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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

QFD活用で顧客ニーズを満たす低コスト設計開発プロセス

目次
はじめに:激変する製造業界とQFD(品質機能展開)の重要性
製造業の現場は、グローバル化とデジタル化の流れにより、これまでにないスピードで変化し続けています。
従来のような経験や勘、あるいは“昭和的な職人技”に頼った製品づくりでは、顧客の高度化・多様化するニーズに対応することが難しくなっています。
その中で注目されているのがQFD(Quality Function Deployment=品質機能展開)です。
QFDは、顧客の生の声を設計・生産プロセスに落とし込み、高品質かつ低コストな製品開発を可能にする手法として、多くの製造現場で導入が進んでいます。
本記事では、QFDを活用しながら、どのようにして顧客ニーズを的確に捉え、それを低コストで設計・開発プロセスにつなげるかについて、実務経験に基づきながら解説します。
特に、調達購買やサプライヤーの視点も交え、現場で即実践できるノウハウをお伝えします。
QFD(品質機能展開)とは何か?その基本と歴史
QFDは1970年代に日本で生まれた品質管理手法です。
当初はトヨタ自動車で導入され、顧客の要望(Voice of Customer=VOC)を出発点とし、それを設計や生産/調達購買の仕様へと“翻訳”していくための体系的な手法です。
従来の設計プロセスは、設計者や開発者個人の感覚に左右されることが多く、顧客の求める本質を見落とすことも珍しくありませんでした。
QFDの特徴は、「品質表」(ハウス・オブ・クオリティ)を用いて、顧客の声から工程ごとの要求事項を“見える化”できる点にあります。
今では自動車業界だけでなく、精密機器、家電、医療機器、さらにはITサービスの現場でも活用されています。
QFD導入による設計・開発プロセスの進化
顧客ニーズの徹底的な把握
QFDの最初のステップは、顧客ニーズを一切漏れなく拾い上げることです。
現場に残る“昭和的な感覚”では、「お客様の言いたいことはわかっているつもり」になりがちです。
ですが現代は、使い勝手・安全性・コスト・環境対応など、要望が複雑化しています。
QFDではVOCをアンケート・インタビュー・クレーム分析・営業からの情報など多角的に収集し、整理します。
この段階で「顧客が真に欲しい品質」=「潜在的な要求」にまで踏み込んで可視化することが、後の設計効率やコスト低減につながります。
設計品質とコストのバランス調整
QFDは単なる高品質追求だけではありません。
品質・コスト・納期(QCD)のバランスをとりつつ、限られたリソースの中で「本当に満たすべき要求項目」を見極めます。
たとえば、「強度が高い製品を」という要求があった場合、それをどのレベルで満たせば顧客が満足し、過剰品質にならないかをQFDで明確化します。
こうした要件定義の“最適点”を探り当てることが、低コスト設計開発の大きな鍵です。
部門間の壁を超える設計プロセス
従来の製造業界では、設計部門と生産部門、あるいは調達購買と設計が「縦割り」になりがちでした。
必要な品質情報が伝わらず、後工程で手戻りやコストアップが発生することも多々あります。
QFDは品質表というツールを使い、関係部署が共通言語で情報を共有します。
この効果で、生産現場・購買部門も早期から開発に参画でき、最初から“作れる”“買える”設計ができます。
これこそが、大幅なコストダウンやリードタイム短縮を実現するポイントです。
QFD活用の実践ポイント:現場で成果を出すために
1. サプライヤーとの共創体制の確立
近年の製造業では、主要部品を海外や地場のサプライヤーへアウトソースすることが常態化しています。
QFDは、発注側(バイヤー)だけでなく、供給する側(サプライヤー)が自社の技術やコスト制約を“設計初期”から伝える場ともなります。
実際、調達購買の現場で「試作を発注したら、現場では量産できない」といったギャップは珍しくありません。
QFDプロジェクトにサプライヤーを巻き込むことで、設計思想や品質要求の認識ズレを解消でき、後工程の無駄なコストを未然に防げます。
2. 品質表(ハウス・オブ・クオリティ)の有効活用
品質表は、上方向に顧客要求、左方向に設計特性や工程項目を配置し、両者の関係性を「重みづけ」で可視化するマトリクス管理ツールです。
この品質表づくりを“現場レベル”で徹底することが実効性を高めます。
設計担当者だけでなく、品質担当・生産技術・購買部門など多職種でワークショップを実施し、自分たちで評価項目を作りこみましょう。
