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設計部門との連携で実現するVE・VAによる原価低減

目次
はじめに―製造業の原価低減という永遠の課題
原価低減は、製造業において企業存続と成長のための最重要テーマです。
多くの会社が年次目標として「前年対比〇%削減」と掲げ、現場では日々コスト削減案が模索されています。
しかし、現実には単純な購買単価の引き下げだけでは限界があり、調達や生産現場が疲弊してしまうケースも少なくありません。
最近はサステナビリティや環境負荷低減などの要素も加わり、ますます困難になっています。
昭和型の「とにかく安く仕入れろ」という発想はもう通用しません。
こうした中、「設計部門との連携によるVE・VA活動」が再び脚光を浴びています。
今回は、調達・生産管理と設計がタッグを組み、本質的な原価低減をどのように実践できるのか、実例や業界動向も交えながら解説します。
VE・VAとは何か?本当の意味と現場での誤解
VE(Value Engineering)・VA(Value Analysis)の基本
VE(バリュー・エンジニアリング)は、製品やサービスの機能を分析し、必要な機能を満たしつつ、コストを下げる手法です。
設計段階で導入すると、部品点数を減らしたり、材料や工法を見直したり、ムリ・ムダを徹底的に排除できます。
一方、VA(バリュー・アナリシス)は、既に生産されている製品を対象とし、見直しにより「価値の最大化」「コストの最適化」を図る手法です。
どちらも「安かろう悪かろう」ではなく、「必要な機能を維持したまま無駄なコストを省く」ことが目的です。
現場でありがちな誤解や“形骸化”の問題
一方で、VE・VAは「言葉だけが独り歩き」したり、「単なる原価カットの口実」と誤解されている現場も少なくありません。
「設計は図面を描く」「調達は安く買う」と部門が縦割りになり、情報共有や発想の壁ができている会社も多いです。
また、「古い設計」や「前例踏襲」が業界の根深い文化となっていて、「昔からこの仕様でやっているから」「替えるのはリスクだ」というマインドブロックがVE・VA推進の障壁となっています。
VE・VAは、単なるコストダウンの“合言葉”ではなく、本質的な価値創造の活動として組織的に推進してこそ力を発揮するものです。
設計と調達・生産現場が連携する意義とは
早期段階から協働することのメリット
原価の8割は設計段階で決まる——これは有名な定説です。
そのため、企画・設計と調達・生産部門が早い段階から連携することで、以下のような大きなメリットが生まれます。
– 現場での生産効率や調達の現実を設計に反映できる
– 調達側から「市販品利用」「標準材活用」の知恵を設計にフィードバックできる
– 将来の部品調達リスク(廃番・調達難など)を事前に察知し、設計変更で回避できる
また、昨今はグローバルサプライチェーンの変動リスクが高まっています。
「設計上の期待品質は高いが、実際にはサプライヤーが調達困難」といった事例も少なくありません。
設計と現場(調達・生産)が“壁”を乗り越えて協働すれば、こうしたリスクも大幅に下げられます。
調達バイヤー視点×設計者視点のシナジー
調達バイヤーは、部品・材料価格の相場や調達先の動向、世界的な供給連鎖事情にも明るいです。
一方、設計者は機能・仕様・法規管理には精通していますが、市場価格情報や最新の部品調達トレンドには疎いケースもあります。
たとえば、設計者が「単一メーカー・型式の特殊部品指定」してしまうと、その部品が廃番・値上げされた瞬間、原価も供給も一気に不安定になります。
調達担当が「互換性部品」「規格品への代替」「複数社対応」を設計段階から一緒に検討し、図面やBOMへフィードバックできれば、全体最適の原価低減に繋がるのです。
現場で実践するVE・VA活動の進め方
ステップ1:クロスファンクショナルチームの編成
まず重要なのは「調達・生産」「設計」「品質」「経理」など多部門横断の“クロスファンクショナルチーム”を立ち上げることです。
それぞれの部門の専門知識・現場経験を束ね、「部門の壁」を超えて意見をぶつけ合い、一緒に価値分析を進めます。
とくに調達系バイヤーが参加すると、「現時点の市場動向」「サプライヤー発の改善案」など、設計サイドでは得られないリアルな情報が加わります。
ステップ2:設計レビュー+現場観察+価値分析
チーム内で現行製品の設計図・工程図面・仕入れ先一覧などを洗い出し、“どの工程・部品が本当に必要か”を徹底議論します。
