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日本サプライヤーとの共同開発で得られる設計初期からのコスト削減

目次
はじめに:製造業の現場から見た「設計初期」のコスト削減重要性
現代の製造業を取り巻く環境は、従来とは比べものにならないほど激しく変化しています。
グローバル競争、顧客ニーズの多様化、エネルギーコストや原材料価格の高騰、そして頻発するサプライチェーンの混乱。
そのような中、「設計初期段階からのコストダウン」は競争力強化に直結する最重要課題となりました。
しかし現実には、設計担当・調達購買・サプライヤー、三者の壁を超えた“真の連携”ができていないケースもまだまだ多いのです。
特に、古き良き「昭和のやり方」に根付いた部分が強い業界では、納入部品の価格交渉は量産フェーズが始まってから、というパターンが根強く残っています。
ですが、今こそアナログな習慣から一歩踏み出し、日本サプライヤーと早い段階から密な共同開発を行うことで、大きなコスト競争力と新たな価値創出を実現するチャンスが広がっています。
本記事では、その理由と実践的な手法について、現場目線で深掘りしていきます。
日本サプライヤーとの共同開発がなぜ重要か
調達コスト=完成品価格に直結する現実
生産財や部品のコストは、最終的な製品価格にダイレクトに反映されます。
それゆえ、大手メーカーにとっては勿論、中堅・中小メーカーにとっても「調達購買」の最適化は死活問題です。
しかし、調達コストの大部分は設計段階で既に“決まって”しまっています。
多くの研究によれば、新製品のライフサイクルコストの実に7~8割が設計・開発初期で規定される、と言われています。
つまり、量産を始めてからサプライヤーとコストダウン交渉をしても、その余地はごくわずか。
根本的なコスト構造自体を見直すには、設計初期でのアプローチが不可避なのです。
「わが国サプライヤーの強み」を生かす絶好ポイント
さらに、日本のサプライヤーには、精密な加工技術やきめ細やかなカスタマイズ力、現場のコミュニケーション能力など世界に誇るべき独自の強みが根付いています。
この強みを最大限発揮できるのは、設計仕様がカチカチに固まった後よりも、「仕様そのもの」を一緒に検討できるフェーズです。
初期設計段階から現場を知るサプライヤーをチームに入れることで、図面や仕様に潜む無駄・重複・過剰品質を適切に洗い出し、最適形のモノづくりに落とし込める。
まさに日本型モノづくりの“良さ”をグローバル競争下で再活用する絶好のタイミングとも言えるのです。
設計初期からのコスト削減を実現するポイント
1.早期サプライヤーインボルブメント(EPI)の徹底
EPI(Early Supplier Involvement)は、設計初期段階からサプライヤーの知見を取り入れる手法です。
たとえば、
– 図面・仕様の仕様決め段階からサプライヤーを設計レビュー会議に参加させる
– 工法や素材選定にサプライヤー側の専門家の意見を積極的に聴く
– CADデータのやり取りを通じて最適化案(コスト低減案)を共に検討する
こういったプロセスを仕組みとして組み込むことが肝要です。
これにより、設計者が考えつかなかった部品の統合や削減、工法変更による加工プロセスの短縮、余分な公差・過剰仕様の除去といった、多層的・広範囲なコスト削減が実現できます。
2.「機能価値」の定義でやりすぎ・無駄を避ける
日本人の生真面目さゆえ、発注側が「念のため」入れてしまう過剰設計、通称「やりすぎ仕様」がいたるところに散見されます。
これを正すには、「本当に求められている機能価値は何か?」を設計・調達・サプライヤーで繰り返し突き合わせることが不可欠です。
バリューエンジニアリング(VE)の考え方や、QCD(品質・コスト・納期)のバランス検討を共同で行うワークショップを設定するのも、現場で有効な手法です。
3.現場配下の加工エキスパートによるフィードバック
