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中小製造業との共同開発で得られる設計段階からの原価低減効果

目次
はじめに:中小製造業との共同開発が注目される背景
近年、製造業を取り巻く環境は急速に変化しています。
人手不足や原材料価格の高騰、グローバル供給網の不安定化など、多くの課題が業界全体を悩ませています。
そのなかで、「設計段階からの原価低減」がメーカーにとって切実なテーマとなっていることは、現場経験が20年を超える私にとっても実感を持って言えることです。
かつては大手メーカーが主導し、サプライヤーである中小製造業は受け身という図式が一般的でした。
しかし昨今は、DXの進展や多様なニーズへの迅速な対応が求められる中で、中小製造業の持つ高度な加工技術や柔軟な対応力がクローズアップされています。
設計段階から中小製造業を巻き込んだ「共同開発」によって、従来型の調達や購買プロセスでは生み出せなかった原価低減効果を得られる事例が急増しています。
この記事では、その実態と具体的な手法、成功事例や注意点などを実践者目線で紹介し、バイヤーやサプライヤー双方の立場の方にも役立つ情報をご提供します。
設計段階からの原価低減とは何か
設計変更=コストの根源である理由
製品の最終コストの70%~80%は、設計段階の判断で既に決まってしまう。
この業界ではよく知られている事実です。
後工程、つまり購買や製造プロセスでのコストダウン提案はもちろん有効です。
しかし、設計が「高価な材料を使う・複雑な加工をする」という仕様で確定してしまうと、大きな費用削減は難しくなります。
また、設計段階での「作りやすさへの配慮」や「標準部品の流用」といった基本原則が守られていない場合、量産の現場で苦労し、不良や手戻りが発生しやすくなり、結果として大きな隠れコストとなります。
特に昭和時代から続くアナログな製造現場では「設計は設計、作るのは現場」との縦割り文化も根強く、ここが原価低減を阻む大きな壁となってきました。
なぜ今「共同開発」なのか
このパラダイムを打ち壊すのが「設計段階からのサプライヤー参画」、つまり共同開発です。
中小製造業のサプライヤーが、設計レビューや仕様決定の初期から参加することで
– 量産性を考慮した設計案
– サプライヤー独自の加工技術を活かしたコスト削減提案
– 代替材料、部品の選定
など、設計上の「ムダ」を大幅に排除できます。
結果として、試作段階や量産移行時の手戻り減・不良削減・リードタイム短縮・最終的なコスト低減が同時に実現できるのです。
サプライヤー視点で見る共同開発の本質
「言われたものを作る」から「共につくる」への意識変革
日本の中小製造業は、長らく「図面通りにつくること」が最大の役割とされてきました。
しかし、生き残りをかけた今後は「設計者と一緒により良いモノを考える」ことが強く求められます。
サプライヤーならではの加工ノウハウや現場経験を、自信を持ってクライアントに提案できること。
これが結果的に信頼関係に繋がり、自社の強み(QCD:品質・コスト・納期)を最大化する近道となります。
また、バイヤー側から見れば「単なる外注先ではなく、開発パートナー」として中小製造業を活用・育成していく姿勢が、円滑な関係性の構築や、部品調達の多様化=リスク分散にも寄与します。
サプライヤーの成功体験:コストダウンと付加価値の両立
ある現場では、特殊な研磨工程が必要であった部品を「設計段階からサプライヤーに相談」した結果、既存設備で量産が可能な形状へと仕様が変更されました。
加工工数は半減し、さらにサプライヤーとしても遊休設備を有効活用できる受注となったため、通常よりも有利な価格で提案が可能となりました。
発注側・受注側双方にとっての「ウィンウィン」の好例です。
このような事例が積み重なることで、ギリギリの価格交渉や不毛なコストダウン要請が少なくなり、持続可能なビジネス関係にシフトしていきます。
バイヤー視点で考える共同開発の進め方とポイント
適正なパートナー選びと信頼関係の構築
設計段階からの共同開発を目指すなら、サプライチェーンを広く見渡し、「技術力・意欲・柔軟性」を兼ね備えた中小製造業をパートナー候補に選ぶことが何より重要です。
価格や納期といった短期的な指標だけでなく、「提案型の姿勢」や「過去の技術提案実績」なども評価軸に加えるべきです。
受発注関係の従来型ヒエラルキーを超えた、「チーム」として信頼し合える相手を見極め、価値観を共有することが成功への第一歩です。
設計情報の提供とコミュニケーションの徹底
次に大事なのが、早い段階から設計情報や開発状況を可能な範囲で積極開示することです。
原価低減は、精度の高い仕様情報と双方向のやり取りがあって初めて成り立ちます。
「うちの業界だとまだFAXや紙図面が当たり前……」というアナログ現場も少なくありませんが、こうした情報伝達のスピード・正確性が原価低減に直結することを改めて認識し、デジタルシフトや業務プロセスの見直しを進めるべきでしょう。
また、設計・開発担当者とサプライヤー現場(工場長・現場リーダー等)との顔の見える関係性や、定期的な進捗レビューの習慣化も欠かせません。
コストだけでない評価軸を持とう
コストダウン一辺倒ではなく、品質や納期、サプライチェーン上のリスク分散への貢献、技術開発のスピードアップといった多面的な評価・社内説明も大切です。
それにより、部品調達や購買部門としての戦略的付加価値も格段に高まります。
現場に根付く「昭和の壁」を超えて
アナログ文化が原価低減を阻む現状
いまだに
– 設計と生産現場の間で情報が分断される
– イレギュラー対応や例外処理が現場任せ
– 「前例主義」「形式主義」が根強い
といった風土が、多くの現場で残っています。
しかし、VUCA時代と言われる今、昔ながらのやり方だけでは競争に勝てません。
中小製造業の強みである「小回りの良さ」や「現場発の創意工夫」を最大限引き出すためには、発注元・受注元双方の意識改革こそが不可欠です。
成功事例に学ぶ:先進的な現場の工夫
一社では限界のある開発力を、2~3社のサプライヤーが「協同チーム」を結成して設計段階から参加するケースも出てきました。
そうすることで、複合材料の最適化や工程間のバッファ解消など、従来型の分業体制では見逃されていた原価低減余地が浮き彫りになります。
また、多能工化や自動化設備導入の設計協議をサプライヤーと共に進めることで、不良コスト削減や生産立ち上げリードタイム短縮を実現した取り組みもあります。
今後に向けて:製造業発展のカギは「共創」にあり
設計初期段階からの中小製造業との連携、共同開発の成功は、単なるコストカットにとどまらず、開発スピード向上、市場ニーズへの柔軟な対応、ひいては日本のものづくり力の底上げに直結します。
バイヤーを目指す方は価格交渉スキルだけでなく、サプライヤーの強みや現場力を経営資源と考えて巻き込む力をぜひ身につけてください。
サプライヤーの立場からも、社内の「前例主義」や「やらされ仕事」から一歩踏み出し、「提案型のものづくり」組織文化への変革が求められます。
最後に、製造業現場で汗を流してきた私からのメッセージです。
「いいものは現場で育つ。強い現場は、開かれた関係からしか生まれない」。
ぜひ、設計初期からの共創という新たな地平へ踏み出してみてください。
そこに、中小製造業とともに歩む大きな原価低減と日本製造業の未来があります。
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