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昭和の職人気質が標準化を妨げる現場の課題

目次
はじめに:日本の製造業に根付く「昭和の職人気質」
日本の製造業は、世界でも高い品質と技術力を誇っています。
その基盤には間違いなく、昭和の時代から続く「職人気質」があります。
職人の高い技能や責任感は、日本のモノづくりを支える大きな力となってきました。
しかし近年、この職人気質が標準化や効率化の妨げとなっている現場の課題も浮き彫りになってきました。
AIやIoT、スマートファクトリーなどデジタル化が叫ばれる現在、現場の変革が求められています。
ところが、伝統的な価値観や慣習が根強く残ることで、標準化や自動化への取り組みがなかなか進んでいません。
「昭和のやり方」から抜け出せないことが、現場全体の生産性や国際競争力に影響を及ぼしているのです。
本記事では、調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化といった「ものづくり現場」の実情を交えつつ、なぜ職人気質が標準化を妨げるのか、その現状と課題、そして突破口を深堀りしていきます。
昭和の職人気質とは何か?
「現場主義」と「個人技」の文化
昭和の職人気質とは、「現場が全て」「熟練者の勘と経験が命」という考え方です。
現場第一主義と強い責任感のもと、ひたむきに腕を磨き、自分独自の技法で良いモノをつくる。
この姿勢が時には「標準工程書より自分のやり方が正しい」「人に教えるより自分でやった方が早い」といった意識につながります。
いわば「人による工程変動」を許容しがちな文化です。
暗黙知が支配し、標準が形骸化
「マニュアルはあるが守られていない」「作業手順書に書いていないノウハウが現場に存在する」といった現象も職人気質によるものが大きいです。
そもそも、職人が手順化や標準化を「自分のノウハウを盗まれる」「プライドが傷つく」と捉え、積極的に共有しないこともしばしばです。
職人気質が標準化を妨げる理由
1. 職人の勘や経験に依存した工程設計
長年経験を積んだベテラン社員は、品物の微妙な違いや設備の気配を直感的に判断できます。
たとえば材料の状態を「手触り」や「音」で見極めたり、不良品を目視で発見することができます。
これらは「標準工程書」では言語化しづらく、若手や未経験者に伝わりにくい技です。
職人自身も「やってみなければわからない」「やればわかる」といった発想で、標準工程への意識が薄れます。
そのため、ともすれば「標準手順より自分の流儀」という傾向が職場に蔓延します。
2. 暗黙知の温存と伝承
職人気質の現場では、「見て覚えろ」「背中で感じろ」といった徒弟制度的な価値観が残っています。
作業を「なぜそうするのか」を言語化せず、手元を見て盗むことが美徳とされがちです。
結果として、暗黙知(ノウハウ)が可視化されず属人化しやすいです。
これが、標準化=ノウハウの全社共有やマニュアル作成の阻害要因となっています。
3. 管理職にもはびこる「現場神話」
管理職も「現場が上手く回ればそれで良い」「あいつに任せておけば大丈夫」という意識が強くなりがちです。
これが工程改善や品質向上活動(小集団活動を含む)の後回し、ひいては全社の標準化推進活動の遅れにつながります。
現場で見られる標準化の停滞事例
製造現場での実例
・ラインごとに作業手順がバラバラ、同じ品目でも人によって作り方が違う
・工程内不良の発生頻度や傾向を共有する場がなく「都度対応」に終始
・月初に標準作業手順書を更新しても、現場では「慣れ親しんだやり方」が優先
・品質管理部門と現場作業員の意識ギャップ(品質部:標準重要/現場:実務優先)
調達・購買での見られる課題
調達担当者が「顔の利く取引先」や「長年の経験とカン」で仕入先を選定してしまう。
データや評価指標を活用せず「今までうまくいったから大丈夫」という発想に陥りがちです。
このような商習慣も、標準化・最適購買の妨げとなる根強い要素です。
なぜ「標準化」が求められるのか?
1. 生産性向上と属人化リスクの低減
工場の標準化は、誰でもムダなく「同じ品質、同じやり方」で作業できる仕組み作りです。
これにより、ベテランと新人で大きな差が出づらくなり、突発的な人員異動や退職のリスクにも強くなります。
2. 品質安定と継続的改善(カイゼン)
標準化が進むと、工程内でのムラやバラツキが減り、製品の品質が安定します。
また「どこにどんなムダや問題があるか」も見えやすくなり、カイゼンPDCAサイクルも回しやすくなります。
3. 自動化・DX(デジタル変革)推進の基盤
IoTやAIを現場に導入するには、「センシングする基準」「設備・工程の細かなルール」がきちんと標準化されていることが必須です。
標準化があってこそ、工程情報のデジタル化やロボット導入がスムーズに進むのです。
昭和の職人気質から脱却するための突破口
1. 現場との対話と納得感の醸成
標準化やマニュアル化を「現場いじめ」「ノウハウ搾取」ととらえられないよう、現場の声に丁寧に耳を傾けることが重要です。
「なぜ標準化が必要なのか」「職人技を次世代につなぐことが全体最適になる」ことを、具体例と共に語り、納得度を高めます。
たとえば、
・現場リーダー自らがカイゼン推進役となる
・実際に標準化の結果、品質事故低減や作業者の負担減少につながった好事例を共有
などが効果的です。
2. 暗黙知の「見える化(可視化)」活動
ベテラン作業者の手技やノウハウを、動画や図解で記録し、全社の教育資産とすることが大切です。
また、作業のポイントや判断基準などをブレークダウンし、若手が理解しやすい形で残すことが求められます。
「自分の経験が会社の財産になる」と職人にも納得してもらえる工夫が肝要です。
3. 組織横断プロジェクトで標準化を推進
現場・調達・生産管理・品質管理がバラバラではなく、横串を刺した標準化チームをつくる。
各部署の代表者が集い、「現場のリアル」と「会社の最適」の両立を探ります。
購買・バイヤー目線では、サプライヤーとの共有文書や品質基準も同時に整えていくことが効果的です。
4. 標準化推進リーダーの育成・評価制度の刷新
標準化や見える化の貢献を人事評価や報奨制度に明確に反映させ、職人のモチベーション向上を図ります。
「自分の技を後輩や仲間に伝えること」がキャリアアップや誇りにつながるよう制度設計を進めましょう。
調達購買・バイヤーへの示唆:昭和的発想を超えた新たなバリュー
バイヤー職においても、長年のカンや過去の実績重視のみでは、これからのV字回復・成長は難しいです。
「サプライヤー任せ」「一点突破主義」から抜け出し、基準や評価軸を標準化することで、多様な調達先とフェアな関係を築くことができます。
また、標準化された調達プロセスは、危機時のBCP(事業継続計画)や取引先開拓、コスト競争力強化にも寄与します。
一方で、サプライヤー側としては「なぜその品質基準が必要なのか」「なぜ工程変更時は即時連絡が必要なのか」といった、バイヤーの視点や標準化要求の背景を理解することが肝要です。
まとめ:昭和の職人気質とこれからの製造現場
日本のものづくりを支えた昭和の職人気質は確かに素晴らしい財産です。
ですが、時代は変わり、市場のニーズも生産手法も大きく転換期を迎えています。
標準化は「職人技」の否定ではなく、「技能・知見を組織の力に変える」新たな挑戦です。
製造現場で働く全ての方、バイヤーを目指す方、サプライヤーの皆さん――
いまこそ「昭和の現場」から一歩踏み出し、標準化と革新の両立を目指すときです。
そのための一歩を、今日から現場で実践してみてください。
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