これにより、各部門が自部署の視点で「どこに高コスト構造が潜んでいるか」「品質実現上のボトルネックはどこか」を“見える化”できます。
3. 手戻り工数・コスト構造への徹底アプローチ
アナログ的な製造業の現場では、後工程や量産段階で「こんなはずじゃなかった」現象が多発します。
これは、初期設計段階での情報共有やリスク洗い出しが不十分なことが原因です。
QFDで徹底的に“落とし穴”を洗い出し、「不良発生率の低減」「手戻り工数の削減」「部品共通化によるコストダウン」を実行すれば、大幅な利益改善が見込めます。
特に、“共通部品の採用”や“特殊工程の限定”などの方針はQFD会議で明確化し、全社に展開しましょう。
QFDの最新動向:デジタル化、AI活用との連動
DX(デジタルトランスフォーメーション)が製造業にも拡大しています。
この流れで、QFDもデジタルツールやAI解析と連動する事例が増えています。
たとえば、顧客の声の収集・分類にテキストマイニングやAI解析を用いることで、大量の生データを効率的に品質表へ落とし込めます。
また、CADデータやPLM(Product Lifecycle Management)と連動させることで、工程設計やBOM構成変更にもQFD項目を自動反映するケースもあります。
今後は「デジタル×QFD」が当たり前になります。
アナログな現場の強みとデジタルのスピードを両立させましょう。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場でのQFD活用ヒント
バイヤー(調達購買部門・設計担当者)向け
QFDを単なる設計管理ツールとして終わらせず、「どこまでサプライヤーと本音で議論できるか」が重要です。
コスト構造や工場工程の勘所を押さえたうえで、できるだけ早い段階でQFD項目をサプライヤーと共有し、共同で改善案を出すのが“現場流”のベストプラクティスです。
“抜き打ち評価”ではなく、“共創パートナー”としてQFDを活用しましょう。
サプライヤー(供給部品メーカー・受託企業)向け
QFD会議では遠慮せず、現場の“できる・できない”や省力化提案を積極的に行いましょう。
長期的な信頼関係は「できないことを曖昧にせず、事前に情報を開示する」ことで生まれます。
また、得意とする技術や自動化ノウハウをQFDの設計項目に組み込むことで、自社にとってもプラスアルファのメリットを生み出せます。
ベンチマークとなるグローバルサプライヤーの事例情報も持ち込み、Win-Winを目指しましょう。
QFD導入時の“あるある”失敗例とその回避法
QFDを導入しても、形骸化したり、現場では使われなかったりする例もあります。
その主な要因と現場での回避策を挙げます。
形だけの品質表になっている
「上司に言われて仕方なく入力した」「Excelの表づくりが目的化した」といったパターンが多いです。
これを防ぐには、
・QFD会議を短時間でも継続実施(たとえば週1回30分)
・各自の担当工場や支給部品で実際に起きたトラブルを都度QFDシートへフィードバック
を徹底することが重要です。
現場の納得感不足・部門間対立
設計者だけが評価項目や重みを設定し、現場(生産や購買)が納得していない状態は効果が出ません。
現場の意見を十分に吸い上げ、「なぜこの項目が重要か」を可視化するワークショップを必ずセットで行いましょう。
また、定期的に進捗レビューを設け、品質表の評価軸や重みづけを必要に応じて見直すことも有効です。
情報共有不足・成果の未活用
QFDシートを作っても、それが次工程や量産段階で活用されないこともあります。
これを防ぐためには、QFD成果物をPLMや設計ツールと連携させ、工程管理やBOM構成に反映させる“運用プロセス設計”が肝心です。
まとめ:QFDは“昭和”から未来へつなぐ現場の武器
QFDは単なる設計手法にとどまりません。
「顧客主義」を徹底し、QCDバランスを最適化し、さらには自社やパートナーの“現場知”を生かして低コスト・高品質を目指す総合プロジェクトマネジメント技法と言えます。
昭和的な“勘”や“度胸”に頼るだけでなく、データと議論で「みんなで正解を探し出す」現場づくりに大いに役立ちます。
今後はデジタル技術との融合も進むでしょう。
作る側・買う側・供給する側――それぞれがQFDを自分ごととして活用し、継続改善サイクルを回していくことが、日本の製造業がグローバル競争を勝ち抜くためのカギとなります。
ぜひ今日から、あなたの現場でもQFDへの一歩を踏み出してみてください。
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