現場のラインや仕入先の工場を実際に見学し、「無駄な加工」「やり直し工数」「余計な包装」など潜在的なコスト要因を発掘します。
例えば、取付穴の数、材質の厚み、公差の厳しさ、組立工程の複雑さ――これら一つ一つが無意識のうちに“コスト膨張”の原因になっていることがよくあります。
調達サイドは「もっと安価な市販規格品に変えられないか」「ロットサイズ・直取引でコストダウンできないか」など提案できます。
設計サイドは、「安全・性能への影響」「実際の使用条件」を精査し、改善の可否を決定します。
ステップ3:効果シミュレーションとリスク評価
改善案が浮かんだら、必ず「コストダウン効果」と「リスク(品質・納期・性能)」を数字でシミュレーションします。
素材変更の場合は生産現場やサプライヤーでの事前評価や、耐久試験なども必要です。
いきなり現行図面を変えるのではなく、試作・評価・段階的移行(フェーズイン)など各部門が納得するプロセスを経ることが重要です。
昭和から続くアナログ業界の壁を越えるには
なぜ、設計と調達現場の距離が生まれるのか
日本の製造業は、きめ細かな設計・現場技能に強みがある半面、縦割り・分業慣習がいまだ根強い業界も多いです。
特に昔ながらのアナログ業界(例:特殊装置、機械加工、伝統ある産業など)では「設計図面=絶対」「変更はNG」「現場は形通りに作るだけ」という文化が根付いています。
その結果、“設計―現場バラバラ”になりがちで、VE・VA活動も「名ばかり」「やったふり」で終わることが多いのが現状です。
成功事例:業界文化を突破するチーム型改善活動
私が携わった事例でも、設計部門と調達部門が定期的な「共催ワークショップ」を行い、調達側の直接取引先(サプライヤー)や現場責任者も加えて現物主義で議論を進めたことがあります。
たとえば、設計主導で何年も続けていた特殊部品も、調達サイドが「グローバル標準品なら年間500万円削減+納期安定」と提案し、設計も「評価試験クリアならOK」と柔軟に意思決定を行いました。
また、図面や手配に“サプライヤー提案欄”を設け、現場で出た「この部分は不要」「加工省略可」といったアナログの現場知恵を反映したことで、「想定外のコストダウン」が何件も実現しました。
成功のポイントは、「設計と調達が同じテーブルでフラットに話し合う」「現場の声を設計へダイレクトに届ける」という現場起点のボトムアップにあります。
VE・VAの推進における今後のトレンドと期待
デジタル化・DXの活用で進化するVE・VA
最近は図面のデジタル化、BOM一元管理、調達データベース連携など、DX推進がVE・VAにも新たな風を吹き込んでいます。
たとえば、「設計データベースと調達コスト情報を連携」し、図面を引いた瞬間に相場価格や調達難易度が分かる仕組みを作る企業も増えています。
これによって、設計者と調達者が早期に同じ画面を見て、部品選定や原価低減策を“共通言語”で議論できるようになります。
また、AIを使った部品点数削減シミュレーション、材料代替案の自動提案なども登場しつつあり、設計~調達~現場の協調がますます求められる時代です。
サスティナビリティ・カーボンニュートラルとVE・VA
今後は価格だけでなく、「サスティナビリティ」「カーボンニュートラル(環境対応)」の観点からもVE・VAの意味は広がります。
たとえば「地産地消の材料活用」「リサイクル材の利用」「物流削減設計」などは、設計~調達~現場が連携することで初めて実現できます。
従来の「コストダウン命」から一歩進み、「持続可能な価値創造」にシフトすることが新しい原価低減の流れとなっています。
まとめ―VE・VAは設計と調達が手を組んでこそ真価を発揮する
原価低減は決して単一部門の努力で達成できるものではありません。
設計、調達、生産管理、品質管理、そして現場やサプライヤーが一丸となって、初めて真の「最適解」に辿りつけます。
とくに設計初期段階から調達バイヤーや現場の知恵を織り込み、定期的なクロスファンクション活動を続けていくことが、これからの製造業の競争力向上につながると確信します。
“昭和の壁”を乗り越え、新しい時代の現場力を磨くために、皆さんもぜひ設計部門と連携したVE・VAに取り組んでみてはいかがでしょうか。
サプライヤー、バイヤー、設計、現場が同じ目線に立つことで、本当に意味のある原価低減が実現できるはずです。
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