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不正な輸入仲介業者に騙されないための取引先選定基準

目次
はじめに:輸入時代の“罠”と向き合う
日本の製造業は長年にわたり、品質と信頼を重んじる文化に支えられてきました。
しかし、グローバル化が進み、原材料や部品の調達ルートは多様化の一途をたどっています。
海外調達はコストダウンや製品差別化のための強力な武器になる一方で、不正な輸入仲介業者の存在が後を絶たず、しばしば現場に混乱と損失をもたらしています。
本記事では、輸入仲介業者と取引を開始する際に重視すべき選定基準を、現場目線で徹底的に解説します。
過去の失敗事例、昭和的なアナログ商習慣の根強い現状、今後求められるリスクマネジメントのポイントまで網羅し、現場のリアルな知恵をお伝えします。
昭和から続く“付き合い”重視の罠
未だ残る「人の縁頼み」の商習慣
製造現場では「○○商会の△△さんに任せれば間違いない」「昔からの取引先だから」という曖昧な信頼で取り引き先を選ぶ文化が未だに色濃く残っています。
とくにアナログ色の強い業種や地方の工場では、口約束や印鑑文化が根強く、この“なあなあ”が不正な業者の温床となっています。
「どこまで本当に現地を見ているのか」
海外サプライヤーを仲介業者が紹介してくる場合、ほとんどが“Face to Face”のリアルな現場確認がなく、書類や写真、場合によっては改ざんされたサンプルデータがやり取りのベースになってしまっています。
仲介業者の手数料目当ての“数合わせ”に巻き込まれるケースも多数見られます。
不正な仲介業者の典型パターン
パワーワード営業
「このルートはうちでしか扱えません」「大手も使っているので安心」などの売り込み文句を多用する業者には注意が必要です。
大手の名前を勝手に出したり、根拠のない独占性をアピールしたりして、取引の決定を急がせます。
サンプルと量産品の品質差
サンプルは高品質で提出されるが、量産品になるとまるで違う物が納入されたという話は業界でよく耳にします。
仲介業者を通すと現地工場の実態が見えづらく、工程監査の壁も厚くなりがちです。
書類の偽造・ダミー報告
不正業者は税関書類、検査成績、ISO取得証明などの“見てくれ資料”の偽造にも長けています。
「書類はそろっている」を信用して実物をきちんと見ないと、大きな損失を被ります。
取引先選定の基本的な視点
1. 取引実績とリファレンスの確認
仲介業者だけでなく、現地サプライヤーの過去の取引実績を徹底的に洗い出します。
業界専門誌や関連団体を通じて「本当にその実績があるのか」「日本市場への納入履歴はあるのか」を多方向から照会します。
2. 監査可能性(アセスメント力)
現物・現場・現実の“三現主義”は昭和の生産現場に根付く鉄則です。
現地工場の監査を受け入れられる体制か、事前に必ず確認しましょう。
「コロナ禍なので現地に入れない」といった事情でも、ライブ中継(ウェブカメラ等)や第三者による現地監査アテンドサービスの活用が有効です。
3. 英文契約のチェック必須
仲介業者を通す場合でも、現地サプライヤーとの契約書(英文含む)は必ず入手し、自社法務チェックを徹底します。
曖昧な条項や免責事項、“Force Majeure(不可抗力)”の範囲など見逃せないポイントが数多くあります。
4. 実際の工場運営能力評価
「現場の“5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)”の取組みがあるか」「ISOやIATF規格の運用実態はどうか」など、実際に使われている設備や工程管理方法もヒアリングと証拠写真で確認します。
5. トレーサビリティと緊急時の責任区分
納品された製品の履歴を追跡できるトレーサビリティ体制の有無は、事故発生時のリスクマネジメントに欠かせません。
仲介業者側に「トラブル時は全てサプライヤーの責任」と逃げられないよう、役割分担・補償範囲を事前に明確化します。
現場視点から見た追加チェックリスト
・工場長に直接「製品に関する3つの質問」を投げてみる
例えば
「この材質のロット管理は?」
「昨年のトラブル履歴は?」
「現場作業員は平均何年勤務している?」
など、現場運営の“本質”まで食い込んでみてください。
うろたえたり、話がかみ合わなければ、危険な兆候です。
・サプライヤーと直接連絡できる体制か
商品納入においてトラブルが発生した際、仲介業者経由でしかサプライヤー担当者と連絡できない状況は大きなリスクです。
必ずサプライヤーと直接連絡を取り合える経路を事前に確保しましょう。
・情報開示の透明性
ごくまれに、サプライヤー名や生産拠点詳細などを開示しない仲介業者がいます。
価格情報しか出さない業者は極めて危険です。
嘘偽りなく、正直に情報を開示してもらえるパートナーを選ぶことが重要です。
品質/生産/購買 各部門での役割分担と連携
サプライヤー選定は品質部門・生産管理部門・購買部門の共同プロジェクトで行うべきです。
購買や調達だけに委ねず、品質部門は受入・工程監査のチェックリストを、現場(生産管理・工場長)は工程能力や生産リードタイム、作業手順など現職視点の評価項目を持ち込みで検証しましょう。
三位一体で情報共有することで、見抜けなかったリスクが浮かび上がることも少なくありません。
今後求められるデジタル時代の“第三者評価”
デジタル化が進む現在、調達現場においてもe-Auditingや遠隔カメラ監査、AIによる異常検知サービス、ブロックチェーン活用による製品履歴の可視化など、新たな技術が続々と登場しています。
アナログ時代の“付き合い”と最先端のデジタルツールを適切に融合し、「ヒトの目」と「IoTの目」の両方でリスクを抑え込んだ選定が理想です。
取引先選定チェックリスト:まとめ
1. 業界リファレンス・実績照会は多チャネルで
2. 現場監査&ライブ中継等、現物確認の導線づくり
3. 英文契約を含め、契約条項リスクの明確化
4. 量産品の抜打ち確認・現物サンプルで品質担保
5. トレーサビリティとサプライヤー責任範囲の明確化
6. 各部門共同チームでの評価・情報共有体制の整備
7. デジタル監査やAI監視ツールも積極活用
さいごに:信頼こそ、現場と未来の財産
不正業者の被害は“自分だけは大丈夫”と思った瞬間に忍び込むものです。
現場の感度とデータ、両輪のバランスで賢明な選定を行い、信頼できるグローバルパートナーと共に製造業の未来を共創していきましょう。
現場から生まれる「見る・聞く・確かめる」の姿勢を絶やさず、日本の製造業を次世代へと繋げてください。
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