紙の上だけでコストを下げても、現場での実装性・量産可能性が担保されていなければ失敗します。
この点、日本の多くの町工場・サプライヤーは、熟練工や加工エキスパートが在籍しており、「この形状なら加工時間を20%減らせる」「バリ取り不要な冶具開発が可能」など、リアルな現場目線の提案が得意です。
これを設計初期段階で集中的に取り入れ、設計者と直接ディスカッションすることで、机上の空論でない“生きたコストダウン”が図れます。
サプライヤーと強い信頼関係を築くコツ ~壁の壊し方~
なぜ「昭和のやり方」はもう限界か
かつての製造業界は、「俺についてこい」型の調達購買=発注者主導でした。
サプライヤーには納期・価格・品質水準を「指示」し、値引き交渉でコストダウンを図るのが王道とされてきました。
しかし、時代は変わり—
– 人口減少で新たな町工場が次々と消滅
– 技術継承の困難化
– サプライヤー間競争の激化による「価格競争の限界」
こうした現実が重なり、パートナーとしての「共創型連携」へシフトせざるを得ません。
今や「良いサプライヤーは将来の企業競争力そのもの」、これが現場実務の肌感覚です。
信頼関係構築のための現場発マネジメント
バイヤー側もサプライヤー側も、「自分の会社の都合」だけで交渉を始めてしまうと、構造的に信頼関係は生まれません。
そこでおすすめするのが、
– 相手の現場を必ず自分の目で見る(現場視察)
– 設計変更・品質課題が発生した場合、原因追及よりも前に「今何が一番困っているか?」に寄り添う
– 新規設備や新工法への投資提案があれば前向きな検討姿勢を示す
など、「パートナーシップ」の意識を徹底することです。
これにより、EPIで生まれる新たな設計変更やコストダウンアイデアが、机上の空論では終わらず、現場までスムーズに落とし込まれます。
バイヤー志望者・若手調達担当者へ:伸びる現場バイヤーの共通点
製造業のバイヤー職を志す方、あるいは配属されたばかりの調達購買担当者へ。
現場本位のコスト強化を担う人物にはいくつか共通点があります。
1.「図面・仕様」に立ち入れる好奇心と勉強意欲
今の時代、メーカー調達担当であれば図面・仕様・工法の詳細レビューが不可欠です。
現場に足を運び、サプライヤーとフラットに対話できるコミュニケーション力+技術的理解の“貪欲な吸収力”が求められます。
2.相手サプライヤーの「会社事情」「加工現場事情」を知る目
価格交渉、値下げ圧力も大切ですが、「なぜこの部品はこの価格なのか」「原材料費や間接費はどう推移しているのか」「どんな作業員がバラしているのか」といった現場知識は強力な武器となります。
実は、信頼を勝ち取るのはロジックよりも現場を本気で知ろうとする姿勢そのものなのです。
3.設計・生産・品質各部門の“ハブ”となる意識
サプライヤーとメーカー設計・生産側をつなぐハブとして、全体最適を目指し調整役を果たせるバイヤーはますます重宝されます。
極論すれば、「トップ営業」「開発技術者」に匹敵する知識・調整能力が求められる職種になっています。
まとめ:設計初期こそ日本サプライヤーの技術が生きるタイミング
「設計初期からのコスト削減」は、掛け声やスローガンで成り立つものではありません。
– 設計者が自社で最適化できる範囲を越えて、サプライヤーの“知”を早い段階で活用する段取り力
– 日本のサプライヤー企業が持つ現場のノウハウ・加工技術を「仕様決め」の段階で反映する仕組みづくり
– そして現場をつなぐ調達購買担当・バイヤーの統率力と現場感覚
これらが揃って初めて、昭和型のアナログカルチャーから一歩抜け出し、本質的なコスト競争力と付加価値を生み出せるのです。
製造業の未来を担う全ての現場人材が、枠を超えて知恵を出し合う。
日本のモノづくりに新たな地平線をひらくのは、まさに“設計初期からの日サプライヤーとの共同開発”に他なりません。
今こそ一歩踏み出し、変革の現場を自らの手で作っていきましょう。
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