糊付き強度テスト」
– 不良履歴と温度ログの突合による初期異常の早期発見
昭和的な“ベテランの勘”も大事ですが、若手でも再現できる「標準化」「データ管理」が品質向上の近道になります。
最新の現場で進むIoT活用と自動制御の動き
段ボール製造工程の自動化最前線
これまで糊付けや波形プレスの調整は“職人芸”の世界でした。
しかし今ではIoT技術やセンサの進化によって
– 波高センサによる連続検査(品質のバラツキ自動補正)
– 糊温度のAI制御、フィードバック制御の導入
– 不適合品の自動排除やラインアラート
など、品質ばらつきを排除して省エネ・安定供給を両立する取り組みが加速しています。
特に“働き方改革”や“熟練工不足”対策から、大手製造業ではサプライヤーにも「品質データの提出」「工程監視システム」の導入が要請されるようになりました。
バイヤーとしては、最新のIoT設備導入状況や工程管理指標はサプライヤー選定の大きなポイントとなります。
ゼロ不良のための「見える化」事例
ある食品メーカーの例では、生産ラインに「波高・糊温度」を10秒ごとに自動記録するシステムを導入。
品質異常が発生した際、すぐに該当生産ロット・時間帯を特定し、「原因→改善→再発防止」までをデジタルで一元管理。
従来2日かかっていた調査・対応が、30分で完了するようになりました。
バイヤーの方は、こういった現場管理体制や納入トレーサビリティを確認することが、安全・安心なパートナー選定に直結します。
まとめ:現場目線で見直す「波形設計と糊付け温度管理」
段ボールの強度は、「設計(波形)」と「製造管理(糊付け温度)」の“ちょっとした違い”が品質に大きく影響します。
昭和から続くアナログな工程も、IoTとデータ管理を取り入れることで
・コストダウン
・品質安定
・市場要求への柔軟対応
という新たな競争力につなげることができます。
バイヤーやサプライヤーの方は、設計〜生産現場〜検査工程までを「点」で捉えず、「つながり」で理解することで、
真に信頼できる調達先・協力会社選びが実現できます。
これからの製造業に不可欠なのは、「モノづくりの現場力」と「データを活かしたマネジメント」の両立です。
現場から“品質の当たり前”を見直し、互いに競争力を高め合う産業界を、みなさんと一緒に作っていきたいと思います。
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